2025.07.02

不凍液とは?クーラントとの違いや主な種類など解説

不凍液とは?クーラントとの違いや主な種類など解説

工場の省エネや設備投資の意思決定において、熱エネルギーの理解は欠かせません。特に「顕熱」と「潜熱」は熱管理の基礎知識として重要であり、効率的な省エネルギー対策や設備改善の成果を左右します。

本記事では、顕熱と潜熱の基本的な違いをわかりやすく解説し、工場現場での具体的な活用例や効果的な熱管理手法についてご紹介します。新人教育や社内説明資料としても活用できる内容ですので、ぜひご活用ください。

不凍液とは

不凍液とは、エンジン内部の温度を適切に保つために水に混ぜて使われる液体で、主に車などで使用されます。具体的には、ラジエーターやヒートポンプなどの熱交換器に使用されます。

水に加えることで、凍る温度を下げたり、逆に沸騰する温度を高めたりする働きがあり、寒さによる凍結や暑さによる過熱を防ぐ役割を担っています。

主成分はグリコールと呼ばれる物質(たとえばエチレングリコールやプロピレングリコール)で、金属のサビや腐食を防ぐための防錆剤なども加えられています。エチレングリコールは性能に優れていますが毒性があるため、安全性が重視される現場ではプロピレングリコールが代わりに使われることもあります。

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不凍液の濃度

エンジンをしっかり保護するためには、不凍液の濃度が重要です。濃縮された不凍液は、使用前に水で薄めて適切な割合にし、混合液として使われます。

この混合液は、水の凍る温度を下げて気温が低い環境でも固まらないようにし、また沸騰しにくくすることで、エンジンが異常な高温にならないよう守ります。通常は不凍液と水を半分ずつ混ぜる「50:50」が標準ですが、車種や機械によって異なるため、メーカーの指示に従うことが大切です。

濃度の確認には「屈折計(リフラクトメーター)」という測定器が使われます。濃度が適切でないと、エンジン部品が傷んだり、システムの寿命が短くなったりすることがあるため注意が必要です。

工場や産業設備で不凍液が必要となる理由

工場や産業用の設備では、過酷な条件下でも長く安定して動き続けることが求められます。エンジンや重機は稼働中に大量の熱を生み出すため、過度な温度上昇や凍結が起きないよう注意が必要です。

そして、ここで役に立つのが、不凍液です。水だけでは、凍ったり沸騰したりして部品が破損する恐れがあり、こうしたリスクを防ぐために不凍液が使われます。また、不凍液には金属の腐食を防ぐ添加剤も含まれています。

機器の寿命を延ばし、メンテナンスの手間を減らす効果があるでしょう。特に大型ディーゼルエンジンでは、ピストンの動きにより発生する気泡が金属を傷つける「キャビテーション」と呼ばれる現象の対策としても、不凍液が一役買っています。

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クーラントとの違い

「クーラント」と「不凍液」は似た言葉ですが、実は明確な違いがあります。不凍液は、エチレングリコールやプロピレングリコールなどを主成分とする濃縮液で、単体ではそのまま使用できません。通常、水で適切に薄めてからエンジンや冷却システムに使います。

一方、クーラントは不凍液をあらかじめ水で希釈し、防錆剤や腐食防止剤などの添加成分を加えた混合液です。すぐに使える状態で提供され、エンジン内部の金属部品のサビや腐食を防ぐ役割も担っています。

この違いを理解することで、冷却システムのメンテナンスや故障予防に役立ちます。

その他の温度管理システムの種類

冷却液(クーラント)として車のエンジンや一部の空調設備に使われているのが不凍液です。しかし、冷却の方法はこれだけではありません。たとえば、セントラルエアコンやルームエアコン、ヒートポンプ、ミニスプリットなどの空冷システムは、冷媒というガスを使って熱を移動させる仕組みです。

扇風機やスワンプクーラー(蒸発冷却器)のような装置は、風を送ったり、蒸発の仕組みを利用したりして冷やすため、そもそも液体冷却は使いません。その他、放射冷却システムでは、床や天井に冷たい水を流して室内を冷やします。

