2021.01.15

省エネとは?省エネ法の基本と事業者向けのヒントを解説!

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工場をはじめとする事業所では大量のエネルギーを消費しています。省エネを行い、生産コストの削減をしたいと考えつつも、どのようなことから始めれば分からないという人も多いのではないでしょうか。

ここでは事業所で簡単に始められる省エネのヒントと、一般企業の省エネ対策担当者が押さえておくべき省エネ法の基本を解説します。

 

 

省エネとは?

省エネとは、省エネルギーの略であり、石油・天然ガス・石炭などの限りあるエネルギーの資源を効率よく使うことをさします。

省エネを適切におこなうことにより、日常の暮らしに欠かせないエネルギー資源を節約できるため、資源の安定供給や地球温暖化防止効果を期待できます。また事業所の稼働コストも減らせることから、経営としてもプラスに働きやすいです。

ここからは、事業所における省エネ方法のヒントを見ていきましょう。

 

生産設備で光熱費を節約する方法

工場で消費されるエネルギーの大半は、生産設備を稼働させることで消費されています。そのため、まずは生産設備でどのくらいのエネルギーが消費されているのか把握しておきましょう。

生産設備は工場が操業している時間は常に稼働させていることが多く、一見するとそこを節約するのは難しいように思えるかもしれません。しかし、設備の洗浄が不十分なために、エネルギーロスが発生していることもよくあります。

例えば、熱交換器ならスケールの蓄積でエネルギーロスが増えやすいです。設備の洗浄を徹底すれば、同じ時間だけ設備を稼働させた場合でも、光熱費が安く済みます。

 

空調や照明の費用を節約する方法

空調の設定温度や照明器具などについても見直しが必要です。ただ、冷暖房を抑えすぎると従業員のモチベーションの低下につながる場合もあります。そのため、冷暖房に関する省エネは慎重に行わなければなりません。

また、遮熱カーテンなどを使用した断熱対策なども検討してみるといいでしょう。冷暖房費用を抑えつつ快適な環境も維持できる場合もあります。

照明器具に関しては、白熱電球を使用しているのであれば、LEDに交換するのがおすすめです。同じ明るさで電気代を節約できます。またLEDは白熱電球と比べて、熱をあまり放出しないため夏場の冷房費用削減につながるでしょう。

 

排熱を有効活用する

工場の生産設備を稼働しているときには、熱を発していることが多いです。排熱をそのまま放出しているのであれば、有効活用できないかどうか検討してみましょう。

排熱を放出せずに集めた上で熱交換器を使用することで、暖房などで使用することができます。そうすれば空調で消費するエネルギーを節約できるでしょう。排熱利用を導入するためには設備が必要になりますが、一度設置してしまえばそれ以降は大幅なコスト削減が可能になります。

 

 

省エネ法とは?

日本は1973年と1978年の二度にわたりオイルショックに見舞われ、経済が大混乱に陥りました。この教訓を踏まえ制定されたのが「省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」であり、1979年に施行されました。同法はその後、国内外のエネルギー市場を巡る経済・社会環境の変化や省エネ技術の進化に対応して7度の改正を重ね、2018年施行の現行法に至っています。

参考:省エネ法の概要 | 資源エネルギー庁

 

省エネ法の目的

省エネ法の目的は、同法第一条にて定められています。要約すれば、『国内外のエネルギーを巡る経済的社会的環境に応じ、燃料資源の有効利用や確保をおこなうため、工場、輸送、建物、機械器具のエネルギー使用の効率化推進が目的』だと言えます。

そして同法第二条は、『この法律において「エネルギー」とは、燃料並びに熱及び電気をいう。』『この法律において「燃料」とは、原油及び揮発油、重油、石油製品、天然ガス、石炭及びコークスをいう。』と定義しています。したがって廃熱回収エネルギーや再生可能エネルギーは法律の対象外になります。

 

省エネ法の対象となる事業分野

省エネ法適用の対象となるのは、次の4事業分野の事業者です。

(1)工場・事業所

  • 工場を経営している事業者
  • 事業所を経営している事業者

(2)輸送

  • 輸送事業者ː貨物、旅客の輸送を事業として行っている者
  • 荷主ː自らの貨物を輸送事業者に輸送させている者

(3)建築物

  • 建築時ː住宅・建築物の建築主
  • 増改築・大規模改修時ː住宅・建築物の所有者・管理者
  • 戸建て住宅ː住宅供給事業者

(4)機械器具

  • エネルギーを消費する機械器具の製造事業者並びに輸入事業者

 

