2025.04.08

大気とは?工場で管理するポイントや関連法規など解説

大気とは?工場で管理するポイントや関連法規など解説

私たちが呼吸する「大気」は、地球を包み込む気体の層であり、生命環境を支える重要な存在です。工場の排出するばい煙や粉塵、揮発性有機化合物(VOC)などの大気汚染物質は、この大気の品質を脅かし、環境や人の健康に影響を与えています。

本記事では、工場長や環境管理責任者が知っておきたい「大気」の定義と工場運営との関係をわかりやすく解説。また、大気汚染防止法をはじめとする関連法規のポイント、現場での排ガス管理や測定・報告の実務、新人やスタッフ教育に役立つ情報も提供します。環境コンプライアンスやCSR、SDGs推進に取り組む経営企画・法務担当者にも必須の知識をまとめました。

このように、「大気」の定義から管理の具体的なポイントまで体系的に理解し、現場での実践に役立てていただくためのものです。

大気とは

大気とは、地球を取り巻く気体の層であり、主に窒素(約78%)と酸素(約21%)、およびアルゴンや二酸化炭素などの微量成分から成り立っています。二酸化炭素は約0.04%含まれ、メタンなどの温室効果ガスはさらに少ない濃度で存在します。

大気は、特に成層圏にあるオゾン層が有害な紫外線を吸収し、地表の生命を守っています。また、断熱効果により地表の気温を安定させ、昼夜や季節の気温差を和らげる役割を果たしています。

大気と工場運営の関係

工場は大気汚染物質や温室効果ガスを排出し、環境や健康に影響を及ぼします。鉄鋼、セメント、化学製品の製造など主要な産業部門は、世界の温室効果ガス排出に大きく寄与しており、排出削減が重要課題です。対策として、省エネルギー化、生産工程の見直し、再生可能エネルギー導入が求められます。

例えば、鉄鋼やセメント、化学製品の製造、石油の採掘・精製といった産業分野は、世界全体の二酸化炭素排出の約30%、メタンの約33%を占めており、こうした排出の削減が大きな課題となっています。そのためには、風力・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーの導入を進め、化石燃料への依存を減らす必要があります。

また、温室効果ガスの大幅な削減を実現するには、工場の生産工程そのものを見直す必要もあります。設備の改修や省エネルギー化を通じて、エネルギー消費そのものを減らすことが欠かせません。

そして、このような設備や生産工程の見直しと同時に、企業全体で環境に配慮した文化を育てることも配慮してください。具体的には、従業員に対して、会社の環境目標や取り組み内容を伝え、意識向上を図るなどのことが挙げられます。

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工場が関係する大気関連法規

工場が排出する温室効果ガスは、大気汚染に影響を与え、地域住民の健康などに影響を及ぼします。そのため、法律に基づいた管理が必要です。日本には「環境基本法」や「労働安全衛生法」、「悪臭防止法」など、工場が守るべき大気に関する法律がいくつもあります。そして、その中でも特に中心的な役割を担っているのが大気汚染防止法です。そこで、この法律について詳しく解説します。

大気汚染防止法

大気汚染防止法は、1968年に制定されました。環境省がこの法律に基づいて基準を設定し、工場や事業所などから排出されるばい煙、粉じん、揮発性有機化合物(VOCs)、水銀などの大気汚染物質について、それぞれの種類や施設の規模に応じた排出基準を定めています。

また、自動車から出る排気ガスについても、環境大臣が決めた許容限度値に基づき、時代とともに段階的に規制が強化されてきました。

この法律の対象となる汚染物質は、二酸化硫黄(SO?) や二酸化窒素(NO₂)などのばい煙のほか、粉じん、浮遊粒子状物質(SPM)、揮発性有機化合物(VOCs)、一酸化炭素(CO)、光化学オキシダント(Ox)など多岐にわたります。

これらの物質については、大気中の濃度が一定の基準を超えないように国が環境基準を定めています。このように、大気汚染防止法は、大気中の有害物質の排出を抑制し、国民の健康や生活環境を守るための法制度として、現在も重要な役割を果たしています。

