2021.06.25

熱交換器が活躍!エアコンの冷暖房の仕組み

aircon

夏の暑い日には欠かせないエアコンにも、熱交換器が使われています。エアコンはどんな仕組みで室内を冷暖房しているのでしょうか。またエアコン内で熱交換器はどんな役割を果たしているのでしょうか。

ここでは、エアコンが部屋を暖めたり涼しくしたりする仕組みと、エアコンにおける熱交換器や冷媒ガスの役割、エアコンの代表的な故障について解説していきます。

 

エアコンの種類

リモコンのスイッチ操作だけで室内の冷暖房ができるルームエアコン(家庭用エアコン)の普及率(2人以上世帯)は、内閣府の『消費動向調査』によれば2020年末現在91.0%。また保有台数は1世帯当たり2.9台。日本全国に普及したエアコンは、生活必需品と言えます。

参考:消費動向調査 | 内閣府

一般に使用されるルームエアコンは、大きく次の3種類に分けることができます。

  • ルームエアコン:一般的な壁掛けタイプのエアコン。室内機と室外機各1台で構成
  • ハウジングエアコン:天井埋込み・壁埋込みタイプのエアコン。室内機と室外機各1台で構成
  • マルチエアコン:複数台の室内機と室外機1台で構成

 

 

エアコンの仕組み

エアコンで部屋の室温を調整できるのは、「室内機の中で冷たい空気や温かい空気を作っていて、それを部屋に行き渡らせるから」と思っている方もいます。しかし実際の仕組みは、そうではありません。

例えば冷房の場合、エアコンは部屋の空気を取り込み、空気内に含まれた熱だけを取り除くことで、空気を冷やしています。その冷たくなった空気を、再び部屋に戻すことで部屋が涼しくなるのです。

ここからは、エアコンの仕組みを詳しく見ていきます。

 

液体と気体の物理的性質

エアコンの仕組みを知るためには、まず液体と気体の次の物理的性質を知る必要があります。

  • 液体が気体に変わる(気化)時は、周囲の熱源から熱を吸収する。
  • 気体が液体に変わる(凝縮)時は熱を放出する。

この性質を利用し室内の冷暖房をしているのがエアコンの基本的仕組みであり、仕組みを促進しているのが熱伝導媒体の「冷媒ガス」です。冷媒ガスは「ガス」と言っても、常に気体の状態ではありません。ルームエアコンの室外機と室内機を繋ぐパイプ内循環の過程で気体と液体に適宜変化します。エアコンは伝熱媒体ガスの温度変化を利用して冷暖房をおこないます。

 

エアコンにおける冷媒ガスの役割

冷媒が屋外へ熱を放出し、再び室内の熱を奪うことができるのは、「熱が温度の高い方から低い方へ移動する性質」を利用しているためです。その性質を利用するために、エアコンでは圧縮機と膨張弁を使用しています。圧縮機というのは圧力をかける部品で、膨張弁は圧力を下げるための部品です。

一方、冷媒が室内の熱を奪うためには、冷媒が室内の温度よりも低い必要があります。冷媒が膨張弁を通過することで圧力が下がり、冷媒の温度が下がります。そうすることで、冷媒の温度が高い状態でも、室内の熱を奪える温度まで下げることが可能です。

冷媒ガスは室内の冷暖房に必要な熱を気体や液体で熱交換器や圧縮機を運ぶ運搬人の役割をしています。したがって冷媒ガスがなければ、エアコンは冷暖房運転ができません。仮に冷媒ガスが漏れ、冷暖房運転に必要な量がパイプ内を循環していない場合は熱の運搬能力が低下し、エアコンは機能停止に陥ります。

冷媒ガスの変遷

エアコンの冷媒ガスとして、かつては「フロンガス」が使用されていました。フロンガスには化学組成の違いによりCFC、HFCなど多くの種類があります。しかしフロンガスは大気中へ放出するとオゾン層破壊作用のあることが明らかになり、先進国では1996年に使用禁止になりました。このため「代替フロンガス」が開発され、エアコンの伝熱媒体ガスとして使用されてきました。

代替フロンガスは不燃性の「HFCガス」ですが、これも後に温室効果ガスであることが明らかになり、2012年以降GWP(地球温暖化係数)の低い「HFCガス」や「HFO微燃性ガス」への切替えが進められました。さらに現在は、GWPがそれより低い「自然冷媒」や「グリーン冷媒」と呼ばれる「次世代冷媒ガス」の開発が進められています。

 

エアコンにおける熱交換器の役割

熱交換器は、温度の異なる流体(気体と液体)の熱エネルギーを移動させ、熱交換をする装置です。熱エネルギーは温度の高い流体から低い流体へ移動する性質があり、その性質を利用して熱交換器は流体の加熱・冷却を行っています。

