活用が難しい低温排熱とは?回収方法や有効活用のポイントを解説

工場や事業所では、製造設備、洗浄工程、冷却設備、空調設備などから多くの熱が排出されています。なかでも、温度が比較的低い「低温排熱」は、工場内に広く存在している一方、そのままでは利用先を見つけにくく、回収されずに廃棄されることも少なくありません。
この記事では、低温排熱の特徴や回収が難しい理由、代表的な回収方法、設備選定のポイントを解説します。
目次
低温排熱とは
低温排熱とは、工場や各種設備から排出される熱のうち、比較的温度が低く、そのままでは利用先が限られる熱を指します。「低温排熱」に明確な温度区分はなく、業種や設備、利用目的によって対象となる温度帯は異なります。
工場の洗浄排水や冷却水、コンプレッサーの冷却排熱、冷凍機の凝縮熱、乾燥設備からの排気などは、代表的な低温排熱源です。これらは多くの工場で継続的に発生しており、回収・再利用の対象となる熱源として注目されています。
高温排熱は、蒸気の生成やボイラー給水の予熱などに利用しやすい一方、低温排熱は利用先との温度差を確保しにくいため、そのままでは活用が難しいことも少なくありません。そのため、多くの工場で発生しているにもかかわらず、未利用熱として排出されるケースも見られます。
こうした低温排熱も、熱交換器やヒートポンプを適切に組み合わせることで、有効活用できる可能性があります。
関連記事:排熱回収のメリットは?利用できる熱源や注意点についても解説
排熱と廃熱の違い
排熱とは、設備や製造工程から排出される熱を指します。一方廃熱は、利用されずに捨てられる熱という意味で使われることがあります。ただし、両者の使い分けは資料や業界によって異なり、明確に区別されていない場合もあります。本記事では、設備から排出される熱を「排熱」として説明します。
熱交換器やヒートポンプなどで回収・利用することで、これまで捨てられていた熱を有効なエネルギーとして活用できます。
低温排熱の再利用が難しい理由
低温排熱が十分に活用されない背景には、温度が低いという条件だけでなく、利用先との温度差や、排熱の発生時期と熱需要のずれ、設備コストなど、複数の要因があります。
利用先との温度差が小さい
熱交換器は温度差を利用して熱を移動させます。そのため、排熱源と利用先の温度差が小さいほど熱交換しにくくなります。
例えば50℃の排水で20℃の給水を温めることは比較的容易ですが、給水温度を50℃に近づけようとするほど温度差が小さくなり、熱を移しにくくなります。そのため、必要な熱交換量を確保するには、伝熱面積を増やすなどの対応が必要となり、設備の大型化やコスト増加につながる場合があります。
熱の利用先が限られる
低温排熱は、高温排熱に比べて利用できる工程が限られます。給水予熱や洗浄水の加温、空調用外気の予熱などには利用できますが、利用先の必要温度や運転時間が一致しなければ有効活用できません。
また、排熱が発生する時間帯と熱需要が異なる場合は、蓄熱設備の導入や別の利用先の検討が必要になります。
電力へ変換しにくい
低温排熱は発電にも利用できますが、熱源温度が低いほど発電効率は低下します。低沸点媒体を用いる有機ランキンサイクル(ORC)といった技術もありますが、熱源温度や条件によって適用範囲は異なります。そのため、より低温の排熱では、熱のまま利用したりヒートポンプで昇温したりする方が適する場合があります。
コストとのバランスが求められる
低温排熱の回収では、熱交換器だけでなく、配管やポンプ、送風機などの設備も必要になります。さらに、排水や排気に含まれるスケールや油分、粉じんによる汚れ・腐食対策も欠かせません。そのため、回収できる熱量だけでなく、設備の消費電力や保守費用を含め、経済性を総合的に評価することが重要です。
熱源別に見る低温排熱の回収
低温排熱の回収方法は、排水・排気・冷却設備など、熱源の種類によって異なります。ここでは、代表的な熱源ごとに回収方法や設備選定のポイントを解説します。
排水・温水から熱を回収する
