排熱回収ボイラの仕組みと構造を徹底解説!省エネ・CO2削減を実現する基礎知識

排熱回収ボイラは、工場で生じた排熱をエネルギーとして再利用する機器です。ガスタービンや焼却炉など、工場設備の稼働中に生じる膨大な量の排熱を再利用することで、エネルギー調達にかかるコストの削減が期待できます。追加燃料を使わずに排熱で蒸気を得られるため同じ蒸気や電力を得るための追加燃料が減り、結果としてCO2削減につながる可能性がある点もメリットです。
本記事では、排熱回収ボイラの仕組みや特徴を解説します。工場で生じる排熱の有効活用を想定した場合に、排熱回収ボイラを設置すると、資源の調達コストや環境負荷を減らせる可能性があります。自社設備との適性を見極めたうえで、工場内におけるエコシステムの導入を目指しましょう。
目次
排熱回収ボイラ(HRSG)とは?注目される背景
排熱回収ボイラは、工場設備の排ガスに含まれる熱を回収し、蒸気として利用する機器です。近年注目を集める背景には、エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応などが挙げられます。
工場作業において、エネルギーは不可欠な存在です。しかし近年、資源不足や地政学リスクの問題で、化石燃料の調達コストが高騰する傾向にあります。そのため、経費削減の観点でも排熱を再利用する手法が注目されています。
温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」は日本政府が2050年までの達成を目指す目標です。社会貢献の一環として企業にもCO2排出量の削減が求められる中、排熱回収ボイラが注目されます。
排熱回収ボイラの仕組み|熱を再利用するプロセス
排熱回収ボイラが熱を取り込み、再利用するまでの流れを解説します。排ガスに含まれる熱を回収して蒸気のエネルギーを得る工程では、高温のガスが低温の水に移動して加熱の役割を担う「熱交換」の仕組みが見られます。
熱源となる排ガスの流れ
排熱回収ボイラは排ガスを熱源とします。中でも一般的な活用例は、発電を目的とするガスタービンやエンジンから排出されるガスを使うケースです。たとえば、発電で生じた排ガスを回収して再利用するコージェネレーション(熱電併給)は、排熱回収ボイラと相性がよいシステムと言えます。
給水から蒸気発生までのステップ
排熱回収ボイラは、給水〜予熱〜蒸発の工程で稼働します。ボイラ内への給水を行うと、高温の排ガスとの熱交換で徐々に水温が高まります。水が蒸発すると、蒸気エネルギーとして回収できる仕組みです。
また、蒸発後も加熱を続けることで「過熱蒸気」を発生させるアプローチも存在します。蒸発にとどめるか、過熱蒸気を調達するかの判断は用途に応じて異なります。
排熱回収ボイラの主要な構造と構成要素
排熱回収ボイラの内部構造には、複数の装置が搭載されています。とくに、水を予熱する節炭器(エコノマイザ)、蒸気を生成する蒸発器(エバポレータ)が主軸です。機器によっては、過熱器(スーパーヒータ)を設置する場合もあります。
節炭器(エコノマイザ):給水の予熱
供給した水を予熱させる初期段階は、熱交換器である節炭器(エコノマイザ)で行います。排ガスから取り込んだ熱を利用し、水の温度を徐々に引き上げます。予熱の工程は、この後に続く蒸気の生成を効率化するうえで重要な役割を持ちます。冷水を一から蒸発させる手間を省き、エネルギー効率が高まるからです。
蒸発器(エバポレータ):蒸気の生成
水を加熱して蒸気を生み出す工程は、蒸発器(エバポレータ)の役割です。排熱回収ボイラにおける熱交換システムの中心を担うセクションと言えます。生成した蒸気は、熱エネルギーとして再利用できます。用途によっては、節炭器による予熱と、蒸発器による蒸気生成で作業が完結する場合もあるでしょう。
過熱器(スーパーヒータ):高品質な蒸気へ
排熱回収ボイラでは、より高質な熱エネルギーを調達するために、過熱器(スーパーヒータ)を設置するケースもあります。過熱された蒸気はほとんど水分を含まず、エネルギーとしての用途が幅広くなります。蒸発器よりも高温の排ガスにさらされるため、過熱器の運用時はボイラ内部の熱や腐食への耐性が求められます。
排熱回収ボイラの種類と特徴
排熱回収ボイラは、構造の違いから「水管式」と「煙管式」に分類されることがあります。ここでは、両者の特徴や強みの違いを紹介します。