違反時のリスク

工場が排出基準に違反した場合には改善命令が出されます。特に汚染が深刻な地域では、工場ごとに排出される総量に上限を設ける総量規制という制度があります。

日本では、大気汚染対策が1930年代から始まっていますが、特に高度経済成長期に深刻な大気汚染が問題となったことを受けて、この法律が生まれました。そして、制定以降も二酸化硫黄や窒素酸化物などの排出基準は徐々に強化されてきました。

現在では、基準を守らなかった場合や、温室効果ガス(GHG)の排出量に関する報告・計算・公表を怠った場合、刑事罰はないものの、過料(罰金のような行政上の制裁金)が科される可能性があります。

工場での大気管理のポイント

工場での大気管理は、従業員の健康を守り、製品の品質を維持します。企業の社会的信頼を高めるためにも重要な取り組みになっています。排出物の測定や記録、報告といった日常業務の精度を高めることで、法令違反による行政処分や損害賠償といったリスクも回避できます。そこで、工場が押さえておくべき具体的なポイントを、実務の視点からわかりやすく解説します。

排ガスやばい煙管理の実務

排ガスやばい煙の管理は、工場が大気中に放出する有害物質を適切にコントロールするための重要な業務です。管理の対象となる主な物質には、粒子状物質(PM、PM2.5、PM10)、揮発性有機化合物(VOCs)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2) などがあります。

これらの物質は、呼吸器系の病気やアレルギー、肺がんなどの健康被害だけでなく、製品の品質低下、機器の故障など、深刻なリスクを引き起こします。こうしたリスクを防ぐために、重要なのは汚染物質の排出自体を抑えることです。

その手段として、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの導入などが挙げられます。このような一連の対策を講じることで、企業は法律を遵守しながら、人への健康を守り、環境への負荷を抑えることができます。

測定と記録や報告の流れを確認

測定・記録・報告の体制をきちんと整え、工場の運用をすることが大切です。大気汚染防止法では、工場から排出されるばい煙(硫黄酸化物や窒素酸化物など)や揮発性有機化合物(VOCs)、粉じんといったさまざまな汚染物質について、排出の基準が施設の規模などに応じて定められています。

工場がこれらの基準を守るために、排ガスが発生する場所を特定し、大気中の汚染物質濃度を把握できるセンサーなどの監視システムを導入して、測定をおこなうことが必要です。

測定されたデータは記録されたのち、国や自治体が定めた排出基準や許容濃度、総量規制などに基づいて評価されます。もし基準値を超えるような異常が見つかった場合は、ただちにアラートを発信し、必要に応じて行政機関への報告が求められます。

新人や現場スタッフへ教育する

行政処分や損害賠償といったリスクを回避するには、従業員一人ひとりが大気管理の重要性を理解し、対策を実践できる力を身につけるようにしてください。

そのためには、従業員に対して、工場内で発生する主な汚染物質とその発生源についての認識を深めてもらう必要があります。そして、集塵機やフィルター、廃熱回収システムなどの装置を正しく使い、日常的にメンテナンスをおこなうことの重要性を伝えてください。こうした研修をおこなうことで、従業員の意識が高まり、企業全体として管理能力が向上します。

大気にまつわるコンプライアンス

工場や産業施設では、粒子状物質(PM、PM2.5、PM10)や揮発性有機化合物(VOCs)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2) など、さまざまな有害物質が排出される可能性があります。これらの汚染物質は、作業員の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、機械トラブルや環境汚染といった深刻なリスクを引き起こします。

こうしたコンプライアンスを確保するために、日本では環境省が大気汚染防止法や環境基本法に基づいて排出基準を定めています。企業はこれらの法令を遵守すると同時に、定期的に大気中の汚染物質を監視し、異常があれば迅速に対応することが求められます。

まとめ

工場において大気の質を守ることは、働く人の安全や製品の安定供給、さらには企業の成長を支えるうえでも重要です。工場では粒子やガスの管理を徹底し、基準に合った対応をおこなうことが求められます。

日頃から、計測や記録、現場での教育などを徹底し、運用体制を高めていくようにしてください。また、大気関連の測定やSDGs推進をご検討なら、ぜひ下記のページからお気軽にお問い合わせください。

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