事業者の義務と目標

事業者全体のエネルギー消費量が原油換算で1500kl/年度以上であり、特定事業者または特定連鎖化事業者に指定、並びに認定管理統括事業者に認定された事業者は、次の義務と目標が課せられています。

(1)義務

  • 選任すべき者:エネルギー管理統括者およびエネルギー管理企画推進者
  • 提出すべき書類エネルギー使用状況届出書(指定時のみ)、エネルギー管理統括者等の選解任届出書(選解任時のみ)、定期報告書(毎年度)および中長期計画書(原則毎年度)
  • 取り組むべき事項:判断基準に定めた措置の実践(管理標準の設定、省エネ措置の実施等)、指針に定めた措置の実践(燃料転換、稼働時間の変更等)

(2)目標

  • 中長期的に見て年平均1%以上のエネルギー消費原単位または電気需要平準化評価原単位の低減

 

特定事業者の指定

省エネ法は、事業者単位(企業単位)でのエネルギー管理を求めています。そこでエネルギー消費量が原油換算で1500kl/年度以上の事業者は「エネルギー使用の合理化を特に推進する必要がある者」として、経済産業大臣が「特定事業者」に指定します(省エネ法第7条)。

そして特定事業者は、事業者でエネルギー使用の効率化を推進するため、「エネルギー管理統括者」と「エネルギー管理企画推進者」の選任が義務付けられています。

さらに特定事業者は、エネルギー使用の効率化目標達成のための中長期的な計画書を毎年度主務大臣に提出(省エネ法第15条)すると共に、エネルギー消費量とその状況、エネルギー使用設備、エネルギーの効率化推進のための設備の新設・改修および稼働状況などの定期報告書提出(省エネ法第16条)も義務付けられています。

 

 

省エネ法の工場事業者の区分と要件・義務

省エネ法は「第3章 工場等に係る措置」の第5条で、工場等においてエネルギーを使う事業者の判断基準となる事項を定め、事業者に対し、以下を求めています。

  1. 燃料燃焼の合理化
  2. 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
  3. 廃熱の回収利用
  4. 熱の動力等への変換の合理化
  5. 放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止
  6. 電気の動力、熱等への変換の合理化

また、以下の定義・要件・義務を各条で規定しています。

  1. 特定事業者……エネルギー年度の使用量が政令で定める使用量以上の事業者
  2. 第一・二種エネルギー管理指定工場……特定事業者が設置している工場のうち、エネルギー年度の使用量が政令で定める使用量以上の工場
  3. 特定連鎖化事業者……特定の商標・商号を使用させ、商品の販売・サービスの方法を指定し、継続的に経営指導を行う事業(フランチャイズチェーン事業)であって、当該連鎖化事業に係るすべての工場におけるエネルギー年度の合計使用量が政令で定める使用量以上の事業者
  4. 第一・二種連鎖化エネルギー管理指定工場……特定連鎖化事業者が設置している工場のうち、エネルギー年度の使用量が政令で定める使用量以上の工場
  5. 認定管理統括事業者……自らが発行済株式の全部を有する株式会社その他の当該工場等を設置している者と密接な関係を有する者(グループ企業)として経済産業省令で定める工場を設置している事業者
  6. 第一・二種管理統括エネルギー管理指定工場……認定管理統括事業者が設置している工場のうち、エネルギー年度の使用量が政令で定める使用量以上の工場
  7. 管理関係事業者……政令で定める第一・第二管理関係エネルギー管理指定工場を設置している事業

 

 

省エネ法の輸送事業者の区分と要件・義務

省エネ法は「第4章 輸送に係る措置」において、第99条で「経済産業大臣及び国土交通大臣は、貨物の輸送に係るエネルギー使用合理化の適切かつ有効な実施を図るため、次に掲げる事項並びに貨物の輸送に係るエネルギー使用合理化の目標及び当該目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関し、貨物輸送事業者の判断の基準となるべき事項を定め」とし、エネルギー使用効率化推進のため、事業者に対し、以下を求めています。

  1. エネルギー消費性能等が優れている輸送用機械器具の使用
  2. 輸送用機械器具のエネルギーの使用の合理化に資する運転
  3. 輸送能力の高い輸送用機械器具の使用
  4. 輸送用機械器具の輸送能力の効率的な活用

