2022.05.30

全熱交換器には配管不要な機種もある!全熱交換器の種類を解説

全熱交換器には配管不要な機種もある!全熱交換器の種類を解説

全熱交換器は省エネ型換気設備です。環境負荷の低減と空気環境の基準を満たす機器として注目されています。

旧来の全熱交換器は、設置に際して配管機器の設置や機器を設置するためのスペースの確保が懸念材料でした。また後付けの全熱交換器の場合、配管がむき出しの状態で設置しなければならないこともあります。建物の用途によっては景観を壊すこともありました。

しかし、現在の全熱交換器ではさまざまなタイプがリリースされています。配管の設置不要で利用できる全熱交換器もあり、豊富な選択肢のなかから設置する環境に適したタイプを選ぶことが可能です。

そこでこの記事では、さまざまなタイプの全熱交換器を紹介するとともに、それぞれの特徴についてご説明します。

全熱交換器の特徴

全熱交換器には次のような特徴があります。

  • 換気による温度変化を抑制
  • エアコンの負担を軽減
  • エアコンとの併用で省エネを実現

全熱交換器は室内の空気を排出する際に空気中の熱を取り除き、外から取り込んだ空気に熱を移して室内に取り込みます。

熱には熱気だけでなく冷気も含まれます。エアコンで冷やした空気から冷たさを取り除き、外から取り込んだ熱い空気を冷やして室内に流し込む仕組みによって、室内の温度を大きく変えずに空気を入れ替えることが可能です。

また室温を大きく変えないことでエアコンの負荷を低減し、省エネを実現します。

全熱交換器の設置における懸念点

全熱交換器を設置する際に懸念されるのは、配管や熱交換機器の設置にスペースを要する点です。

特に天井に埋め込むタイプの全熱交換器の場合、建物の構造や天井裏に設置されているほかの配管や配線の状況によっては設置がむずかしい、もしくは設置できる箇所が限定されるケースがあります。

また壁に設置する全熱交換器の場合、配管が露出した状態で設置します。むき出しの配管は無骨な印象を与えかねません。例えば顧客を招くために使用する居室では、景観を壊すためふさわしくないこともあります。

しかし最近では全熱交換器のタイプが増えており、既存の全熱交換の弱点を克服できるようになりました。

全熱交換器のタイプ

全熱交換器の需要の増加に伴い、全熱交換器の種類は増え、さまざまなニーズに対応できるようになりました。室内だけでなく軒下に設置できるタイプのほか、配管を必要としないタイプも登場しています。

全熱交換器は大きく次の2つのタイプに分類できます。

  • ダクト式
  • ダクトレス

配管の設置が必要なダクト式と、配管の設置を必要としないダクトレスです。

ダクト式

配管設備の設置を伴うダクト式の全熱交換器には、次の2種類があります。

  • 天井埋め込み型
  • 露出設置型

天井埋め込み型

天井埋め込み型の全熱交換器には、配管設備だけでなく熱交換器も天井裏に設置するタイプと、配管のみ天井裏に埋め込んで熱交換器は天井に埋め込むように設置するタイプがあります。

配管設備と熱交換器を天井裏に配置するタイプでは、熱交換器を中心に合計4本の配管を設置します。

  • 屋外から取り込んだ空気を熱交換器に届ける配管
  • 熱を移し終えた外気を室内に取り込む配管
  • 室内から空気を吸い上げる配管
  • 熱を取り除いた室内の空気を屋外に排出する配管

天井に2ヶ所、屋外に面した壁面に2ヶ所と合計4ヶ所の穴を開けて給気と換気する仕組みです。

強力な給気と排気によって室内の空気を整える効果が期待できます。その反面、天井裏のスペースが十分にない場合には設置できません。また既設の建物に設置する場合、天井裏の大規模な工事が必要になるため、一定期間居室の使用に支障が出ることがあります。

