温室効果ガス(GHG)の削減にはどのような取り組みが有効?

企業の活動にも大きな影響を与える地球温暖化や気候変動があり、中でも「温室効果ガス(GHG)」の排出削減は、今やすべての企業が避けて通れない経営課題となっています。しかし、「GHGとはそもそも何か?」「なぜ削減が必要なのか?」「自社のどの業務がどれだけ関係しているのか?」など、基礎から整理したい担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、温室効果ガスの定義や種類、排出量の算定方法から、削減のための具体的な進め方や最新の実践事例まで、基礎からやさしく体系的に解説します。自社の取り組みの“最初の一歩”から、実務で役立つ知識まで、しっかりサポートします。
目次
温室効果ガス(GHG)とは
温室効果ガスとは、地球の大気中に存在し、熱を閉じ込めるガスのことです。Greenhouse Gas、略してGHGと呼ばれています。これらのガスは太陽光を地表に通しながら、地球から宇宙へ放たれる熱を吸収し、大気中にとどめることで、地球の表面を暖める温室効果を引き起こします。
もともと温室効果は、地球の気温を生命に適した状態に保つために必要なものですが、人間のさまざまな活動によってそのバランスが崩れつつあります。特に、化石燃料の燃焼(石油・石炭・天然ガスなど)や森林の伐採などによって、地球温暖化が加速しています。
代表的な温室効果ガスとしては、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素があります。また、工場などから出るフッ素系ガスとして、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄なども挙げられます。水蒸気も温室効果ガスの1つですが、これについては人間の活動による影響は少ないと考えられています。
温室効果ガスの排出量
GHGの排出量は、主に人間の生産活動によって大気中に放出されるガスの総量を指します。今日、気候変動の主要な要因は人間による温室効果ガスの排出であり、産業革命以降、GHG濃度は徐々に増加しています。
主な排出源は、化石燃料を燃焼することによるもので、最大の温室効果ガス排出源といえます。他の排出源としては、鉄鋼などの材料生産、食料生産、廃棄物の管理、森林伐採などが挙げられます。また、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄といった工業由来のフッ素系ガスは、少量ながらも強力な温室効果をもたらしています。これらの排出は、過去50年間で大きく増加しています。
関連ページ:温室効果ガスの排出量は?世界との比較や各ガスの排出先まとめ
日本の温室効果ガス削減の取り組み
日本におけるGHG削減の取り組みは、生産活動による大気中への排出量を減らすこと、および大気中からGHGを除去する技術的な能力を高めることの両方に焦点を当てています。
具体的な対策としては、化石燃料を段階的に廃止し、太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギーへの移行を進めるなどのことが挙げられます。この取り組みによって、電力供給や産業といった主なGHGの排出源に直接的な効果があります。
その他、交通分野での電気自動車へのシフトや公共交通機関の利用促進、食料生産における植物性食品を多く含む食生活への転換、食品廃棄物の削減、産業からの排出削減、廃棄物処理におけるメタン排出の抑制なども挙げられます。
関連ページ:脱炭素社会とは何?本当に実現できる?
企業の温室効果ガス削減への取り組み
企業のGHG削減への取り組みは、地球温暖化と気候変動への対応においてとても重要です。企業はまず、自社から出る温室効果ガスの量を把握し、「カーボンフットプリント(炭素の足あと)」を明確にします。このように現状を把握したうえで、企業は「いつまでに、どれだけ削減するか」という具体的で測定可能な目標を立てます。
最近では、気候科学に基づいた削減目標やネットゼロ目標(Net Zero Target:排出を実質ゼロにする目標)を掲げる企業も増えてきました。これらの取り組みは、環境に良いというだけでなく、企業の収益性向上や投資家からの信頼獲得、ブランド価値の向上にもつながります。
どうしても排出を避けられない場合は、植林活動や再生可能エネルギー事業への投資、炭素クレジットの購入といった方法で、排出分を補うことも可能です。ただし、これらはあくまで他の努力を補完する手段であり、それだけで済ませるものではないという意識が重要です。
関連ページ:温室効果ガスは主にどこから排出されている?