エアコンにおいて熱交換器は、パイプ内を循環している冷媒ガスを室内機と室外機の双方で、冷媒ガスを加熱・冷却する役割をしています。いうなればエアコン内で取り除かれた熱を、室内から屋外に熱を追い出すのに使われているのが熱交換器です。エアコンのフロントカバーを開けると、小さなアルミ板が多数入っており、それが熱交換器の一部となっています。

室内の空気を吸い込んで熱交換器に触れることで、熱だけを奪います。熱を奪われた空気は冷たくなり、それと同時に熱交換器が奪った熱は、冷媒がパイプを通って室外機まで運びます。室外機にも熱交換器が使われており、そこで熱だけを排出してから再びパイプを通って、室内機に戻っていきます。

 

エアコンの主な故障と対策

ルームエアコンはその構造特性から、主に次のような故障が発生しやすくなっています。基本的には次の対策で解決できる可能性があります。

 

冷暖房機能が停止する

冷媒ガスが漏れる、消失するなどの異常事態になると、熱交換ができないので冷暖房機能が停止します。この異常事態を見分ける方法は様々ありますが、ユーザが簡単に見分ける方法は2つあります。

  • 室内機の熱交換器に霜が付着している場合です。この場合は室内機から冷媒ガス漏れ・消失を起こしている可能性があります。
  • 室外機のパイプに霜が付着している場合です。この場合は室外機から冷媒ガス漏れ・消失を起こしている可能性があります。

いずれの場合もメーカー・販売代理店等に連絡して修理を依頼する必要があります。
冷媒ガス漏れ・消失の原因はエアコン設置時の施工ミスが大半なので、この場合は修理費無料のケースが多いと言われています。

 

室内機から汚水が滴る

エアコンの室内機から発生するドレンパン(結露水を受け溜める皿)の水は、ドレンホース(室内機から室外機に繋がっている排水ホース)により屋外へ排水されます。その時、室内機が室内空気の入れ替えの際に吸い込んだ室内の埃も、水と混じった汚水として排出されます。

ところがこの埃がドレンホース内に溜まり、排水詰まりを起こす場合があります。これが室内機から汚水が滴る原因です。これについてはドレンホース内に溜まった埃を細い棒で掻き出す、掃除機で吸い込むなどによりほとんど解決できます。それでも解決できない場合は別の原因が考えられるので、メーカー・販売代理店等に連絡する必要があります。

 

室外機が急停止する

夏季の冷房運転中に室外機が急停止することがあります。これは室外機が一定以上の熱を帯びると、室外機が運転を自動的に停止するためです。

この原因は室外機の周囲にあります。例えば室外機にカバーをかけたままや、周囲にプランター・その他が置かれていると、室外機は外気の吸引と室内の空気熱排出が十分できなくなります。その結果、室外機の熱が上昇し、運転自動停止に至ります。したがってエアコン運転中は室外機にカバーかけたままにしない、室外機周辺の風通しを確保するため室外機の50cm以内に物を置かないなどの注意が必要です。

 

暖房運転中に無風になる

夏季とは逆に、冬季には暖房運転中に室内機が無風になる場合があります。これは室外機の熱交換器に霜や氷が付着した時に起こる故障です。

エアコンの暖房は、室外機の熱交換器を氷点下まで冷やすことで室内機のファンから温風を噴き出す仕組みになっています。ところが氷雨や雪が降り続く天気の下で暖房運転を続けていると、室外機の熱交換器に霜や氷が付着します。

さらに暖房運転中は室外機の冷媒ガスにより室外機の熱交換器の温度が0℃以下に低下しています。このため室外機の熱交換器に付着した霜や雪はそのまま凍りつき、これが長引くと熱交換器全体が氷で覆われた状態になります。その結果、室内機の暖房機能が停止し、室内機のファンから温風が出なくなります。

この場合は、エアコンの暖房運転を直ちに停止し、「霜取り運転」に切り替えることで解決できます。霜取り運転は室外機の熱交換器に付着した氷を解かす機能で、10分程度の運転で熱交換器に付着した氷を解かす能力があります。
霜取り運転が終了すると、室内機のファンから再び温風が噴き出します。

 

 

まとめ

エアコンは室内機の熱交換器、室外機の熱交換器・圧縮機・減圧器の4つを主要装置に、室内機と室外機を繋ぐパイプ内を循環する冷媒ガスを効率的に流動させる様々なサブ装置で構成されています。これにより室内と屋外で空気の循環はなく、熱だけが移動する仕組みを実現しているのです。

これらの装置と冷媒ガスは、より安全で、より省エネで、環境負荷がより小さくなるよう、それぞれの装置メーカーが改良努力を続けています。特に熱交換器は主要な部品であり、工業用ではもちろんのこと、我々の日常生活においても欠かせないものと言えるのではないでしょうか。

 

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