フィンチューブ式熱交換器とは?特徴や最新動向など詳しく解説

設備担当や技術管理をしていると、熱交換効率をもっと高めたいが、どの方式を選ぶのが最適か判断できないことがあります。そのようなとき、フィンチューブ式熱交換器は検討すべき有力な選択肢の1つです。特に空気やガスを扱う現場では、限られた設置スペースでも高い熱交換性能を発揮するため、多くの導入実績があります。
一方で、目詰まりや腐食、ランニングコストといった課題も避けられません。もし方式選定や導入判断を誤れば、期待していた効果が出ないばかりか、余計なコストがかかるリスクもあります。そこで、各種フィン構造や用途の違い、導入から運用にかかるコストなど詳しく解説します。省エネ対策や効率化を図るための判断材料として、早速お読みください。
目次
フィンチューブ式熱交換器とは
フィンチューブ式熱交換器は、チューブの外側にフィンを取り付けることで、熱交換効率を高めた熱交換器です。フィンによって熱が伝わる表面積が大幅に増えるため、チューブ内を流れる液体と外部の空気やガスとの間で、より効果的な熱のやり取りが可能です。
特に、空気やガスのように熱伝達効率が低い流体との熱交換では、この構造が有効です。フィンチューブ式熱交換器は、液体から空気への熱移動が必要とされる場面で使用されており、自動車のラジエーターや空調・冷凍設備、化学・石油化学産業、蒸気発電所のドライ冷却システムなど、多くの分野でエネルギー効率の向上に役立ちます。
素材には、軽量で熱伝導性が高いアルミニウムが主に使われますが、使用環境に応じて、銅やステンレス鋼、ニッケルなども選ばれることがあります。
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フィンチューブ方式の種類と特徴
フィンチューブ式熱交換器にはさまざまなタイプがあり、構造や性能に特徴があるため、用途などに応じて適切に選定する必要があります。例えば、L-フィンはアルミ製のフィンストリップをチューブに巻き付けるシンプルな構造で、製造コストが低く、主に空調機器などで使われます。
また、プレートフィン式は薄い金属板を積層してフィンの役割を持たせるもので、波形や穴を活用して高い熱交換効率を実現できます。コンパクトで軽量なため、航空機や電子機器などスペースに制限がある場合に適しています。
その他、エロフィン式はフィンストリップをチューブに機械的に圧入して密着させる構造で、水力発電機の冷却器に用いられています。これに似たブレットフィンは、フィンを手作業でセットし、弾丸状の工具でチューブを膨張させて固定する方法で、柔軟性が高くコスト面でも優れています。
このように、フィンチューブ式には複数の方式があり、それぞれの特性を理解したうえで、設置スペースやコストなどを総合的に考え最適な方式を選ぶようにしてください。
他の主な熱交換器との違い
他の主な熱交換器は、フィンチューブ式熱交換器とは異なる特性があります。例えば、シェル&チューブ式熱交換器は、液体同士あるいは液体とガスの熱交換に適していて、高圧がかかる用途や有害ガスを扱う環境で使われることが多いです。また、プレート式熱交換器は、主に液体同士の熱交換に用いられ、薄い金属プレートを密に重ねることで高い熱交換性能を実現しています。
フィンチューブ式熱交換器の課題
高い熱交換効率を持つことから、フィンチューブ式熱交換器は多くの業種・産業で活用されていますが、実際の運用では目詰まりや腐食、ランニングコストの増加といったいくつかの課題もあります。そこで、代表的な問題点とその原因、対策方法までをわかりやすく解説します。導入後に後悔しないためにも、早速お読みください。
腐食や目詰まりする
代表的な課題の1つは、目詰まり(ファウリング)です。空気中の砂やほこり、花粉、油分などの汚れがフィンに蓄積すると、熱の伝わりが妨げられます。結果として熱伝達効率が大きく低下します。
この影響で、エネルギーコストが10~20%以上増加し、場合によっては熱交換器の性能が50%近く低下することもあります。さらに深刻なのが腐食で、特に化学プラントや海岸地域のような過酷な環境では、フィンチューブに損傷を与え、漏れや熱交換効率の悪化、最悪の場合はシステムの故障につながる可能性があります。
こうした問題に対しては、定期的な点検と清掃が有効な対策です。例えば、圧縮空気と水を使ったJetMaster方式のような非研磨性の洗浄技術を使うことで、フィンを傷つけずに洗浄することができます。また、フィンの上流にろ過装置を設ける、あるいは防汚コーティングを施すといった対策も、ファウリングの予防に役立ちます。
腐食に対しては、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムなどの耐食性に優れた素材を使用することや、保護コーティングを施すことが有効です。特に押出フィン(エクストルーデッドフィン)は、アルミ製のスリーブがチューブ全体を覆う構造になっており、チューブとフィンの間に汚れや腐食物が入り込むのを防ぐため、耐久性に優れています。
また、溶接フィンのような頑丈な構造も、長期的な腐食や性能劣化を抑えるのに有効です。これらのメンテナンスや材料・構造の工夫によって、フィンチューブ式熱交換器の性能を長く保ち、寿命を延ばすことができます。
伝熱効率の限界ポイントがある
フィンの表面にほこりや油、スケール(堆積物)などがたまるファウリングや、腐食によって劣化が起こることがあります。これらは熱交換の効率を下げる原因になります。また、温度変化による膨張やフィンの根元が腐食することによっても、フィンとチューブの接触が悪くなり、熱の伝わりが悪化します。
