2026.01.09

ステンレスとは?主な種類や材質の特徴、工場での活用例を紹介

ステンレス

ステンレスは、製造業の工場現場で活用される機会が多い素材です。耐食性の高さに定評があり、種類によっては耐熱性を有する素材や、酸化に強いものもあります。金属部品の需要に応えられる素材として、根強いニーズがあるのも特徴です。

そんなステンレスには、さまざまな種類があります。そのため、活用する部品や機器が置かれる環境、調達コストなどの要因を考慮したうえで、適切な種類を選定するプロセスが大切です。かじりの発生や加工性の低さなど活用時のデメリットも存在するため、選定には幅広い視点が求められます。

本記事では、ステンレスの主な種類や基本性質、素材としての活用例を紹介します。導入時の比較検討や情報収集を進める方は、ぜひ参考にしてください。

ステンレスとは

ステンレスは、主に鉄とクロムから構成される合金で、含有量の内訳は鉄が50%以上、クロムが10.5%以上です。英語では「stainless steel」と表記され、「錆びない(stainless)」を語源とする名称の通り、錆びにくい金属として知られています。

生活用品から大規模な機器まで、活用シーンは多岐にわたります。日用品での使用例には台所の流し台や食器などがあり、使用頻度の高い製品です。

ステンレスの主な種類

ステンレスには数多くの種類が存在し、JIS規格では100種類以上に上ります。ここでは、代表的な種類を5つ紹介します。それぞれ金属組織の内訳や含有量が異なり、強度や耐熱性にも個性が現れます。

マルテンサイト系

マルテンサイト系は、10%台前半から中盤程度のクロムに加えて炭素を含む素材です。焼入れで熱処理を施すことで、硬化を図れる点が特徴とされています。用途によっては一定の耐食性や耐熱性が求められる部品に用いられることもあります。

オーステナイト系

オーステナイト系は、クロム1620%程度、ニッケル610%程度を含む鋼種が代表的です。ニッケルの添加により耐食性と加工性の両面に優れ、家庭用、業務用を問わず幅広い用途で活用されます。一方、焼入れで硬化しない点があります。

フェライト系

フェライト系ステンレスは、ニッケルをほとんど含まない点が特徴です。鉄とクロムから構成されるシンプルな金属であり、比較的安価な材料として一般製品に多く活用されます。耐食性は、マルテンサイト系より高いものの、オーステナイト系ほどではありません。

二相(デュプレックス)

二相系は、オーステナイト・フェライトの組織を混合させた鋼種です。強度や耐食性の面で、両者の特性を活かしつつ、弱点を補うことができます。海水作業用機器や熱交換器など、業務用の特殊な環境下で用いられるケースが一般的です。

析出硬化系

析出硬化とは、ステンレスの強度や耐食性を向上させる熱処理のことです。ステンレス鋼の析出硬化は、銅やアルミを添加することで実現させています。強度が高い析出硬化系の素材は、航空産業や医療産業のような専門性の高い分野で活用されています。

ステンレスの用途

家庭用品から産業機器まで、幅広い用途に活用できる点がステンレスならではの特徴です。鋼種によって耐食性や加工性が異なるため、素材の一部として求められる役割は多岐にわたります。

ステンレス使用のメリット

ステンレス素材を選ぶ主なメリットは以下のとおりです。

  • 耐食性が高い
  • 耐熱性や耐酸化に優れる鋼種がある
  • 加工硬化で強度の向上が図れる
  • 衛生的に使用しやすい

全体に共通する強みが、耐食性の高さです。金属には腐食のリスクがあり、部品の劣化が機器の性能に影響を及ぼすおそれがあります。耐食性に優れるステンレスは、導入ハードルの低い素材といえます。

中でもステンレス鋼(SUS304)はヤング率が約200GPaと、剛性そのものは一般的な鉄鋼材料と大きく変わりません。一方で、加工硬化によって強度を高めやすいという特性を持っており、薄肉設計であっても耐久性を確保しやすい点が特徴です。また、衛生面においても、表面が滑らかで洗浄性に優れているため、扱いやすい材料といえます。

ステンレス使用のデメリット

一方、ステンレス素材が抱えるデメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 摩擦係数が高い
  • 加工が難しくなる
  • 放熱性に劣る

ステンレスは摩擦係数が高く、金属表面が滑りにくい性質を持っています。そのため、加工時に加えられる力に対して表面の抵抗が大きくなりやすく、焼き付き(かじり)が発生するリスクを伴う点はデメリットといえます。

