アルミニウムとは?特徴や使用例と使用時のリスクなどについて解説します

私たちの身の回りにある自動車や飲料缶、フライパンなど、日常生活から産業分野まで幅広く使われているのがアルミニウムです。軽量で丈夫、さびにくく、熱や電気をよく伝えるといった特性から「奇跡の金属」とも呼ばれています。こうした利便性ゆえに、活用の場は年々広がっています。
しかし一方で、アルミニウムの製造・廃棄の過程で、粉じん爆発や健康被害、環境負荷などのリスクも無視できません。適切な管理体制や使用基準を設けなければ、重大事故や法令違反、さらには企業の社会的責任やコンプライアンスに関わる問題に発展する恐れもあります。企業や管理職は、法規制を踏まえたリスク管理と、安全教育の徹底が求められます。
そこで、アルミニウムの特徴や使用例に加えて、注意すべきリスクや、その対策について解説します。
目次
アルミニウムとは
アルミニウムは、地球の地殻(一番外側にある固い層のこと)にもっとも多く存在する金属で、見た目は銀白色です。主な特徴は、とても軽いことで、鉄と比較して約3分の1の重さです。その他の性質としては、よく曲がったり伸びたりする柔軟さがあることや、熱や電気をよく伝える点などが挙げられます。
ただし、酸素と反応しやすいため、自然の中ではそのままの形で見つかることはほとんどなく、ボーキサイトという鉱石から取り出して使います。
また、取り出したままの純粋なアルミニウムは柔らかすぎて実用性が低いため、通常は銅や亜鉛、マグネシウムなどと混ぜて合金にし、強度を高めて使用します。何度でもリサイクルできるというメリットもあるため、自動車のエンジンや飲料缶、調理器具、家電など、私たちの暮らしのさまざまな場面で使用されています。
アルミニウムの特徴
軽くて丈夫、さびにくいという特徴を持つため、私たちの身の回りで幅広く使われています。例えば、飛行機や車、キッチン用品など、さまざまな分野でその力を発揮しています。そこで、軽さ・強さ・長持ちするといった性質に注目しながら、その特性について、わかりやすく解説します。
鉄や銅より軽い
アルミニウムの特徴として軽いという点が挙げられます。重さは約2.71 g/cm³で、鉄のおよそ3分の1しかありません。この軽さは、扱いやすさにつながるだけでなく、運搬コストの削減にも役立ちます。さらに、軽い割には強いという特性もあるため、日常生活や産業分野で幅広く使用されています。
具体的には飛行機の胴体、バイクのエンジンなど、重量が性能に大きく影響する分野でその性能を活かしています。このように、さまざまな産業を支えている点から「奇跡の金属」とも呼ばれます。
比強度が大きい
比強度が大きいというのも、重要な特徴です。比強度というのは、同じ重さの金属と比べて、より大きな力に耐えられるという意味です。
例えば、アルミニウムは前述したとおり鉄よりも軽い素材ですが、銅や亜鉛、ケイ素などと合金にすれば、強度を大きく高めることができます。このように比強度が高いゆえに、飲料缶や家電などの日常品にも使用しています。
さびにくい
よく「アルミニウムだから、さびにくい」と耳にすることがあると思いますが、この秘密は、表面にできる酸化皮膜にあります。酸化皮膜とは、空気中の酸素と反応し、金属の表面にできる透明な保護膜のことです。
この膜はとても硬く、金属が直接、水分などに触れることを防ぐため、サビからしっかり守ってくれます。さらに、陽極酸化処理という特別な加工を施すと、皮膜を厚くすることができ、サビにくさの特性を高めることができます。
熱伝導率がよい
熱をよく伝える性質のことを熱伝導といいます。アルミニウムはこの熱伝導率がよく、熱いものでも冷たいものでも、すばやく全体にムラなく熱を伝えることができます。この特性を利用し、熱を効率よくコントロールする必要がある場面でよく使われます。
例えば、熱交換器や鍋・フライパンなどの調理器具、冷蔵庫の内部部品、自動車のエンジン、ホイール、電気ヒーターなどが挙げられます。
関連ページ:アルミの熱伝導率は?アルミ製熱交換器の特徴を解説
アルミニウムの使用例