これらの問題を防ぐには、設計の工夫が重要です。例えば、フィンの間隔を適切に調整して熱交換効率と圧力損失のバランスをとり、バイメタルによるフィンとチューブの接合、エキスパンションジョイント、不凍液コーティングなどの技術を取り入れることで、熱疲労や凍結によるダメージにも強くなります。
導入コストと運用ランニングコストがかかる
導入時と運用時の両方でコストがかかるのも課題の1つです。導入時のコストは、フィンのないシンプルな裸管タイプに比べて高くなる傾向があり、特に複雑な設計が必要な場合は、製造に時間もかかるため価格が大きく上昇します。
押し出し加工や溶接といった製造技術には専用設備や高い技能が求められ、さらに耐食性や防汚性を向上させるためのコーティング処理や、各種規制への適合に伴う追加の検査なども初期費用を押し上げる要因となります。
一方、運用時に発生するランニングコストの主な原因は、フィンへの砂や埃、花粉、油分などの付着による目詰まりや、沿岸地域など過酷な環境下での腐食です。こうした現象により、熱の伝わり方が悪くなり、装置の性能が徐々に低下します。
これらの問題に対処するには、例えば、ろ過装置の導入や防汚コーティングが効果的です。加えて、ステンレス鋼やチタン、アルミニウムなど耐食性の高い材料を使用し、押し出しフィンなどの耐久性に優れたものを採用するのも有効です。
MDIが提供する効率的な代替熱交換器
MDIが提供する「GTLシリーズ」は、ステンレス製のブレージングプレート構造を採用し、隙間がない高密度な一次伝熱面を実現しています。そのため、一般的なフィンチューブ式に比べて構造上の熱抵抗が少なく、同等条件下で装置をよりコンパクトに設計できるため、省スペース化に役立ちます。
またガス側に開口部を広く設ける専用設計により圧力損失を抑えつつ高効率な熱回収が可能なため、排ガス熱回収や蒸気凝縮時にも優れた性能を発揮します。
モジュール化された構造は、腐食や目詰まりが生じた場合でも部分交換や洗浄が簡単で、ランニングコストも下げることもできます。省エネ投資を検討するなら「GTLシリーズ」は検討すべき選択肢の1つといえます。
今後の最新動向
省エネや高効率化を実現する熱交換器としてフィンチューブが注目されていますが、技術革新のスピードがその価値をさらに高めています。そこで、ナノコーティングや高耐食材料、自動化製造など、最新技術についてお伝えします。
選定時に重視すべき項目
使用目的と運転条件をもとに、フィンチューブ式熱交換器を選定することが重要です。例えば、高温や腐食性ガスを取り扱う環境では、熱接触性能に優れたGフィンや押出フィン、溶接フィンといったタイプが適しています。
また、限られた設置スペースで高い熱負荷を処理しなければならない場合には、低フィンタイプや押出フィンのようなコンパクトな構造が効果的です。特に、空気やガスなど熱伝達係数の低い流体を扱う際には、フィンによって表面積を大きく増やすことができ、熱交換効率の向上に役立ちます。
業界標準や今後の技術進化に対応
フィンチューブ式熱交換器は、用途や業界の要件に応じた各種規格への準拠が求められます。海外ではTEMA(チューブ式熱交換器製造者協会)やASME(米国機械学会)の規格が広く用いられていますが、日本国内ではこれらに加えてJIS(日本産業規格)や各企業の技術仕様が重視されています。
輸出向けや外資系プロジェクトではASMEへの対応が求められることもありますが、国内向けはJISを基本としつつ、ISO認証などの国際的な品質基準も信頼性の裏付けとして活用されています。
近年では、フィンチューブ式熱交換器の性能や耐久性、そして環境負荷の低減に向けた技術開発が進められています。例えば、ナノコーティングを施したフィンは、熱伝達性能を高めるとともに、腐食耐性の向上にも役立ちます。さらに、ステンレス鋼、チタン、ニッケル合金といった耐食性に優れた先進材料の採用や、保護コーティングの導入も、長期的な性能維持に有効です。
製造技術においても、精密な溶接やフィンの自動取り付けなどが導入されており、製品が安定した品質を保つことに役立っています。中でも押出フィン(エクストルーデッドフィン)は、フィンとチューブの間に異物が入り込むのを防ぎ、熱接触を長期間維持することができる構造として注目されています。
このような技術革新により、フィンチューブ式熱交換器はエネルギー効率の向上や環境負荷の軽減といった社会的課題にも対応しつつ、過酷な産業環境下でも長期間にわたって使用できる装置として重要性を増しています。
まとめ
フィンチューブ式熱交換器は、空気やガスのような熱伝達効率の低い流体との熱交換において優れた効果を発揮し、多くの産業分野で省エネや装置の小型化に役立っています。構造や用途に応じてL-フィン、LL-フィン、押出フィン、溶接フィン、プレートフィンなど多様な方式が存在し、それぞれの特性を理解したうえで最適な選定をおこうことが、性能とコストを両立するうえで大切です。
他の熱交換器と比べた際には、特に空冷用途に強みを持つ一方で、目詰まりや腐食といった課題も抱えており、定期的なメンテナンスと耐食性への配慮が求められます。また、初期導入コストが高めである点も考慮が必要ですが、運用面での高効率化や寿命延長により、ライフサイクルコストの抑制が期待できます。
近年では、ナノコーティングや先進材料の採用など、製品の性能と信頼性を高める技術革新も進んでおり、フィンチューブ式熱交換器は今後もエネルギー効率と持続可能性を両立する重要な装置として、その役割をさらに広げていくと考えられます。
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