アルミニウムが持つ欠点とは?素材の特徴や対策も踏まえて解説

アルミニウムは、製造現場でよく用いられる金属素材のひとつです。
一方で、設計や使用環境を誤ると「欠点」が顕在化し、トラブルにつながるケースも少なくありません。
また、軽量性や加工性に優れ、工場機器・自動車のようなさまざまな製品の素材として活用されています。しかし、腐食の可能性や溶接が難しい点など、素材としての欠点も存在するため、部材の選定に際しては入念な検討が必要です。
この記事では、アルミニウム素材の特徴について、メリットとデメリットの比較を通じて紹介します。また、欠点を補うための対策方法も技術的な観点から解説します。製造業において適切な材料選定を成功させるには、素材への理解を深めることが大切です。アルミ素材の導入を検討されている技術者の方は、特徴を把握したうえで最適な導入方法を模索しましょう。
目次
アルミニウムの特徴とメリット
はじめに、アルミニウム素材が持つ特徴を紹介します。他の金属よりも軽量で加工しやすい点から、製造業における素材として汎用性が高く、重宝されやすい存在です。具体的な製造事例とあわせて確認しましょう。
鉄の約1/3の比重による「軽量化」
アルミニウムは素材そのものが軽量であり、部品として用いると製品全体の軽量化が図れます。水に対する比重は約2.7であり、この数値は鉄(約7.8)の1/3程度です。
その軽量性を活かし、車両のような大型運搬具の部品としてアルミニウムがよく用いられます。
複雑な形状に対応できる「加工性の良さ」
加工しやすい点も、アルミニウムが部品として高い適性を有する理由です。他の金属では構成が難しい複雑な形状の部品であっても、アルミであれば仕様通り加工できるメリットが存在します。
この加工性には、後述する「ヤング率」や密度の低さが影響しています。
工場関連者が知っておくべきアルミニウムの欠点
続いて、工場や製造現場でアルミニウムを使用する際に、特に注意すべき欠点を5つ紹介します。
これらの欠点は、寸法安定性・耐久性・加工性といった観点で問題になりやすく、設計や材料選定に直結します。
メリットとして挙げた加工性の高さは、言い換えると変形しやすい、たわみやすいデメリットにつながります。また、悪条件が重なると腐食する可能性があり、製品の性能にも影響を及ぼすでしょう。
熱膨張係数が大きく寸法変化が起きやすい
アルミニウムは温度変化によってサイズ変動しやすい特徴があります。アルミ素材を用いた部品の寸法が変化すると、当初の仕様とズレが生じる可能性があるため、設計段階での入念な対策が必要です。
温度1℃あたりの上昇で、どれほど膨張するのかを示す「熱膨張係数」で、アルミニウムは鉄の約2倍の数値を示します。大きな温度変化が想定される使用環境下でアルミ素材を用いると、部品動作の安定性に影響を及ぼすおそれがあります。
条件次第では腐食しやすくなる
アルミニウムは本来、錆びに強い材質です。しかし、特定の外的要因が重なると腐食しやすい特徴があります。
たとえば、塩分濃度が高い環境では腐食が進行しやすくなります。空気中の湿気や塩分がアルミ表面に接触すると錆びが進行するためです。また、他の金属と接触すると「ガルバニック腐食」が発生します。鉄やステンレスよりも電位が低いアルミに電流が流れ、内部劣化を招きます。
そのため、アルミ素材の実装に際しては、使用環境や他金属との取り合わせに気を配る必要があります。
ヤング率が低く「たわみ」が発生しやすい
ヤング率(縦弾性係数)は、外部から力を受けた際の変形しにくさ(剛性)を表す指標です。アルミニウムはヤング率が低く、加工のしやすさを示す一方で、構造材としての「たわみ」が起きやすいデメリットとしても捉えられます。
つまり、変形しやすいアルミ素材は、材質の変化よりも安定性を必要とする部品には適さない場合があります。大型工場機器のように膨大な圧力や荷重が発生する装置では、高い強度と剛性が求められるためです。
耐摩耗性が低く「かじり(焼き付き)」やすい
アルミニウムの表面は摩耗しやすく、耐久性に欠ける点があります。とくに、ボルトやナットのような摩擦が起こる密着部分では、アルミ素材が熱膨張によって癒着してしまう「かじり(焼き付き)」の状態になる可能性があります。
長時間の稼働を前提とする機器の部品として利用するには、耐摩耗性の低さがネックとなるでしょう。たとえば、工場内の機械はノンストップで生産を続ける必要があるため、摩耗によるかじりを起こさないことがポイントです。