企業ができる温室効果ガス削減するメリット
GHGの削減は、環境破壊を防止するうえで役立つだけでなく、企業にとっても大きなメリットをもたらします。例えば、エネルギーコストの削減や企業イメージの向上、顧客や投資家からの信頼獲得など、ビジネス面でも多くの利点があります。そこで、企業がGHG削減に取り組むことでえられる具体的なメリットについて、ポイントを解説します。
エネルギーコストを減らせる
GHGの排出を減らすメリットとして、エネルギー代を節約できるという点が挙げられます。例えば、古くて電気をたくさん使う機械を、省エネ性能が高い最新の機器に交換したり、建物の断熱性を高めたり、照明をLEDに変えたりすることで電力の使用量を減らすことができます。その結果、電気代やガス代などの光熱費を抑えられます。
認知度アップを期待できる
企業がGHGを減らすために取り組むことは、会社のイメージや評判を良くするという大きなメリットがあります。最近では、環境への配慮や持続可能性を大切にする考えが広がってきており、GHG削減に力を入れている企業は「社会にとって信頼できる企業」として見られるようになりました。環境意識の高さは、顧客から好印象に受け取られ、自社商品が選ばれやすくなります。また、こうした企業の取り組みは、働く人たちから見ても魅力的に映るため、優秀な人材が集まりやすくなるという間接的な効果も期待できます。
企業ができる温室効果ガス削減のポイント
GHGの削減は、企業の社会的責任であると同時に、コスト削減やブランド価値向上にもつながります。そこで、節電やクールビズ、電気自動車やクリーンエネルギーの導入、再資源化など、企業が実践できる具体的な取り組みについて分かりやすく解説します。
節電やクールビズなどを実施する
節電は、企業がGHGを減らすための方法として、とても効果的です。企業が出す温室効果ガスの多くは、電気などのエネルギーを使用することによるものだからです。
また、クールビズに取り組むことで、エネルギーの使用量を減らすこともできます。クールビズは、軽装で仕事ができるようにし、エアコンの使用を抑える取り組みです。この結果、年間で100万トン〜300万トンものCO₂排出を減らせたと報告されています。首相自らが実践したり、ファッション業界と協力したりと、社会全体を巻き込んで進められています。
電気自動車などを導入する
電気自動車(EV)の導入も効果的です。特に、社用車や輸送によって出る排出量を減らす効果が期待できます。電気自動車は、ガソリン車とは違ってバッテリーで動くため、走っているときに排気ガスを出しません。そのため、温室効果ガスや大気汚染の原因となる物質を減らすことができます。
EVには、環境面だけでなくコスト面のメリットもあります。例えば、電気による充電の方がガソリン代より安く済むことが多く、エンジンなどの複雑な機械が少ないため、整備や修理の費用も抑えられます。また、電気自動車はエネルギー効率が高いため、ガソリン車よりコストパフォーマンスに優れています。ただし、EVの環境効果を最大限に引き出すには「再生可能エネルギー(例:太陽光や風力)」で発電された電気を使って充電することが理想です。
クリーンエネルギーを導入する
企業が温室効果ガスの排出を減らすには、クリーンエネルギー(環境にやさしいエネルギー)の導入も有効です。石油やガスなどの化石燃料に頼らなくないことで環境に優しいだけでなく、燃料価格の変動に左右されにくく、ランニングコストも抑えられます。
また、普段からクリーンエネルギーの導入を進めておくことで、厳しくなる環境規制に対応しやすくなり、他社との差別化にもつながるなど、ビジネス上の競争力を高めるうえでも大きなメリットがあります。
再資源化に注力する
再資源化(リサイクルや再利用)も、企業がGHGの排出量を減らすために効果的です。商業廃棄物は、温室効果ガスの大きな排出源の1つです。
特に、埋立地に運ばれた紙や生ごみなどの有機物が分解されると、大量のメタンガスが発生します。メタンはCO₂よりも強い温室効果を持つため、その排出を抑えることは気候変動対策にとって重要といえます。こうした理由から、多くの企業では紙の使用量を減らしたり、環境にやさしい包装材を採用したり、そもそもゴミが出にくい製品設計に変更したりと、さまざまな工夫が進められています。
また、廃棄物の階層という考え方も注目されています。これは、廃棄を最終手段とし「予防、再利用、リサイクル、エネルギー回収」の順に優先的におこなうというものです。
例えば、製造業の現場ではスクラップ金属のようなリサイクル素材を調達することで、資源を新たに採掘・加工する必要がなくなり、サプライチェーン全体でのGHG排出を抑えることができます。一度使った素材が再び生産のサイクルに戻ることで、資源の無駄を防ぐことができます。
まとめ
温室効果ガスの削減は、環境対策にとどまらず、企業にとってコスト削減やブランド価値の向上、競争力強化といった多くのメリットをもたらします。持続可能な社会を築くためには、1社1社ができることから始める姿勢が求められます。
省エネや再生可能エネルギーの活用、再資源化など、自社が取り組みやすいことから始めてください。環境への配慮は、いまや社会的責任ではなく、企業の成長戦略の一部といえます。
アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI TOPへ戻る