また、以下の定義・要件・義務を各条で規定しています。

  1. 特定貨物輸送事業者……貨物輸送事業者および管理関係貨物輸送者のうち、輸送能力が政令で定める基準以上の事業者
  2. 荷主……自らの事業に関する貨物を継続的に貨物輸送事業者に輸送させる事業者
  3. 特定荷主……荷主および管理関係荷主のうち、貨物郵送事業者に輸送させる貨物の年度輸送量が政令で定める量以上の事業者
  4. 認定管理統括荷主……経済産業省令で定める荷主と一体的に貨物郵送事業者に貨物輸送をさせる事業者
  5. 特定旅客輸送事業者……旅客輸送事業者のうち、輸送能力が政令で定める基準以上の事業者
  6. 航空輸送事業者に対する特例

 

 

省エネ法の対象となる建築関連事業者

省エネ法は「第5章 建築物に係る措置」において、第143条で「建築物の熱の損失防止及び建築設備のエネルギーの効率的利用のため、建築物に係るエネルギー使用の合理化に努めるとともに、建築物の電気機械器具の電気需要の平準化に資するよう努めなければならない」とし、次の事業者に省エネ努力を求めています。

  1. 建築事業者
  2. 建築物所有者
  3. 建築物の屋根・外装修繕事業者(リフォーム事業者)
  4. 建築設備の設置工事事業と改修工事事業者

 

 

省エネ法の対象となる機械器具事業者

省エネ法は「第6章 機械器具に係る措置」において、第144条で「(1)エネルギー消費機器等の製造・輸入事業者は、当該機器のエネルギー消費性能とその関係性能の向上を図ることにより、エネルギー消費機器等エネルギー使用の合理化に努めなければならない。 (2)電気機械器具の製造・輸入事業者は、電気需要の平準化に係る性能向上を図ることにより、電気需要の平準化に努めなければならない」とし、以下の定義・要件・義務を各条で規定しています。

  1. エネルギー消費機器製造事業者
  2. 熱損失防止建築材料製造事業者
  3. 電気事業者

 

 

省エネはなぜ必要か

「そもそも省エネは本当に必要なのか?」と疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。必要性がはっきりと分からないことには、なかなか導入には踏み切れないものです。ここでは省エネが必要な理由と企業にとってのメリットを紹介していきます。

 

限りある資源の化石燃料

世界のエネルギー消費量は年々増え続けています。特に、中国やインドなどのアジアを中心とした新興国で更に増えるだろうと言われています。

これら新興国は、近年大きな経済発展を遂げており、今後ますますその成長は加速していくでしょう。これに伴い、経済を支える石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の需要も増加していくとみられています。

エネルギー資源埋蔵量は、石油や天然ガスも50年ほどは使い続けられると見られています。今後、新たな油田が新たに発見されたり、技術革新によって更に長くなる可能性はありますが、化石燃料がいつかは尽きてしまう「限りある資源」であることに変わりはありません。

 

エネルギーの使いすぎは地球環境へ悪影響

石油が枯渇する心配がなくても、エネルギーをどんどん使っていいというわけではありません。石油などの化石燃料を消費することで、二酸化炭素が発生します。これにより地球温暖化が進んでいるのが現状です。平均気温も年々上昇しており、南極や北極の氷河もどんどん溶けており海水面が上昇しています。

このまま地球温暖化が進めば、近い将来に生態系が崩れてしまうかもしれません。農作物なども育たなくなるものが出てくるでしょう。こうした影響でこれまで通りの生活ができなくなる可能性があります。

工場などでは設備の排熱などエネルギーを有効活用できる余地が多いです。省エネを導入することで地球環境保護と生産効率向上の両方を実現できます。

 

生産効率を上げるために必要

製造業などの企業の多くは、工場の設備を稼働させることで大量の熱を排出しています。そして、そのような排熱は大気中に捨てられているのが現状です。一方で企業や工場では熱を必要とすることもあり、石油などの化石燃料を消費しています。

このことは地球環境へ悪影響を与えるだけでなく、企業の生産効率という観点から見てもあまり良くありません。設備稼働のために不可避的に発生する熱を大気中には捨てずに有効活用すれば、その分だけ化石燃料を消費せずに済み、生産コストの削減につながります。

現在よりも生産効率を上げたいと考えているのであれば、ぜひ省エネ設備の導入を検討してみましょう。

 

まとめ

産業・運輸部門の中規模以上企業の大半が省エネ法の適用対象と言われています。しかし省エネ法の法律、政令、省令は法律の門外漢にとって大変複雑で難解です。このため国と主要業界団体がそのガイドラインを発表しています。そこで一般企業の省エネ対策担当者は、これらガイドラインの研修会参加、省エネ法の専門家を招いた社内勉強会開催などで省エネ法の知見を高めて適正な省エネ対策を実施し、自社の社会的信用失墜防止に努める必要があると思われます。

 

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