このように、産業の現場では、熱を逃がすために、さまざまな冷却システムが利用されています。 そこで、LCCと冷却水を取りあげて詳しく解説します。

LCC(Long-Life Coolant)

LCC(ロングライフクーラント)は、ELC(エクステンデッド・ライフ・クーラント)とも呼ばれる長持ちするタイプの液体です。これは「OAT(有機酸技術)」という方式をベースにした添加剤を使用しており、サビ、腐食、沈殿物の発生、そしてキャビテーションなどの問題を抑える働きをします。

その結果、最大で8年または160万キロメートルの長期間にわたって交換せずに使用できるという特長があります。従来の液体では必要だった添加剤の追加やフィルターの設置が不要になるケースもあります。ただし、LCCと他のタイプの液体を混ぜると、その長寿命の効果が薄れる可能性があるため、使用には注意が必要です。

冷却水

エンジンや各種機械の内部で発生する熱を制御するために使われる液体のことを、一般には冷却水と呼びます。この液体は、水に加えてエチレングリコールやプロピレングリコールなどを混ぜたもので構成され、金属の腐食を防ぐ成分も含まれています。

グリコールの作用により、水の凍結温度が下がり、かつ沸騰しにくくなるため、暑さや寒さにかかわらずエンジンが安定して作動しやすくなります。

不凍液の種類

不凍液にはいくつかの種類があり、その違いは主成分や添加剤のタイプによって決まります。よく使われる主成分には、エチレングリコール(EG)やプロピレングリコール(PG)があります。

プロピレングリコールは毒性が低く、安全性が高いため、食品、医薬品、化粧品などに使用される成分です。ただし、極端に低い気温の環境では、エチレングリコールほどの効果が出にくく、少し粘り気が強いという特徴があります。では、詳しく解説します。

エチレングリコールベース

エチレングリコールは、車のエンジン、産業用の設備、空調機器などで使われる液体の主成分として広く利用されています。透明でほぼ無臭、ややとろみがあり、実際の製品では黄色や緑、オレンジ色などに着色されることがあります。

水と混ぜて使うことで、水の凍る温度を下げたり、逆に沸騰しにくくしたりすることができるため、エンジンが寒さで凍結したり、高温で過熱したりするのを防ぎます。熱の伝わりやすさが高く、粘り気も少ないため、効率よく熱を移動させたい用途に向いています。

ただし、エチレングリコールは体に有害なため、誤って飲まれないようににがみを加える処理がされている場合もあり、取り扱いには注意が必要です。現在では、長期間の使用を前提とした製品にもエチレングリコールが多く使われており、そこにOAT系の添加剤を加えることで、サビなどから金属を長く守るよう工夫されています。通常は水と50:50または60:40の割合で混ぜて使います。

プロピレングリコールベース

プロピレングリコールは、水の凍結温度を下げ、氷の結晶ができにくくなるように働くため、寒冷地でエンジンが凍るのを防ぐ目的で使われます。熱を伝える能力や粘度の面ではエチレングリコールより劣ることがありますが、毒性が非常に低く、安全性の高い成分として知られています。

そのため、万が一口に入ってしまうリスクがある環境や、環境への配慮が必要な場所では、エチレングリコールの代わりに広く採用されています。

プロピレングリコールは体内に入っても、害のない物質に分解され、48時間以内に体外に排出されるため、体内に蓄積される心配がないという特長があります。

まとめ

今回は、不凍液の働きや種類、安全性、そして使用時の注意点について解説しました。この液体は、過酷な温度環境でもエンジンや機器を守るために欠かせないものであり、正しい濃度管理や適切な成分の選定が重要です。

不凍液を選ぶ際には、耐久性や環境性にも配慮された製品を選ぶようにしてください。もし自社工場や施設に合うものに迷ったら、下記ページよりお問い合わせください。専門家が丁寧に返答いたします。

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