2022.06.03

冷却フィンとは?エコな熱交換機器の構造や手入れの注意点を解説

冷却フィンとは?エコな熱交換機器の構造や手入れの注意点を解説

冷却フィンは、全熱交換器やエアコンといった電化製品で広く活用されている熱交換機器です。熱の性質を活用しており動力を伴わずに熱交換できることから、電化製品の省エネ性能を高める効果も期待できます。

しかし、電気機器の一部であるため、手入れに際しては細心の注意を払わなければなりません。そこでこの記事では冷却フィンの仕組みや特徴、手入れの際の注意点をご説明します。

冷却フィンとは

冷却フィンは熱を発する電子部品で広く使用される熱交換機器です。突起部をもった特徴のある構造物をしています。

冷却フィンとは

この突起がフィンです。冷却フィンは放熱フィンや放熱器、ヒートシンクともよばれます。

冷却フィンは電子部品が発する熱を取り込み、空気中に放散させて、電子部品が過度に熱を帯びるのを防ぐために使用します。そのため、室温より低い温度にまで下げることはできませんが、自然冷却によって過度な温度上昇を防ぐ効果が期待できます。

身近なところでは全熱交換器やエアコン、冷蔵庫のほか、パソコンや自動車のエンジンの部品としても広く活用されています。

冷却フィンの仕組み

冷却フィンは突起の形状で構成されています。この形状が冷却フィンの要です。突起部分があることで冷却フィンの表面積は広がり、空気に接する部分が広がります。空気に接する部分が広くなることで、効率よく熱を放出することが可能です。

熱源や発熱量に合わせて、フィンのサイズや突起部分の数は増減します。

冷却フィンは、発熱体に密着するように設置します。発熱体と接する部分から発熱体から熱を受け取った冷却フィンが、突起部分に熱を伝えて放熱する仕組みです。全熱交換器の場合はファンを取り付けて、空気を循環させる機能を付与しています。

冷却フィンが熱交換する原理

冷却フィンは熱力学第二法則に基づいて機能しています。熱力学第二法則とは、熱は必ず高い方から低い方に移動し、その逆はないという原理です。発熱体が冷却フィンより高温である場合には発熱体から冷却フィンに熱が自然に移動し、突起部分から放熱します。

冷却フィン自体に動力があるわけではなく、積極的に冷却しているわけでもありません。そのため放熱するための動力源が不要です。また室温より温度が下がることがないため、結露が起きる心配もありません。

冷却フィンの素材

冷却フィンの素材には、次のようなものが用いられます。

  • アルミニウム
  • セラミック

冷却フィンに使用される材料は金属とセラミックに分類できます。

冷却フィンの素材による違い

比較項目 金属製 セラミック製
熱伝導性
放熱性
重量
絶縁処理 必須 不要
コスト

冷却フィンは熱伝導性が高い素材であることが重要です。そのため金属製の冷却フィンでは、熱伝導性の高さやコスト、加工のしやすさからアルミニウムや銅がよく用いられます。

ただし、金属製の冷却フィンの場合、配線に触れないように絶縁処理を施すことが欠かせません。冷却フィンが配線に触れると電気回路の機能に影響することがあります。

一方のセラミック製の冷却フィンは熱伝導性は金属性より劣ります。しかし、放熱性がありながら絶縁装置を設置する必要がありません。そのため、LED電球のようなサイズの小さい熱源体でよく活用されます。

冷却フィンの素材を検討する場合は、冷却フィンを設置する場所や熱交換率が必要量、周辺機器の状況を考慮することが大切です。

冷却フィンの用途

冷却フィンは冷却機器にとどまらず、熱交換器の一種として広く活用できる機器です。そのため冷却フィンの名称のとおり冷却以外にも暖房の用途でも用いられています。

冷却フィンは、熱の高い方から低い方に移動する性質を活用した機器です。

例えば、発熱体が高温の場合は熱を奪って放散することで発熱体を冷却します。このとき冷却フィンの周辺の空気は、発熱体から奪った熱によって加熱されます。この温められた空気を活用したのが、冷却フィンによる暖房機能です。

