2023.01.21

排熱回収のメリットは?利用できる熱源や注意点についても解説

排熱回収のメリットは?利用できる熱源や注意点についても解説

排熱回収によって得られるメリットは、燃料の削減とコストカットです。

排熱を回収してエネルギーとして利用できれば、電力や燃料にかかる経費を抑えながら二酸化炭素の排出も削減できます。さらに、一定の条件を満たしていれば、再生可能エネルギーの補助金を受け取れます。

排熱が利用されているのは、主に空調システムや電力、給湯設備などです。また、海外ではデータセンターの排熱を利用した街作りが計画されており、排熱を再利用することへの期待は高まっています。

今回の記事では、排熱回収のメリットや利用できる熱源について解説しています。また、排熱回収における注意点についてもふれているので、参考にしてください。

排熱回収とは

排熱回収とは、排出された熱を回収して利用することです。熱交換器やヒートポンプを使用します。熱交換器にはさまざまな材質、形状があり、多くの状況に対応できるようになっています。

関連ページ:熱回収の仕組みとは?廃棄物をエネルギーとして有効活用

関連ページ:排熱利用とは?熱の有効利用方法の現状を深掘り解説

排熱と廃熱との違い

廃熱と排熱の違いは、一言でいえばその熱の状態です。排熱は主に熱が排出されている状態、もしくは排出された熱自体を指します。対して廃熱は使われずに廃棄される熱を意味しています。

なお廃熱を活用することを「廃熱回収」と呼び、これは排熱回収に含まれます。

排熱回収のメリット

排熱回収で得られるメリットは、次の2つです。

熱エネルギーの削減

熱エネルギーを削減するために必要なのは、排熱を熱エネルギーとして再利用することです。

例えば食品工場や銭湯などでは、大量の熱エネルギーを消費しています。通常であればそのまま排出されていく熱を回収して利用できれば、全体で使用する熱エネルギーが少なくなります。

工場において、もっとも多く排熱が出るのは生産工程です。生産工程において排熱を回収して再利用できれば、ボイラーの台数を減らすことも期待できます。一例を挙げると、食品工場では蒸すときと洗浄するときとで高温の蒸気を使い、ドレン水や排水として捨てています。

こうした排熱を回収して再利用するサイクルができれば、環境問題に配慮している企業としてのアピールも可能です。

コストカット

排熱利用は大幅なコストダウンが可能です。

1度使用した熱エネルギーを再利用するため、ボイラーの燃料消費量を減らし、小型化できます。また、熱源を新たに追加する必要もありません。さらに、一定の条件を満たしている場合は再生可能エネルギーの補助金が受け取れる可能性があります。

関連ページ:省エネ/排熱回収コンサルティング

排熱回収の注意点

排熱回収において注意すべき点は3つです。

熱源の温度

排熱回収において、熱源の温度はもっとも重要です。温度が高く、排出量が多いほど効率的に熱エネルギーを回収できます。ただし高温の排水や熱が大量に出ているとしても、見た目や体感での判断では意味がありません。実際に定量的に測定して、温度や流量を数値で明らかにしてください。

熱源が排水の場合

排水には不純物が含まれていることがあり、熱交換器の壁面にスケールが付着して故障する可能性があります。また、腐食やダストの付着もトラブルの原因です。熱交換器は点検や洗浄など定期的なメンテナンスが必要となります。導入の段階で、「どのようにメンテナンスをするか」を視野に入れて熱交換器を選ぶことをおすすめします。

熱源が排気の場合

排気も排水と同じく、スケールやダストなどの付着が懸念されます。ただし、排気の場合は特に結露したときに腐食が進む可能性があります。ですから、熱交換器はステンレスやチタンなど腐食に強い材質のものを導入してください。

排熱回収で省エネを実現できるシーン

排熱回収によって省エネルギー化を実現できるシーンを、5つピックアップしました。

関連ページ:排熱利用熱交換器の導入事例(省エネ対策) 

データセンター

データセンターで利用されている電力のうち、90%が熱に変わっています。サーバーからの排熱を回収して再利用できれば、大幅なコストダウンが可能です。

例えば、ノルウェーのベルゲン近郊ではデータセンターの排熱を利用した街を作る計画が進んでいます。データセンターを液体によって冷やし、街につながる循環網を通して住宅の床暖房に用います。そして、再びデータセンターに戻ってくるまでに冷えた液体を、新たに冷却水として利用するという仕組みです。

空調設備

排熱を利用した空調設備は、省エネやコストカットが可能です。

例えば、温泉施設での排湯を熱源として室内の冷暖房に再利用した結果、ガス代金が大幅に削減できたという事例があります。また、複数の場所から熱を回収するように設備を整えれば限られたスペースでも効率よく熱を回収できます。

オーガニックランキンサイクル

オーガニックランキンサイクル(ORC)とは、低温の熱から電力を生み出す仕組みのことです。ORCの熱源は排熱もしくは排気です。

日本のある温泉施設では、すでにORCを導入して温泉排熱を施設の電力として利用しています。また、日本には工場や温泉など小規模の熱源が存在していることから、ORCでの電力供給が期待できます。

コージェネレーション

コージェネレーションとは気体を燃料としてエンジンやタービンなどで発電し、その排熱を回収して利用するシステムのことです。一般的には熱併給発電、熱電併給と訳されています。 

回収した排熱を活用できるシーンは多岐にわたり、工場内の熱源、オフィスや家庭、病院などの空調システムや給湯設備が挙げられます。

石油化学と精製

石油化学とは、天然ガスやガソリンなどを精製してさまざまな製品加工へ応用する技術です。石油化学によって作られているのはプラスチックや合成繊維、合成洗剤など日常生活と密接に結びついています。

国内において、石油精製は工業地帯(コンビナート)でおこなわれています。コンビナートには製油所や化学工場などが集中しており、そのため早くから省エネ対策が進められていました。

製油所の排熱を隣接する工場の電力や燃料として利用できれば、単一での省エネよりもさらに二酸化炭素を削減できます。これによって、年間28,000トンもの二酸化炭素の削減を実現しました。

まとめ

排熱回収のメリットは、熱エネルギーを削減してコストカットを実現できる点にあります。コストに関しては1度利用した熱エネルギーを再利用して空調や電力として利用するため、大幅なダウンが見込めます。

熱源として利用できるのは排気または排水です。実際に排熱を利用して省エネを実現しているシーンとしてはデータセンターや空調設備、石油化学と精製などです。データセンターにいたっては、ノルウェーで街作りが計画されているほど大きな成果が見込まれています。

排熱回収の際には、熱源の温度や流量を正確に測定することが重要です。また、熱交換器に付着するスケールやダスト、腐食によるトラブルを避けるため、材質はチタンやステンレスなどを選んでください。

 

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