2022.05.10

排熱利用とは?省エネの決め手と言われる熱の有効利用方法の現状を深掘り解説

資源エネルギー庁の調査によれば、我が国の最終エネルギー消費量の約40%が熱利用です。このうち民生部門の熱消費が約65%、産業部門の熱消費が約56%などとなっており、熱は重要な最終エネルギーになっています。

ところが一次エネルギーの約60%が利用されず、「未利用熱」として大量廃棄されています。省エネを促進するためにはこの大量廃棄熱利用が不可欠であり、同時に「排熱利用は省エネの決め手」とも言われています。このためエネルギー関連の研究機関とメーカーが様々な排熱利用技術の開発を進めています。ここでは排熱利用の現状を紹介します。

参考:熱の有効利用について | 資源エネルギー庁

 

 

排熱利用とは

排熱は産業・民生・運輸部門のあらゆる場所で発生しており、排熱利用はこれらの排熱を利用することを指します。

 

「熱の3R」とは

排熱利用の前提は「熱の3R」だと言われています。これは、以下の3技術連携による「排熱の高度利用」を指した用語です。

  • Reduce…熱の使用量削減(蓄熱・遮熱・断熱)技術
  • Reuse……熱の再利用技術
  • Recycle…熱の変換利用(熱電変換・排熱発電)技術

例えば、熱使用量の削減を図るReduceにおいては、遮熱・断熱技術に加え、熱の需給ミスマッチを防ぐための蓄熱技術が重要になります。すなわち「長期間蓄熱でき、必要な時に必要な量の熱を供給できるオンデマンド熱技術」です。現在はこの実現に向け、高い蓄熱密度と長期安定性を有する蓄熱材の開発が進められています。

同じく排熱の再利用を図るReuseにおいては、200℃の温度域の熱供給が可能な「産業用高温ヒートポンプ」、60℃の低温排熱で運転できる「低温排熱吸収冷凍機」、自動車のエンジン排熱で運転できる「低温排熱吸収・吸着式冷凍機」により冷房を行う自動車用エアコンなどが必要になります。こちらも現在はこれらの技術開発が進められています。

また排熱のRecycleを図る熱電変換技術においては、従来の熱電変換材は熱電変換効率が低いため活用できる温度域が限られ、利用は遅々として進んでいません。ところが近年のナノ技術の進化により熱電変換効率の高い材質開発が可能となり、新材料の開発が進められています。

 

 

排熱の熱源と特徴

排熱とは工場の生産過程で発生する排熱、地下鉄・地下街の冷暖房で発生する排熱、ゴミ焼却で発生する排熱などの総称です。したがって排熱は多種多様な熱源から発生し、この熱源は「排熱」と「温度差熱」に大別されます。

  • 排熱………工場の生産現場から発生する熱、清掃工場のゴミ焼却から発生する熱、地中送電線・変電所から発生する熱、業務・家庭用エアコンから発生する熱、電車・バス・自動車のエンジンから発生する熱など
  • 温度差熱…生活排水・下水と大気の温度差から発生する熱、地中熱、河川水と大気の温度差から発生する熱、海洋。湖沼の水深差から発生する熱、雪氷の溶融から発生する熱など

 

排熱の特徴

排熱にはさまざまなものがありますが、共通して次の特徴があります。

  • 広く薄く分布して発生する
  • 運転時間、昼夜など時間的な変動が大きい
  • 熱発生地と熱需要地の場所が離れているケースが多い

 

 

排熱利用技術

排熱利用を促進するため様々な技術が開発されています。2022年現在、その主な技術として次が挙げられます。

ヒートポンプ(熱ポンプ)技術

ヒートポンプは、低温熱を汲み上げて高温熱へ熱移動させる技術です。具体的には地中熱、排水熱、空気熱などを圧縮機で汲み上げて回収し、熱交換器で熱移動させ、加熱・冷却に利用する仕組みです。

ヒートポンプは熱源の違いにより空気熱ヒートポンプ、太陽熱ヒートポンプ、地中熱ヒートポンプ、水熱ヒートポンプなどのタイプがあります。このうち地中熱ヒートポンプは、屋内から吸収した熱を熱交換器で熱移動させ、建物の冷暖房を行います。そして冷暖房後の熱を地中に放出するので、冬季は底冷え対策、夏季はヒートアイランド対策にも効果的と言われています。

