顕熱交換器とは?仕組みや用途、全熱交換器との違いを解説

工場や施設の設備では、熱交換器がよく用いられます。熱交換器にはさまざまな種類がありますが、顕熱交換器と全熱交換器は何が違うのか、と疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。それぞれ、扱う熱の種類や想定される役割が異なります。
この記事では顕熱交換器に焦点を当てて、仕組みと用途、全熱交換器との違いについて解説します。仕組みと用途を学ぶことで、顕熱交換器が適している現場の特徴が理解できます。さらに、顕熱交換器の導入によって得られるメリットや、選定時のポイントを把握することにもつながります。
目次
顕熱交換器とは
顕熱交換器とは、顕熱(温度変化に伴う熱)を移動させる熱交換器です。そもそも熱交換器は、熱を高温側から低温側へ受け渡す装置であり、工場や設備のさまざまな現場で用いられます。なかでも、主に顕熱をやり取りし水分の移動を基本的に行わない点が顕熱交換器の特徴です。
顕熱とは何か
顕熱とは、温度が変化するときにやり取りされる熱のことです。水や空気が暖められる、または冷却されて温度が変動する際に、顕熱が移動します。
顕熱に対して、潜熱という概念も存在します。潜熱は、液体から気体に変わるときなど、物質の状態変化に伴ってやり取りされる熱です。
顕熱は温度変化を伴って移動する熱であり、潜熱は物質の状態変化に伴って移動する熱です。特に空調分野では、空気中の水分の蒸発や凝縮の仕組みを利用するため、潜熱は湿度変化とも密接な関係を持ちます。
関連記事:顕熱と潜熱の違いは?熱の基本から工場現場での活用例まで紹介
顕熱交換器の仕組み
顕熱交換器は、温度差を利用して顕熱を交換する機器です。金属板やチューブなどを介して、温度差によって熱を受け渡します。給気を取り込み排気として受け流すまでの過程で、給気と排気は伝熱面によって隔てられているため、通常は空気同士を直接混合させずに熱を移動できます。また、顕熱交換器では、給気と排気の間で水分を基本的に交換しません。
熱には、高温から低温へ移動する性質があります。熱いお湯が冷める原理などがわかりやすい例です。この性質によって、顕熱交換器で高温側から低温側へ熱を受け渡すメカニズムが成り立っています。
顕熱交換器と全熱交換器の違い
顕熱交換器と全熱交換器を比較し、それぞれの違いを紹介します。両者は交換する熱の種類が異なり、用途や目的に応じて使い分けられます。以下は違いをまとめた比較表です。
| 顕熱交換器 | 全熱交換器 | |
|---|---|---|
| 交換する熱 | 顕熱(温度) | 顕熱と潜熱(温度と湿度) |
| 水分・湿度の交換 | 基本的になし | あり |
| 主な用途 | 給気と排気の間で水分を移したくない換気・排熱回収 | 温度と湿度の両方を回収したい換気 |
交換する熱の違い
両者の最も大きな違いは、交換する熱の種類です。顕熱交換器は、名前のとおり顕熱を交換します。一方、全熱交換器は顕熱・潜熱(温度・湿度)の両方を交換します。これが「全熱」という名前がついている理由です。
用途の使い分けは、湿度交換の必要があるのかどうかの点で考えられます。例えば、工場設備での排熱回収、換気設備、クリーンルームで導入する際は、湿度を固定するのか、あるいは湿度も調整するのかによって適した熱交換器が変わります。用途は次の段落で詳しく解説します。
顕熱交換器が活用される主な用途
顕熱交換器の主な用途を紹介します。工場設備における排熱回収や、空調・換気が必要な施設での活用が期待されています。設備の具体例も確認しましょう。
【ボイラー・乾燥設備など】熱回収用途
ボイラーや乾燥設備では、排ガス・排熱の回収目的で顕熱交換器を使う場合があります。加熱や乾燥を伴う工程に際しては、作業を進めるために高温の熱が必要です。設備からは多量の排ガスや排熱が出るため、ただ処分するだけではなく、無駄なく再利用できる仕組みの構築に対するニーズが存在します。
そこで顕熱交換器を利用すると、排ガス・排熱に含まれる熱を取り出して移動させられます。回収した熱は、給気の予熱や別工程で使用する空気の加熱などに活用できます。
【医療施設・印刷工場など】空調・換気用途