前述した通り、この金属は、さまざまな性質を持っているため、日常生活や産業分野で幅広く使われています。特に、軽いのに強い点やサビにくいといった特徴から、飛行機の翼や胴体、車体、電車、船など、移動に関わる乗り物には、たいていどこかの箇所で使われています。
また、熱をよく伝える性質があるため、鍋・フライパンなどの調理器具、冷蔵庫、電子レンジといった家電製品にも使われています。その他、飲料缶やアルミホイル、窓枠、屋根といった、加工のしやすさを活かした使用方法もあり、柔軟性の高さとリサイクルのしやすさから高く評価されています。
アルミニウム使用時のリスク
軽くて便利な金属として広く使われる一方で、扱い方を誤ると火災や健康被害、さらには環境汚染につながるリスクもあります。そこで、粉じん爆発の危険性や体への影響、製造や廃棄時に生じる環境リスクなどについて、わかりやすく解説します。安全に使用するための知識なので、しっかりご確認ください。
安全に配慮する必要がある
粉末の状態になると非常に燃えやすく、火災や爆発の原因になることがあります。特に、細かい粉じんが発生するような加工をおこなう際には、粉じん爆発の危険があるため、注意が必要です。健康への影響としては、アルミニウムの粉じんや煙を大量に吸い込んだ作業員に、咳などの肺の異常や、神経の働きの低下が見られることがあります。動物実験でも、脳や経系への影響が確認されています。
また、皮ふから体の中に入る量はとても少ないですが、ワクチンに使われる成分に触れたとき、注射をした場所が赤くなったり、しこりができたり、まれにアレルギーのような反応が出ることがあります。そして、少しずつ体にたまることもあり、特に腎臓の働きが弱っている人では、骨がもろくなる、頭がぼんやりするなどの影響、さらには貧血になる可能性があるといわれています。
その他、調理や食事の際にも気をつける必要があります。食事で使うアルミ鍋や、食品添加物として摂る量であれば通常は問題ありませんが、酸性の食品をアルミ鍋で何度も調理したりすると、体に取り込まれる量が多くなることがあります。具体的には、トマトソースや果実酒を使った料理、酢料理などが挙げられます。このように、日常的な使い方には多少の注意が必要です。
環境リスクがあるので管理する必要がある
アルミニウムを作るには、多くの電気やエネルギーが必要です。一方、リサイクルすれば、必要なエネルギーを約95%減らすことが可能です。また、ゴミとして処理する場合、空気や水、土の中に成分が出てしまうと、水の中の生き物に害を与えたり、土壌の性質を変えて植物が育ちにくくなったりする環境被害が生じます。
このように、環境への影響も考えて、管理することが大切です。具体的にできる施策としては、工場からの排出やゴミの処理方法にルールを設ける、なるべく使う量を減らすなどが考えられます。環境にやさしい方法で管理してください。
関連ページ:アルミニウムが腐食する原因は5つある!わかりやすく解説
まとめ
アルミニウムは、軽量でありながら強度が高く、耐食性や熱伝導性にも優れていることから、輸送機器、建築資材、調理器具など多くの分野で利用されています。加えて、リサイクルが簡単で、繰り返し使用しても品質が劣化しにくいという特性から、環境配慮型の素材としても注目されています。
一方で、製造や加工をする際に、粉じん爆発や健康への影響といった安全上のリスクが生じ、環境汚染の要因にもなりえます。こうしたリスクを軽減するには、作業現場における管理体制の整備や、法令に基づいた排出管理、従業員への安全教育の徹底が必要です。
また、リサイクルをおこなうことで、初回の製造時と比較して多くのエネルギーを削減できるという利点があり、省エネルギー対策や温室効果ガスの削減にも大きく貢献します。このような背景から、アルミニウムを利用するには、素材の利便性を最大限に活かしつつ、安全性と環境負荷の低減の両立を図ることが求められています。
関連商材:超高効率オールアルミプレート式 排ガス熱回収専用設計熱交換器
アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI TOPへ戻る