工場では、洗浄工程や冷却工程などから温排水が発生します。排水をそのまま放流すると、熱エネルギーも失われてしまいます。
食品工場や化学工場、メッキ設備などでは、排水の熱を熱交換器で回収し、給水予熱や工程用温水として再利用する例があります。
排水温度や利用先の条件によっては、熱交換器のみで十分な熱回収が可能な場合もあります。一方で、排水にはスケールや油分が含まれることもあるため、熱交換器の性能を維持するには、洗浄性や耐汚染性も考慮して設備を選定することが重要です。
排気・空調設備の熱を利用する
工場の排気や乾燥設備、空調・換気設備から排出される空気にも熱が含まれています。排気の熱を給気側へ回収することで、空調負荷の軽減につながる場合があります。
排気と給気の間に十分な温度差がある場合は、顕熱交換器による直接回収が検討されます。回収した熱の温度だけでは用途に合わない場合は、ヒートポンプを利用する方法もあります。また、排気には粉じんなどが含まれることもあるため、設備選定ではメンテナンス性も重要になります。
MDIでは、排気熱の回収に対応した熱交換器「HEATEX」を取り扱っています。排気熱の有効活用を検討している場合は、選択肢の一つとして参考にしてみてください。
冷却設備(コンプレッサー・冷凍設備)から回収する
コンプレッサーや冷凍設備では、冷却水を介した排熱や、冷媒の凝縮時に放出される熱が継続的に発生しています。これらの熱は、給湯や給水予熱などへ利用できる場合があります。
熱源の温度だけでは利用先に必要な温度へ届かない場合は、ヒートポンプを組み合わせる方法もあります。例えば40~50℃程度の排熱でも、ヒートポンプで昇温することで、給湯や製造工程などへ利用できる温度帯まで引き上げられるケースがあります。
一方で、ヒートポンプは電力を消費するため、排熱温度や必要温度、運転時間などを踏まえて導入を検討することが重要です。なお、ヒートポンプの効率を表す指標として、COP(成績係数)が用いられます。
関連記事:COP(成績係数)とは?省エネとの関係や熱利用の効率を高める方法
導入前に確認すること
低温排熱は、熱源によって適した回収方法が異なります。導入を検討する際は、熱源温度や流量、利用先の条件を整理し、「回収できるか」だけでなく、どの程度の効果を見込めるかまで総合的に評価することが重要です。
熱源と利用先の条件を把握する
低温排熱を有効活用するためには、まず熱源の状態を把握することが重要です。例えば、次のような項目を確認するとよいでしょう。
- 排熱源の温度
- 流量・風量
- 排熱の発生時間・稼働時間
- 利用先で必要となる温度
- 熱需要の発生タイミング
- 排熱源と利用先の距離
これらを整理すると、「熱交換器のみで十分な熱回収が可能か」「ヒートポンプを組み合わせた方がよいか」といった判断がしやすくなります。また、排熱源と利用先が離れている場合は、配管による熱損失や搬送動力が増えることもあります。回収できる熱量だけでなく、これらの損失や運転コストまで含めて評価することが大切です。
メンテナンス性も考慮して設備を選ぶ
排水や排気を利用する設備では、スケールや油分、粉じんなどが付着し、熱交換性能が低下する場合があります。そのため、使用環境に適した材質や構造に加え、清掃や点検のしやすさも考慮して設備を選定することが重要です。
経済性を踏まえて設備を選定する
導入を検討する際は、回収できる熱量だけでなく、設備費や運転費、保守費用も含めて経済性を評価することが重要です。排熱源と利用先の条件を整理したうえで、自社設備に適した熱回収システムを選定しましょう。
まとめ
低温排熱は、高温排熱に比べて利用が難しいものの、排水・排気・冷却設備など、工場内のさまざまな場所で継続的に発生しています。熱源の温度や流量、利用先の条件に応じて熱交換器やヒートポンプを選定することで、これまで利用されていなかった熱を有効活用できます。
低温排熱の回収を検討する際は、熱源ごとの特徴と導入後の経済性を整理し、自社設備に適した回収方法を検討することが重要です。