加工硬化は素材の強度を上げる一方で、硬化によって曲げ加工を難しくしてしまう側面があります。この性質もまた、加工条件によっては工具負荷の増大や焼き付きなど、加工トラブルを招く要因となります。

また、アルミ素材と比較するとステンレスは熱伝導率が低く、高温環境下では局所的な熱歪みが発生するケースがあります。特に薄板溶接の加工では、放熱性が低いため溶接熱が逃げにくく、反りや波打ちといった変形が発生しやすい点がデメリットとして挙げられます。

現場が考えるステンレスの活用法

ステンレス材の選定では、慣例的にSUS304が選択されるケースが多く見られます。しかし、使用環境やコスト条件によっては、別の選択肢を検討する余地もあります。

SUS304は、ステンレスの定番モデルです。一方、用途次第ではSUS430444などフェライト系が適する場合もあります。ニッケルを含有しないフェライト系は調達コストが変動しにくく、熱膨張が小さいため歪み対策が可能です。

また、ステンレスねじの「かじり」対策をしたい場合は、ボルトとナットを異素材で組み合わせる対策が有効です。とくに負荷がかかるシャフトのような部位は、高強度の特徴を持つ析出硬化系を選定すると細径化・軽量化できる余地があります。

コスト削減や見積対策をしたいときは、使用環境を入念に確認したうえで、SUS430SUS444も選択肢に入れましょう。メンテ・突発対応の工数削減が目的のときは、締結条件を標準化してかじりを軽減させるアプローチが重要です。

ステンレスの注意点

ステンレスを扱う際の注意点として、噛み込み現象(凝着)の存在が挙げられます。この現象はステンレス製ねじの「かじり」を表します。摩擦や圧力がかかると、加工硬化によって結合部が硬化して、お互いに表面を削り合うことで凝着が進むメカニズムです。噛み込み現象を防ぐには、過度な締め付けトルクを避け、異材の組み合わせや表面へのコーティング処理などの対策が考えられます。

また、耐食性の高さはステンレスの強みですが、どのような環境でも錆びないわけではありません。ステンレスの錆びにくさは、クロムと酸素が結合して生成される「不動態皮膜」によって保たれています。しかし、強酸性や強アルカリ性、湿度が高い環境にさらされると、錆びる可能性があるのも事実です。また、鉄粉が表面に付着すると、錆びたように見える「もらい錆び」が生じるケースもあります。

関連記事:ステンレスがさびる原因は?対策とさびのメカニズムについても解説

【疑問解説】ステンレスは磁石につくのか?孔食とは?

ステンレスを扱う現場では、「なぜ孔食が起こるのか」「なぜ磁石につく場合があるのか」といった疑問がしばしば生じます。ここでは、「孔食」と「磁性」という2つの観点から、その仕組みを整理して解説します。

ステンレスは錆びる?「孔食」のメカニズム

「孔食」とは、ステンレスの表面に生じる腐食であり、穴が空いたような形状として現れます。不動態皮膜が局所的に破壊されることで、孔食が発生します。とくに、塩化物イオンが生じる環境で起こりやすい現象です。

関連記事:なぜステンレスは孔食する?腐食の種類と防止方法を解説

ステンレスは磁石につきにくい?

ニッケルを含む素材は、磁性がなく磁石につかない場合がほとんどです。しかし、「SUS304」は本来磁石につかない素材ですが、曲げやプレス加工を施すと局所的に磁性を帯びることがあります。この仕組みを「加工誘起マルテンサイト」と呼びます。

まとめ

本記事では、ステンレス素材の種類や特徴、利用するメリットなどを解説しました。主に鉄とクロムで組成される金属ですが、炭素を含むマルテンサイト、あるいはニッケルが中心のオーステナイトなどさまざまな種類があり、耐熱性や強度は異なります。

多くのステンレスに共通する特徴は耐食性と強度の高さであり、その特徴から家庭用品から工業製品まで、幅広い用途で活用されます。滑らかで美しい表面は手入れがしやすい点もメリットであり、部品用の金属素材を探すうえでステンレスはつねに有効な選択肢となりうるでしょう。

一方で、加工硬化にともなう「かじり」の問題や、溶接時に生じやすい反りや熱歪みなど、硬度や放熱性の面で取り扱いに気を配る必要もあります。異なる鋼種を組み合わせるなど対策を打ったうえで、コスト最適化と活用シーンの見地からもっとも適した素材を選定するための戦略が重要です。

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