そのため天井埋め込み型の全熱交換器は、新築の建物であり、かつ天井裏のスペースを確保しやすい場合に適した換気設備です。

露出設置型

大規模な工事を伴わずに手軽に設置でき、かつ強力な換気機能が期待できるのが、露出設置型の全熱交換器です。

露出設置型の全熱交換器を設置できる場所は建物の構造によって異なります。設置場所としてよく選ばれるのが次の箇所です。

  • 室内の天井
  • 軒下の天井
  • 壁面
  • 屋外

露出設置型の全熱交換器には、熱交換器を天井や軒下に吊り下げるタイプや、壁に取り付けるタイプ、また屋外の地面に置くタイプがあります。選択肢が豊富な点が魅力の1つです。

ただ天井や壁面の一部スペースが配管や機器に占領されるため、居室スペースが狭くなる弱点があります。その反面で換気機器が居室の利用者の目につきやすいため、室内換気に十分な配慮をしている安全な設備というイメージ作りに貢献するのはメリットです。

また全熱交換器は4本の配管を使用するのが一般的ですが、屋外に熱交換器を設置する機器であれば、配管は2本で済みます。

屋外の空気の吸引と室外の空気の排気は、配管を介さずに熱交換器本体から直接おこないます。そのため室内から空気を吸い上げる配管と、熱交換器をとおして熱を移したあとの空気を室内に戻すための配管の2本で換気が可能です。配管が少ないので、室内を広く使用できます。

さらに露出設置型の全熱交換器は天井埋め込み型と異なり、大掛かりな設置工事を伴いません。感染症の拡大防止の観点から換気設備を新たに導入したい場合に、検討したい機器です。

ダクトレス

配管の設置を伴わない、コンパクトな全熱交換器も登場しています。

ダクトレスタイプの全熱交換器は、2台一組の機器です。内部に熱交換器とフィルターのほかに、1台には機械式給気ファン、もう1台には機械式排気ファンを搭載した、シンプルな構造です。屋外に接する壁の2ヶ所に1台ずつ取り付けますが、配管は設置しません。

配管の設置が必要な全熱交換器では、熱交換器本体に配管をつなげて空気を移動させる仕組みです。一方のダクトレスな全熱交換器では、70秒ごとに給気と排気が入れ替わる仕組みによって、室内の空気を入れ替えています。

給気排気の能力はダクト式の全熱交換器に比べると弱まるものの、居室の景観を邪魔せず、スペースも圧迫しない点はメリットです。小規模な建物に設置する全熱交換器として検討するのに適しています。

配管の有無による違い

配管設備を伴う全熱交換器と、配管の設置が不要な全熱交換器の違いをまとめたものが次の表です。

配管設備の有無による全熱交換器の違い

比較内容 配管設備有り 配管設備なし
機器の設置スペース スペースが必要 場所を取らない
換気機能 強力 若干弱い
メンテナンス 専門業者に依頼 自分でケア可能な部分もある
対応する建物の規模 中〜大規模 小〜中規模

配管設備を伴う全熱交換器は、設置にあたってスペースを必要とします。その分強力なファンを搭載しており、高い換気機能が期待できることから、人の出入りの多い建物や不特定多数の人が利用する建物での使用に適しています。

ただし配管の定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ると内部にほこりが溜まり、配管内部やフィルターにカビが発生する原因になります。また使用に伴い配管内部にスケールと呼ばれるミネラル分が堆積し、機器の性能を下げることがあります。

少なくとも1年に1回は専門の業者に依頼して清掃するとともに、換気性能に衰えを感じたときも、早めのメンテナンスを依頼してください。

一方のダクトレスな全熱交換器は、コンパクトでスペースを取らず、フィルター交換をはじめとするメンテナンスが容易な点が魅力です。ただし換気性能が弱い傾向があるため、小規模な事務所や店舗といった居室での利用の際にご検討ください。

まとめ

全熱交換器は今や、建築物の換気設備として欠かせない機器です。

2017年4月に改正された建築物省エネ法によって、省エネ基準に適合する換気設備の導入を促進する動きが高まっています。現在は大規模な非住宅建築が対象ですが、この適用範囲は今後拡大される見込みです。感染症の拡大防止の観点からも、換気設備の設置はより一層重要になります。

全熱交換器の種類は豊富にあり、設置場所の条件によって最適な機器は異なります。自身の事業所に適した全熱交換器の選定に迷う際は、複数社に見積もりを依頼してご検討ください。

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