2026.08.04

カスケード冷却とは?二元冷凍と熱のカスケード利用について解説

工場では、製品の品質維持や設備の安定稼働のために冷却設備が欠かせません。なかでも超低温域の冷却は、1つの冷凍サイクルだけで大きな温度差に対応しようとすると、エネルギー効率や運転条件の面で負担が大きくなることがあります。そこで取り入れられる手法が「カスケード冷却」です。

当記事では、カスケード冷却の基本的な仕組みと、使われる場面を解説します。工場の排熱を再利用する「熱のカスケード利用」も紹介していますので、工場設備に携わる方や、冷却設備に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。

カスケード冷却とは

カスケード冷却とは、低温側サイクルと高温側サイクルに役割を分け、段階的に熱を受け渡す方式のことです。1つの冷凍サイクルだけで超低温域まで冷却しようとすると、圧力条件や圧縮比が厳しくなるため、冷却効率を保つ方法として用いられます。

低温側サイクルが冷却対象から熱を奪い、高温側サイクルがその熱を受け取って外部へ放出する仕組みです。このように2つの冷凍サイクルを組み合わせる方式は「二元冷凍」とも呼ばれます。

なお、「カスケード」という言葉は、排熱を段階的に活用する「熱のカスケード利用」の文脈でも使われます。本記事では、前半で二元冷凍としてのカスケード冷却を解説し、後半で熱のカスケード利用との関係を紹介します。

カスケード冷却(二元冷凍)の仕組み

カスケード冷却は、低温側サイクルと高温側サイクルを組み合わせて冷却します。ここでは、それぞれの役割と2つのサイクルがどのように熱を受け渡すのかを見ていきましょう。

低温側と高温側の役割分担

低温側サイクルは、冷却対象から熱を奪い、目的の低温を作る役割を担います。食品や試験設備など、実際に冷やしたい対象に近い側で働くサイクルです。

一方、高温側サイクルは、低温側から受け取った熱を外部へ放出します。冷却中の低温側冷媒から熱を受け取って外部に逃すことで、低温側が安定して冷却を続けやすくなります。

このように、温度帯ごとに役割を分けて冷却する流れを「カスケードサイクル」と呼びます。

カスケード熱交換器で熱を受け渡す

低温側と高温側の冷却サイクルを維持するうえで、カスケード熱交換器が重要な役割を担います。カスケード熱交換器とは、低温側と高温側のサイクルをつなぎ、熱を受け渡すための熱交換器です。

低温側サイクルから見ると、カスケード熱交換器は「凝縮器」の役割を持ちます。低温側冷媒は、冷却対象から奪った熱をここで放出して凝縮します。一方、高温側サイクルから見ると、カスケード熱交換器の役割は「蒸発器」です。高温側冷媒は、低温側から渡された熱を受け取り、蒸発しながら熱を外部へ運びます。

なお、カスケード熱交換器は、冷却サイクル内での熱の受け渡しを目的としており、後述する排熱回収の用途とは異なります。

カスケード冷却が使われる用途

カスケード冷却(二元冷凍)を利用する主な用途は、以下のとおりです。

  • 食品加工の工場
  • 低温保管が必要な工場
  • 試験設備

これらの現場では、超低温の冷却機能が求められます。単一の冷却設備だけでは温度を下げきれない、冷却効率を保てないなどの課題があるため、カスケード冷却を取り入れるケースが多くみられます。

食品加工の主な例は、生鮮食品のように急速冷凍や厳格な品質管理が求められる現場です。また、低温保管を要する商材の例には医薬品が挙げられます。試験設備とはメーカーのテスト環境であり、精密機器などの部品の耐久性を確認する際に、超低温環境が求められます。

熱のカスケード利用とは

工場では、加熱や冷却の工程で多くの熱が発生します。その熱をすぐに外へ逃がすのではなく、温度の高い熱から順に別工程へ回していく考え方が、熱のカスケード利用です。

たとえば、高温の排熱を加熱工程に使い、温度が下がった熱を温水や給水の予熱に活用するなど、温度帯に応じて使い道を分けられます。使える熱を段階的に活用することで、新たに投入するエネルギーを抑えられる可能性があるでしょう。