高温の熱を奪って低温の空気に移す冷却フィンの性質は、全熱交換器でも発揮されています。

冷却フィンのメリット

冷却フィンには次のようなメリットが期待できます。

  • 自然放熱で低コスト
  • 熱効率が高い
  • 静音性が高い
  • 結露しにくい

自然放熱で低コスト

冷却フィンは熱が持つ高温から低温に移動する性質を活用した機器です。動力がなくても高温の部分から熱を奪って放熱できます。電源を必要としないことから、駆動させるための動力設備や電力といったコストがかかりません。

熱効率が高い

冷却フィンは突起状の構造をしています。平面に比べて空気に接する面が広くなるため、熱の放散量が増加することから、効率の良い熱交換が可能です。

静音性が高い

冷却フィンは、動力源を必要としません。発熱体に接触した面から自然に熱を吸収し、放熱します。放熱量を増加させるため、もしくは送風のためにファンを取り付けた場合は機械音が発生するものの、冷却フィン自体には高い静音性が期待できます。

結露しにくい

冷却フィンは自然な熱の性質に伴って熱交換をおこなっています。また動力源を用いて急激に温度を変化させることもないため、周辺の空気の温度を超えて極端に低温になることがありません。このため結露しにくい特徴があります。

水気を嫌う電子機器にとって、結露しにくいことは重要な要素です。加熱を防止しながら結露も起こしにくいのは、冷却フィンの大きなメリットです。

冷却フィンの弱点

駆動にかかるコストを抑えながら効率的に熱交換できる冷却フィンですが、次のような弱点があります。

  • 熱効率が高いと装置が大型になる
  • 手入れの難易度が高い

熱効率が高いと装置が大型になる

冷却フィンは空気に触れる面積が狭くなると熱交換率が下がります。高い熱交換率を期待するなら表面積を増やす必要があるため、冷却フィン自体のサイズも大きくならざるをえません。

また熱交換率を高めるために送風機の設置が有効ですが、この場合も送風機や送風機の動力源のためのスペースが必要になり、装置の規模が大きくなります。

冷却フィンを含めた大型の装置を設置するスペースを確保しても、高い熱交換率を求める。もしくはコンパクトな装置を選んで熱交換機能が下がることには目をつむる。いずれかを選択する必要があります。

手入れの難易度が高い

冷却フィンの手入れは、専門業者に依頼してください。

冷却フィンにほこりやチリが溜まると熱交換性能が下がります。またほこりやチリを餌にするカビが繁殖することもあるため、定期的な清掃は欠かせません。特に送風機を併設している全熱交換器のような機器の場合は、年に1度を目安とした清掃が必要です。

小型の機器に設置された冷却フィンであれば、毛の柔らかいブラシを使ってほこりを払い落とすといった掃除で対応することも考えられます。しかし、電気機器に関する専門の知識もないままに分解して内部の部品を取り出すのは大変危険です。

また全熱交換器やエアコンのように大型の機器の冷却フィンは重量があります。清掃に際しても特殊な機器を使い、それぞれの機器に適した方法で清掃しなければなりません。

闇雲に高圧洗浄機のような道具を使って洗浄した場合、冷却フィンだけでなく周辺機器が水に触れたことで、機器全体の故障につながる可能性もあります。

冷却フィンは自然の仕組みを活用した機器です。しかし電気を伴う機器の一部であることから、手入れに関しては細心の注意を払うことが大切です。長く安全に冷却フィンを活用するために、手入れは専門の業者にご依頼ください。

まとめ

冷却フィンは、自然の原理を活用して動力のコストを抑えながら熱交換できる機器です。省エネと換気を両立させた全熱交換器のほかエアコンといった機器に広く活用されています。

しかし冷却フィンの性能を維持し、衛生的かつ安全に使用するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ると冷却フィンの性能が著しく低下し、故障の原因にもなります。

冷却フィンの清掃や点検は年に1度を目安に実施することが大切です。その際は、冷却フィンや電気設備に関する知識や取扱経験が豊富な業者にご依頼ください。

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