熱回収の仕組みとは?廃棄物をエネルギーとして有効活用

廃棄物を処理する際には、焼却処理されることが多いです。大量の熱と二酸化炭素が発生しますが、その熱を回収して有効活用する熱回収も同時に行われています。今回は、熱回収のメリットを具体例と交えて見ていきましょう。
目次
熱回収の仕組み
熱回収は、廃棄物の焼却や設備の排熱などを回収して有効活用することです。これまで捨てられていた熱を再利用するということで、化石燃料の消費量を削減することができます。コストの削減にもつながるため、生産効率の工場と環境保護を両立できる画期的な方法です。
例えば、廃棄物を焼却処理する際に焼却炉などを使用しますが、その中は非常に高温になっており、大量の熱が発生しています。焼却が終わって火が消えると、次第に焼却炉の中の温度も下がっていくでしょう。焼却時に発生した熱は、焼却炉の温度が下がるにつれて、空気中に少しずつ逃げていきます。一方で、製造工程や室内の暖房などで熱が必要なときには、ボイラーや暖房器具などを使用しているでしょう。これらの道具では、化石燃料や電気などのエネルギーを使って熱を発生させています。
このように、熱を不要なものとして捨てている一方で、わざわざエネルギーを消費して必要な熱を発生させているのはもったいないです。そこで、熱回収を行えば、廃棄物の焼却で発生する熱を空気中に逃さず、回収して再利用できます。廃棄物の焼却のように、温度差の大きな熱源から熱回収する場合には、熱交換器を使用することが多いです。
また、工場の設備を稼働させたときに発生する排熱も熱回収によって再利用が可能です。排熱の状態により、ヒートポンプなどを使用することが多くあります。
熱回収のメリット
日常生活の中で、燃料を消費して熱を発生させるということが行っています。灯油を使用する石油ストーブや石油ファンヒーターが代表的な例です。しかし、このように燃料を使用して、わざわざ熱を発生させると有害物質が発生するため、地球環境や健康への悪影響が考えられます。そこで、代替えになるものとして考えられているのが「熱回収」です。
資源の枯渇や地球温暖化が懸念される中で、熱回収は地球環境に優しい取り組みとして注目を浴びています。企業にとっても、消費する資源が少なくて済むためコストダウンにつながり、メリットが大きいです。ここでは詳しく見ていきます。
熱回収で燃料費を削減できる
熱回収によって得た熱は、ヒーターなどに再利用することができます。ヒーターで使う熱の全てを熱回収で賄うことはできなくても、一部を賄うことは可能です。その分だけ化石燃料や電気などの消費量は減ることになるでしょう。
熱回収を導入する前と比べて燃料費などのコストを削減できるケースが多いです。
MDIでは、ボイラー排熱から最大約75パーセントの熱を回収目標も可能です。実験においては、燃料費も約15パーセントの削減を実現しました。工場だけでなくビニールハウスなどでも利用できます。暖房や温度調整などを行っているところでは、利用可能なケースが多いため、ぜひ熱回収の導入を検討してみてください。
関連ページ:排熱利用熱交換器の導入事例(省エネ対策)
熱回収は環境保護にも貢献できる
熱回収により化石燃料の消費量が減らせれば、地球環境保護にも貢献できます。
廃棄物を処理する際に、熱エネルギーが必要とされる場面はかなり多いです。一方でまとまった量の熱エネルギーを発生せるためには、燃料を燃やすという方法が用いられます。その際に使用する燃料は、石油が使われることが多く、限りある資源を消費しなければなりません。また、石油などの燃料を燃やす場合には二酸化炭素が発生するので、地球環境にも悪影響を与えてしまうでしょう。
その点、熱回収なら処分する廃棄物を燃やす際に発生する熱をエネルギーとして活用します。つまり、廃棄物が燃料の役割を果たすというわけです。その分だけ石油などの資源を消費しなくて済み、二酸化炭素の排出量の削減につなげることができるでしょう。
熱回収を行う廃棄物焼却処理は埋め立てより地球に優しい?
地球環境保護のことを考えるのであれば、そもそも廃棄物は燃やさずに埋め立て処理をすればいいという意見もあります。埋め立てなら熱も二酸化炭素も発生しないため、より地球に優しいと考えられているようです。廃棄物の中にはプラスチックも含まれていますが、埋め立て処理なら焼却処理と違ってダイオキシンは発生しません。
しかし、埋め立てをすると長期的にはメタンガスが発生してしまいます。そのメタンガスが浸出水に溶けて水質汚濁につながることも多くあります。
一方、廃棄物の焼却処理は高温で焼却を行えば、ダイオキシンの発生をある程度は抑えられます。加えて熱回収も行えるため、長い目で考えた場合には埋め立てよりも熱回収が行える焼却処理の方が、地球環境に優しいと言えるでしょう。
熱回収の具体例
具体例にどんな場面で熱回収が行われているのか見ていきましょう。
ボイラーのエコノマイザー
熱回収の代表的な例としては、ボイラーのエコノマイザーが挙げられます。ボイラーを沸かす際に燃焼排気ガスが発生しますが、その燃焼排気ガスは高温です。そのため、燃焼排気ガスを有効活用して給水予熱を行うことができます。
熱回収を行わないタイプのボイラーなら熱効率は80パーセント前後です。しかし、この方法で熱回収を行うことで、熱効率を95パーセント程度まで高められ、投入したエネルギーがほとんど無駄なく使われます。
ゴミ発電
ゴミが発電はゴミを焼却処分する際に、発生する熱で火力発電を行う方法です。火力発電では通常なら化石燃料を燃やして発生した熱を利用しますが、代わりにゴミを燃やしたときに発生する熱を使います。ただ、現状のゴミ発電は発電効率があまり高くないのが難点です。技術的な面で発電効率はまだまだ上がる余地があるため、今後は普及していくかもしれません。
例えばゴミ焼却施設では、大量の廃棄物を焼却処理しており、熱と二酸化炭素が大量に発生しています。しかし、廃棄物の焼却処理により発生した熱は、大気中にそのまま放出されているケースがほとんどです。その熱を回収して、熱を必要とするところへ送れば熱の再利用が可能になります。このことが熱回収です。
暖房の熱として利用すれば、省エネにもなります。石油ストーブの暖房器具と比較して、二酸化炭素の発生量と限りある燃料の消費が減らせるため、地球環境への配慮にもつながるでしょう。
このことから、熱を資源として捉え、熱回収をリサイクルの一種として捉える見方も増えてきました。熱回収は、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルと並んで、サーマルリサイクルと呼ばれています。
まとめ
熱回収は、廃棄物の焼却処理で発生する熱を回収して、暖房の熱などに有効活用することです。熱を資源として捉える見方も強く、リサイクルの一種として位置づけられています。
熱回収の仕組みを導入することで、捨てるはずの廃棄物を燃料として有効活用できます。その分だけ限りある資源を使わずに済み、二酸化炭素排出量も抑えられるので地球環境に対して好影響です。さらに、コスト削減にもつながるので、ぜひ熱回収の導入を検討してみてください。
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