水管式では、ボイラ内部の水管の中に給水を施して、排ガスでの加熱を通じて蒸気を生成します。細い水管を張り巡らせる構造によって、ボイラ内の伝熱面積を確保できます。比較的高温・高圧の蒸気を効率よく得やすい点がメリットです。
一方の煙管式は、ボイラ内に排ガスから得た熱を流し込む構造となっています。水管式とは水と熱の位置関係が逆で、内部の煙管が外側の水を温めて蒸気を調達します。保有水量が多いため、稼働から蒸気の調達までに時間がかかりますが、安定供給しやすい点が強みです。
高温の蒸気を効率よく利用したい大規模設備には、水管式が向いています。一方、小規模で簡易な設備には煙管式が適しているでしょう。
工場に排熱回収ボイラを導入・更新する3つのメリット
排熱回収ボイラを導入すると、燃料調達のコストやCO2排出量を削減できる強みがあります。工場運営に際して、エネルギー利用の構造を最適化できる点も強みです。すでに導入済みの工場でも、最新機器に更新するとこれらのメリットを享受できるでしょう。
関連記事:熱回収の仕組みとは?廃棄物をエネルギーとして有効活用
燃料消費量の削減によるコストダウン
排ガスから熱を回収して利用することで、燃料の消費量を削減できます。通常のボイラと比較すると、排熱回収ボイラは予熱の工程によって、効率よく高温の蒸気を生成できます。燃費が向上すると、ボイラ稼働時の光熱費を節約できます。コストダウンは利益の向上に直結するため、工場の運営を安定化させられる可能性があります。
CO2排出量の削減(脱炭素経営への貢献)
燃費が向上すると、CO2排出量自体も削減できます。近年、社会課題として掲げられる脱炭素の観点でも、工場経営の健全化が可能です。たとえば、企業向けの指標として、温室効果ガスの排出削減目標を定める「SBT」が挙げられます。脱炭素への取り組みが実績に現れると、ステークホルダーからの信頼を得やすくなるでしょう。
参考:環境省|SBT(Science Based Targets)について
既存設備の負荷軽減とシステム全体の最適化
排熱回収ボイラを設置すると、工場内のシステムを改善できる余地があります。ボイラの既存設備がある場合は、新たに排熱を利用したエネルギー調達を推進することで、稼働負担を減らせるでしょう。排ガスから熱を回収して蒸気エネルギーを生成し、別機器に利用する流れを生み出すと、工場内でエコシステムを構築できる好循環につながります。
設備担当者がチェックすべき選定・導入時の注意点
排熱回収ボイラの導入にあたり、注意したいポイントを2つ紹介します。現場の環境と導入機器の適合性に問題はないか、また工場内のスペースや既存設備との兼ね合わせに問題はないかをあらかじめ確認したうえで選定を進めましょう。
排ガスの温度・成分と材質の適合性
排ガスの温度や成分は、排熱回収ボイラの材質に適合できるか事前に確認する必要があります。ボイラ内部が腐食するおそれがあるためです。
具体例としては、低温腐食が挙げられます。これは、排ガスを回収したときに、硫黄成分の酸化と硫酸の発生によって、鉄やステンレスなどボイラの素材が腐食する現象です。熱交換に際して、排ガスの温度を調整して腐食を起こさない工夫が求められるでしょう。
設置スペースと既存設備との連携
排熱回収ボイラを購入したものの、スペースが足りない、既存設備と連携できないなどの事態を招くと本末転倒です。サイズ感の把握と検証は必ず行いましょう。
とくに、地方の小規模な工場では敷地面積が限られ、既存の設備配置でスペースが埋まっている場合があります。新規設備のリプレースは、機器の寸法や位置関係を入念に確認したうえで実行しましょう。
まとめ
本記事では、排熱回収ボイラの仕組みや特徴について解説しました。排熱回収ボイラは工場内で生じる排ガスから熱を回収し、効率的に蒸気を生成させることでエネルギーの再利用を促進できる有用な機器です。排熱を利用する仕組みによって、化石燃料の燃焼が抑制され、光熱費コストやCO2排出を削減できる点もメリットとして挙げられます。
排熱回収ボイラの主な構造は、給水の予熱を担当する節炭器(エコノマイザ)と、蒸気の生成を担当する蒸発器(エバボレータ)から成ります。より幅広いニーズに蒸気を活用したいのであれば、過熱器(スーパーヒータ)の追加も有効でしょう。
設備の導入や更新にあたっては、自社工場の特徴を鑑みた選定プロセスが重要です。用途に応じて水管式や煙管式の機器を選んだうえで、排ガスとの適合性や設置スペースを確認することをおすすめします。

