2020.09.24

スケールって一体何? 発生する原因と除去方法を解説

Tap water

熱交換器の配管内にコンクリートのような堆積物が付着していることがよくあるでしょう。これはスケールというものです。スケールが溜まりすぎると、熱交換器の性能を十分に発揮できなくなるため、定期的に除去する必要があります。

ここでは熱交換器を扱う上で知っておきたいスケールの基礎知識、スケールが配管内に付着する原因など、熱交換器のスケール除去における基本を徹底解説します。

 

 

スケールとは?

「スケール」とは、水中に溶けている無機塩類が析出した物質のことです。水垢の一種ともいえます。

例えば、低温と高温の2種類の水が配管内を循環する熱交換器においては、水にわずかに含まれているシリカ、カルシウムなどが配管内に析出・付着し、これを放置するとやがて堆積します。これがスケールの正体です。

スケールは非常に硬く、水に溶けにくい「難溶性物質」であり、金属ブラシや水改質装置では容易に削り落としや析出・付着防止が困難な、熱交換器の厄介者となっています。

 

水に含まれる成分が析出する

水には一見すると何も溶けていないように見えても、ケイ酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの物質が溶けています。そして、一般的に水に溶けることができる物質の量には限界があり、その限界を超えると溶けている物質が析出してきます。

例えば、水が蒸発して減るとその分、物質の濃度が濃くなるでしょう。そうなると、溶けきれない物質が析出することがよくあります。これが熱交換器の配管内で起こった場合に、配管内部に析出した成分が少しずつ溜り、まとまった量になったものがスケールです。

 

 

熱交換器のスケール障害で発生するリスク

熱交換器は、熱源の熱を配管内の水が吸収することで熱交換をする仕組みになっています。

関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介

配管内にスケールが付着すると、配管を通る水量が減るので熱交換効率が著しく低下します。水が必要な温度に上昇しない、水を必要な温度に冷却できないなどの「スケール障害」が発生すると、熱交換器が本来の機能を発揮できない状態になります。

 その結果、熱交換器は次のようなリスクに晒されます。

  • 運転コストの増加……スケール障害が発生すると、熱交換に必要な高温・低温を確保するため、熱源の温度を従来以上の高温に設定する必要に迫られる。その影響で運転コストが増加する。
  • 燃料消費の増加……スケール障害が発生すると、熱交換器の熱消費エネルギーが上昇するので、燃料消費量や諸費が増加し、本来は不要な燃料消費が発生する。また熱消費エネルギーの上昇は熱交換器にも負荷を与え、様々な故障発生要因にもなる。
  • 配管の腐食……スケール障害が発生すると、水の流速低下、配管の目詰まり、水の逆流などの要因になる。さらに配管内にスケールが付着・堆積することで配管が早期に劣化し、やがて腐食することもある。

 

配管内にスケールが析出・付着する原因

すべての物質(固体)にはそれぞれに水に溶ける量の限界、すなわち「溶解度」があります。溶解度を超えた量の物質は水から分離し、水中に沈殿します。この沈殿物がスケールの発生要素になっています。

特に日本の工業用水にはシリカ、カルシウム、マグネシウムなど溶解度が低い無機塩類化合物が多く含まれています。これらの化合物は溶解度が低いので水から分離しやすく、スケールとして配管内に付着しやすくなっています。

このため日本の工業用水はスケールを生じさせやすい水質と言われており、熱交換器のスケール障害発生が絶えない原因になっています。

 

 

スケールの種類

熱交換器の配管に付着するスケールは、主に次の2種類です。

 

カルシウムスケール

カルシウムスケールは水中に溶けているカルシウムが、他の不純物と結合して析出することで発生します。具体的には炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの物質です。

カルシウムは温度が低いと水に溶けやすくなる性質を持ち、高温の状態になったときに析出しやすくなります。またPHが低いと溶けやすい性質もあるため、水がアルカリ性に傾いたときにも析出しやすいです。

例えば、炭酸カルシウムなら、水中に溶けている二酸化炭素と結びついてできます。シリカスケールと同様に、析出すると非常に硬く固着力も強いです。比較的身近に見られるカルシウムスケールとしては、トイレの尿石や水垢などが挙げられます。かなり固いため、少しブラシで擦ったくらいではなかなか落とせません。

 

シリカスケール

シリカスケールは、水中に溶けているケイ素が他の不純物と結合し析出することで発生するスケールです。

シリカは珪素(シリコン)と酸素が化合した物質です。ナトリウム、カルシウムなどの無機塩類と化合しやすく、水中では無機塩類との化合物であるシリカスケールを生成します。化合物には主にケイ酸カルシウムやケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムなどがあります。これが濃縮などにより熱交換器の配管内で析出すると非常に硬くなり、配管の内壁に固着します。