医療施設や製造現場などでは、衛生管理や品質維持の観点から、温度や湿度を厳密に管理することがあります。そこで、給気と排気の間で水分を基本的に交換せず、温度差によって熱を移動させる顕熱交換器が選択肢となります。
例えば、医療施設やクリーンルームでは、滞在者や機材の関係で、湿度を一定の条件に保たなければならない場合があります。印刷工場では、紙やインクの品質が湿度によって変容するおそれがあります。施設によって湿度や空調の環境は異なりますが、設備条件に適していれば顕熱交換器の特徴を活かせます。
顕熱交換器を導入するメリット
顕熱交換器の導入によって、省エネや安定稼働などのメリットをもたらす場合があります。自社設備が抱える課題と照らし合わせて、導入のメリットを確認しましょう。
エネルギー消費やランニングコストを抑えやすい
設備から発生する排熱を、顕熱交換器で移動させて別工程で再利用することで、エネルギーの有効活用が見込めます。別工程での作業で排熱のエネルギーを利用することで、一から熱を調達する手間を減らせる余地があります。
例えば、排気や排ガスが持つ熱を給気の予熱などに再利用できれば、加熱設備が新たに供給しなければならない熱量を抑えられます。
設備条件によっては、工場内全体として燃料や電力の消費量を抑え、ランニングコストやCO2排出量の削減につながる可能性があります。
必要な温度管理を行いやすい
顕熱交換器の特徴は、給気と排気の間で水分の交換を基本的に行わず、温度差による熱交換を行う点です。工場や施設では、湿度を別の設備で管理しながら、給気や排気の温度だけを調整したい場合があります。
温度管理自体は顕熱交換器・全熱交換器のいずれでも対応できるため、湿度調整の必要に応じて使い分けることができます。
設備の安定運転に役立つ
排熱の再利用と温度調整を続けることで、設備の運転条件を安定化させられる場合があります。
例えば、顕熱交換器を用いて給気や工程用空気の温度変化を抑えることで、次工程の加熱・冷却設備にかかる負担軽減につなげられます。また、工場・施設に要求される運転条件に適した熱交換器を選定すれば、設備の温度管理や安定運転にも役立ちます。
設備条件によって安定運転の効果は異なりますが、各工場や設備の条件に応じた温度管理に役立ちます。
顕熱交換器を選ぶ際に知っておきたいポイント
顕熱交換器は、用途や運転条件に応じて適した種類や構造が異なります。熱交換効率だけでなく、運用やメンテナンス性も考慮して選定することが重要です。
使用する流体や温度条件を確認する
熱交換を行う流体や温度帯の条件によって、適切な顕熱交換器の構造は異なります。空気・水・ガスなど、異なる流体に対応するさまざまな種類の熱交換器が存在します。熱交換の効率を高めるには、温度条件が合致している製品を選ぶことが重要です。
熱交換効率だけでなくメンテナンス性も重要
工場や施設内において、顕熱交換器は長期間の使用が想定されます。そのため、熱交換効率のスペックに加えて、メンテナンスのしやすさも考慮したいポイントです。
具体的には、製品への汚れの付着しやすさ・点検のしやすさ・保守サービスの充実性などが判断基準となるでしょう。顕熱交換器のメリットでもある設備の安定運転を実現するには、製品のメンテナンス性能も大切な条件です。
顕熱交換器を選ぶ際は、流体や温度、風量、許容圧力損失、設置環境、メンテナンス性などを総合的に確認することが重要といえます。
MDIでは、空気同士の顕熱交換に対応したプレート式熱交換器「HEATEXシリーズ」を取り扱っています。プレート材質やプレート間ピッチなどを運転条件に応じて検討できるため、排熱回収や空調・換気設備の選択肢となります。
まとめ
この記事では、顕熱交換器の仕組みや用途について解説しました。顕熱交換器は、温度差を利用して顕熱を移動させられます。給気と排気の間で水分を基本的に交換せず、顕熱を交換する点が全熱交換器との違いです。
顕熱交換器は、排熱回収や空調・換気設備など、さまざまな用途で利用されています。一般的な工場や施設に加えて、湿度を一定の条件に保ちたい設備での需要もあり、幅広い用途で活用されています。
顕熱交換器の導入を考える場合は、用途や条件に合致した機器の選定が重要です。条件が噛み合えば、省エネや安定運転につながる可能性もあるでしょう。
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