酸化被膜や熱伝導率の影響で溶接難易度が高い
部品の加工、組み立てには溶接が不可欠ですが、アルミニウムはその難易度が高い金属です。理由として、酸化被膜の発生や熱伝導率の高さが存在します。
酸化被膜とは、加熱した金属の表面に生じる薄い層のことです。アルミ素材を覆うカバーのような役割を担うため、溶接の精度を下げる要因となります。また、熱伝導率が高いと温度をコントロールしにくく、過度な変形を避けるための素早い溶接が必要となり、難易度が上がります。
アルミニウムの欠点を補う技術的対策
アルミニウムが持つ欠点は、素材選定・表面処理・設計工夫といった技術的対策によって、一定程度カバーすることが可能です。ここでは、製造現場で実践される代表的な3つの対策を簡潔に紹介します。
用途に合わせた「アルミ合金」の選定
純粋なアルミニウムの欠点を補う存在として、他の金属を混合させた「アルミ合金」が存在します。純アルミの強度不足を合金でカバーする対策です。
とくに強度が高い種類として、JIS規格A7075の「超々ジュラルミン」が製造現場でよく用いられます。A1050に代表される純アルミに、亜鉛やマグネシウムを加えた合金であり、アルミ素材の中で最も高強度といえます。
アルミの軽量性を保ちながら高耐久・高強度を実現できる素材として、航空機や鉄道旅客機など車両分野での活用に向いています。
アルマイト処理やメッキによる表面硬化
摩耗や腐食の影響を抑えるには、表面硬化の処置が有効です。なかでも、アルマイト(陽極酸化処理)とメッキの処理は、表面に膜を生成する点で劣化を予防できます。
アルマイトは、人工の酸化皮膜をアルミ素材の表面に付着させる処理です。塩分や湿気などの外力からアルミ素材を守る結果につながります。
一方のメッキは、別の金属膜で表面を覆う加工方法です。主に、ニッケルやクロムなどの金属が用いられます。耐摩耗性の面でアルミニウムが抱える欠点を、摩耗に強い金属によってカバーする仕組みです。
リブ追加や断面係数を考慮した設計変更
ヤング率が低いアルミ素材の性質そのものを変えることはできませんが、設計段階での工夫次第で、たわみを未然に防ぐ処置は可能です。
たとえば、補強パーツとしてのリブを追加することで、アルミニウムを用いた部品の強度を物理的に高める対策が有効です。あるいは、曲げる力に対する抵抗力を示す「断面係数」がなるべく高くなる形状に、部品を設計することも考えられます。
部品、機器の機能性に影響が出ない範囲の設計でたわみが解決できれば、理想的でしょう。
アルミニウムを使用するのが向かない場合
ここまでアルミニウムの欠点と対処法を解説しましたが、その特性上、欠点のカバーが難しく使用が向かない製品が存在します。具体例は以下の3つです。
- 大きな荷重がかかる構築物
- 他部品との摩擦が起こる機器
- 長時間、高温にさらされる機器
橋や高層建築物など、人・車両の出入りが多く荷重がかかる場面では、アルミニウムの強度不足が問題となります。変形やたわみは、安全性にかかわるおそれがあります。
部品の摩擦が多い工業機器も、アルミ素材は不向きといえます。摩耗性の低さから「かじり」が起こると、機器全体の性能が低下するでしょう。
高温環境での使用にも注意が必要です。熱膨張係数が高く、寸法変化による変形リスクが存在します。
まとめ
この記事では、アルミニウム素材の特徴を、欠点と対策の観点から解説しました。軽量性と加工のしやすさから、製造業ではよく用いられる金属素材ですが、外的環境の影響を受けやすい点はデメリットに転じる場合があります。
たとえば、熱にさらされたことでの寸法変化やかじりが起こると、アルミ部品を搭載した機器の性能そのものが低下するでしょう。また、腐食やたわみが発生すると、部品としての安定性を欠き、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
これらの課題に対して、アルミ合金の使用・アルマイト処理・設計変更などの手法であらかじめ対策を打つ余地があります。他の金属でアルミ素材の欠点を補う、または欠点が露呈しないように設計の工夫をする手段は有効です。アルミ素材を製造工程で利用する際は、特徴や欠点を認識したうえで選定しましょう。
材料選定や表面処理の判断に迷う場合は、専門知識を持つ業者へ相談することも有効な選択肢のひとつです。