シリカスケールはガラスに付着しやすい性質を持ち、濡れると消えて乾くと白っぽく現れるのが特徴です。窓ガラスや鏡などによく付着します。カルシウムスケールとは逆に温度もPHも高い方が水に溶けやすいのも特徴です。そのため低温の状態になったときや酸性に傾いたときなどに析出します。非常に硬く、ブラシなどで取り除くのが難しいという点に関しては、カルシウムスケールと同様です。

 

 

熱交換器におけるスケール

熱交換器の配管は常に水が通り温度変化も激しいことから、スケールが発生しやすい環境にあります。少しずつスケールが蓄積することで厚い層を形成してしまうことも珍しくありません。

その影響で熱が伝わりにくくなり、水の通り道も狭まってしまうため注意が必要です。熱交換器本来の性能を十分に発揮できなくなってしまいます。蓄積したスケールが自然に剥がれ落ちることはまずないため、定期的に洗浄などのメンテナンスが必要です。

 

 

熱交換器のスケール除去方法

熱交換器の配管内にスケールが付着すると、水の通り道が狭くなり、熱効率も下がってしまいます。そのため、メンテナンスとして定期的にスケールを除去しなければなりません。

しかし、スケールを金属ブラシや水改質装置などで除去することはほぼできません。金属製の工具などを使っても難しいでしょう。

スケールは酸性の物質に弱いため強酸性の洗浄液を使用して除去するのが一般的です。ただ、現在、スケール除去液として用いられている化学洗浄液には、毒物性や劇物性の製品が少なくありません。安全に扱うためには毒劇物取扱いの専門知識が必要であり、かつ現場での慎重な取り扱いが求められます。

 

カルシウムスケールの除去

カルシウムスケールは塩酸に溶けやすいので、酸性洗浄液で比較的容易に除去できます。そこで濃度10%程度の酸性洗浄液(「毒物及び劇物取締法」指定外の劇物)を用いるのが一般的な除去法です。洗浄後はシリカスケール同様、アルカリ性洗浄液で中和処理をした後、産業廃棄物として処分する必要があります。

 

シリカスケールの除去

シリカスケールは成分が水晶と同じなので、コンクリート並みに硬く、塩酸では溶解しません。そこで塩酸にフッ化水素酸(「毒物及び劇物取締法」指定の毒物)を添加した洗浄剤で除去するのが一般的な除去法です。配管洗浄後はアルカリ性洗浄液で中和処理をした後、産業廃棄物として処分する必要があります。

 

 

スケール除去液の特徴

スケール除去液は、製品により性質が異なります。ここでは例として「ダイナミックデスケーラー」の特徴をご紹介します。

関連ページ:ダイナミックデスケーラー(スケール除去液)の製品紹介

 

ダイナミックデスケーラーの特徴

ダイナミックデスケーラーは、pH1と言う最も酸性の強いスケール除去液であるにも関わらず、独自開発の添加剤を混合することにより、洗浄作業の安全性を高めた製品です。多くの従来製品と異なり、皮膚に直接触れてもその場で直ちに水洗いすれば火傷の恐れがないほどの安全性を有しています。シリカスケール除去も、カルシウムスケール除去もともに対応できるのも魅力です。

またスケールの溶解速度が従来製品と比べると5倍速く、金属腐食も従来製品と比べ25%程度に止まっています。さらに生分解性工業薬品でもあるので、熱交換器から除去したスケールの産業廃棄物処分も不要です。

  • 火傷のリスクが低い安全性……強酸性洗浄液取扱いの危険性から作業者の安全を守るため、独自開発の添加剤混合により強酸性の火傷リスクを極小化。
  • 従来製品の追随を許さないスケール溶解時間の速さ……従来製品のネックと言われていたスケール溶解時間の長さを大幅に短縮。例えば船底に付着した貝殻をわずか5分で溶解するなど、従来製品に比べスケール溶解時間が5分の1。これにより洗浄作業時間とコストの大幅削減が可能に。
  • スケール除去作業の省力化と簡素化……従来製品でスケールを除去する場合、金属表面の不導体皮膜剥離防止、洗浄後の中和処理のためのアルカリ性洗浄液での再洗浄、乾燥など数工程を要していた。しかしダイナミックデスケーラーの場合は、熱交換器洗浄後に水洗いするだけで溶解したスケールの除去が可能。したがってスケール除去は2工程で完了。

 

 

まとめ

スケールは水中の二酸化ケイ素やカルシウムなどが元になってできます。非常に硬いのが特徴で、水が常に触れる場所に固着しやすいです。熱交換器の配管の内壁に固着すると、その影響で性能が低下してしまうため、定期的に除去しなければなりません。その際には、強酸性で安全性も高いダイナミックデスケーラーを使うのがおすすめです。

 

 

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