高温帯からの排熱を、さらに低い温度帯へ転用する流れを、滝が落ちる様子に見立てることから「カスケード」の表現が用いられます。排熱の処理に伴う新たな燃料の消費を避けることで、省エネ効果が見込めます。

参考:経済産業省資源エネルギー庁「実はCO2削減によく効く、熱エネルギーの低炭素化」

熱のカスケード利用と排熱回収の仕組み

工場設備から発生する高温の排熱は、熱交換器によって回収できる場合があります。ここでは、排熱をカスケード利用するメカニズムを解説します。

熱交換器で高温側の排熱を利用する

熱交換器で回収した排熱は、高い温度を必要とする工程に活用します。主な用途例は以下のとおりです。

  • ボイラー給水の予熱
  • 洗浄水の加温
  • 工程槽の加熱
  • 給気加熱

高い温度が必要な工程から順に、温度帯の合う排熱を活用していきます。

ヒートポンプで低温排熱の利用範囲を広げる

回収した排熱を、次の工程でも使いやすくするために利用されるのが「ヒートポンプ」です。熱交換器で回収した低温排熱を利用しにくい場合に、ヒートポンプで回収して昇温させると用途が広がります。

低温排熱まで回収して加熱に利用できれば、同じ電力で得られる熱量を増やせる可能性があります。MDIの導入事例では、排熱回収熱交換器とヒートポンプを組み合わせることで、消費電力に対してどれだけの熱を供給できたかを示す「COP」が従来の2倍前後に向上したケースもあります。

関連記事:活用が難しい低温排熱とは?回収方法や有効活用のポイントを解説

熱のカスケード利用の活用例

工場設備で熱のカスケード利用を活用した事例を紹介します。自社の設備でも回収できる熱がないか、確認してみましょう。

コンプレッサ排熱や機械熱を回収する設備

工場内のコンプレッサ室や機械室では、多くの排熱が発生します。排気ファンや空調、扇風機などで排熱の冷却を試みても、機器を動かす電力が熱源となり、冷却効率が上がりにくいでしょう。排熱を直接冷却するのではなく、熱交換器で回収すれば、熱源を有効活用できます。

具体的には、コンプレッサ室・機械室・生産設備などから排出された熱を回収して、ボイラー給水の加熱のために再利用できます。冷却に伴う電力消費を減らすことで、COPの改善にもつながるでしょう。

排熱を給水加熱や工程加熱に活用する設備

設備から取り除いた排熱は、温度帯が合えば他工程で再利用できる場合があります。主な用途は、ボイラー給水の加熱や洗浄水の加温、工程槽の加熱などです。排水・排熱と再利用先の具体例は以下のとおりです。

  • リネン工場の排水→ボイラー給水
  • 温泉排水→カランの給水、追い焚き
  • うどん工場の排熱→リン酸槽の加熱
  • 塗装ブースの排気→融雪用の熱

ただし、排水や排気には汚れ、繊維質、腐食性のある成分が含まれる場合があります。そのため、熱の温度だけでなく流体の性質やメンテナンス性も踏まえて、適した熱交換器を選ぶことが重要です。

まとめ

超低温域の冷却では、1つの冷凍サイクルだけで対応しようとすると、運転条件が厳しくなる場合があります。カスケード冷却は、低温側と高温側で役割を分け、段階的に熱を受け渡すことで冷却を行う方式です。

一方で、工場全体の省エネを考えるなら、冷却で取り除いた熱や設備から出る排熱にも目を向ける必要があります。排気や排水に含まれる熱を温度帯に応じて再利用できれば、ボイラー給水の予熱や洗浄水の加温、工程加熱などに活用できる可能性があります。

まずは、自社設備のどこで熱が発生しているのか、その熱をどの工程で使えそうか確認してみてください。

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