関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介

コージェネレーション(熱電併給)技術

コージェネレーションは、天然ガス、石油、LPガスなどの一次エネルギーで発電し、その際に発生する排熱を利用する技術です。コージェネレーションは次のタイプに分類されます。

(1)ガスタービン発電

ガスタービン発電は、都市ガス・LPG・重油・軽油に圧縮空気を吹き付けて発電します。この時、ガスタービンは発電機と空気圧縮機の両機能を担います。この発電で発生した排熱を、ガスタービン出口に取り付けた排熱ボイラーに回収して高温・高熱蒸気を製造し、この蒸気を工場の動力や地域冷暖房の熱源として利用します。

(2)ガスエンジン発電

ガスエンジン発電は、都市ガス・LPGを燃料に発電します。この発電で発生した排熱で温水や蒸気を製造し、工場やビルの熱需要に利用します。

(3)ディーゼルエンジン発電

ディーゼルエンジン発電は、重油・軽油・灯油を燃料に発電します。この発電で発生した排熱で温水や蒸気を製造し、工場やビルの熱需要に利用します。

(4)コンバインドサイクル発電

コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電機と蒸気タービン発電機を組み合わせて発電する技術です。すなわち、まず都市ガス・LPG・重油・軽油を燃料にガスタービン発電機で発電し、次にガスタービン発電で発生した排熱で高温・高圧蒸気を製造して蒸気タービン発電機を回す「二重発電」を行います。このためコンバインドサイクルの発電効率は平均60%と言われ、従来型火力発電の発電効率平均40%を20ポイントも上回る高効率発電技術となっています。

 

蓄熱搬送技術

蓄熱搬送は、蓄熱タンクに貯蔵した排熱を、配熱管ではなく専用コンテナで熱需要先へ陸上輸送する技術です。具体的には工場や発電所の排熱を蓄熱タンク内の「潜熱蓄熱剤」に蓄熱し、その後潜熱蓄熱剤を充填した専用コンテナに積み替えて工場、ホテル、病院などの熱需要先へ運び、排熱を利用する仕組みです。

蓄熱搬送技術では、潜熱蓄熱剤の成分調整により排熱の温度制御が可能と言われています。またコンテナ輸送は現在、片道1時間・30㎞まで可能と言われています。

 

雪氷熱利用技術

北陸、東北、北海道など降雪量が多い地域で降雪期の雪氷を貯蔵し、春・夏・秋にその溶融熱を農作物の保冷や冷房用の熱源に利用する技術です。雪氷熱利用には、主に以下の特徴があります。

  • 雪氷熱は適度な湿度があるので、農産物・食糧の保冷に適している
  • 雪氷熱は空気中の塵、塩分などの不純物を吸収しやすいので、クリーンな保冷ができる

また豪雪地帯では、雪は「厄介な廃棄物」と言われています。しかし雪氷熱利用は、この廃棄物をエネルギー資源化することになるので、今後の技術開発促進が注目されています。雪氷熱利用の方式としては、現在は次のような技術の実証研究が進められています。

  • 冷水循環式雪冷房
  • 全空気循環式雪冷房
  • 水空気併用循環式雪冷房
  • 自然対流式(氷室式)
  • 閉鎖型全空気循環式
  • 冷凍機併設ハイブリッド式
  • 雪山冷水循環式

 

海洋・湖沼温度差熱利用技術

海洋や湖沼では、水面と深水部の温度が異なります。この温度差を利用した発電技術の開発が進められています。具体的には、海洋・湖沼の温度差熱でアンモニアの蒸発・凝縮サイクルを回し、この熱交換で発電する仕組みです。

またカナダでは、オンタリオ湖の水深80m付近に滞留している4℃の湖水を汲み上げ、熱交換器で温水を製造。それを湖畔の屋内スポーツ場、商業施設、ホテルなどへ供給するシステムがすでに2004年から実用化されています。

 

 

まとめ

排熱利用は需給のマッチングとタイミング合わせ、それに幅広い温度域のニーズ開拓がカギと言われています。これを解決するためには、例えばA社では消費し切れない余剰排熱を、排熱が不足しているB社へ譲渡する「排熱利用プラットフォーム」の整備が必要と言われています。

さらに排熱利用は企業や自治体個々の取組で促進できるものではなく、排熱利用技術の開発と並行して蓄熱・マッチング・輸送をセットにしたインフラ整備を進め、社会全体で排熱を相互利用できる「排熱利用マネジメントシステム」の開発も必要と言われています。

排熱利用促進は、省エネのインフラ作り促進の問題でもあります。

 

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