メタネーションとは?歴史やメリット・デメリットなど詳しく解説

地球温暖化やエネルギー資源の枯渇といった課題が深刻化する中、再生可能エネルギーの活用とカーボンニュートラルの実現が急務となっています。そうした背景の中で、近年注目を集めているのが「メタネーション」という技術です。
これは、水素と二酸化炭素から合成メタンをつくり出し、再生可能エネルギーの安定供給や温室効果ガスの排出削減などに役立つと期待されています。エネルギーと環境の両立が求められる今、私たち一人ひとりがどのような技術に未来が託されているのかを知ることはとても重要です。
そこで、この記事では、サステナビリティ推進を担当している工場の責任者や経営者に向けて、メタネーションの基本的な仕組みや歴史、メリットやデメリットなど詳しく解説します。
目次
メタネーションとは
再生可能エネルギーからつくった水素と二酸化炭素を使って、メタンというガスをつくる技術のことをメタネーションといいます。
つくられたメタンは、家庭用の燃料や発電、車の燃料などに使うことができ、石油の代わりになります。太陽光や風力のように天気によって変わる電力を、ガスの形で長期間ためておけるようにできる点がこの技術の良いところです。また、温室効果ガスを減らす効果もあるので、地球温暖化の対策としても注目されています。
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メタネーション技術の歴史
この技術は、数百年前のガスの発生に関する発見にまでさかのぼります。17世紀、ベルギーの科学者ヤン・バプティスタ・ファン・ヘルモントが、腐った有機物から燃えるガスが出ることを発見しました。そして1776年に、イタリアのアレッサンドロ・ボルタが、有機物の腐敗とガスの量には関係があることを示しました。
その後1808年、イギリスのハンフリー・デイヴィーは、牛の糞が発酵する過程でメタンが含まれていることを明らかになりました。消化施設がつくられ、1895年には下水処理の過程で出たガスが街灯の燃料として使われ始めました。
一方で、化学的なメタネーション反応は、1902年にフランスのサバティエらによって発見され、この反応を使ってSNGをつくる技術が注目されて、1984年にはアメリカで商業規模のプラントが初めて稼働しました。現在では、再生可能エネルギーの電力を、効率よくかつ長くためるための技術として、その価値が高く評価されています。
メタネーションのメリット
地球温暖化対策やエネルギー転換が求められる今、注目されているのがメタネーションという技術です。再生可能エネルギーを活用し、温室効果ガスを有効利用するこの仕組みには、多くのメリットがあります。そこで、カーボンニュートラルへの貢献や環境負荷の軽減など、メタネーションの利点をわかりやすく解説します。
カーボンニュートラルに貢献できる
カーボンニュートラルに貢献できる点は、メリットの1つです。メタネーションは、温室効果ガスであるメタンの排出を減らし、地球温暖化の防止に役立ちます。
通常、化石燃料を使うと、地中に閉じ込められていた炭素を空気中に放出するため、CO₂の量が増加します。一方、メタネーションで使われるCO₂は、もともと植物や生ごみなど地表にあったものから出たものなので、燃やしても大気中のCO₂量は増えないのです。
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また、メタネーションの副産物として出る消化液は、肥料として土に戻すことができ、化学肥料の代わりにもなります。そのため、化学肥料の製造時に出る二酸化炭素量を減らし、土壌汚染の防止にもなります。このように、CO2の削減や再生可能エネルギーの利用拡大など、さまざまな点で役立つ技術といえます。
環境への負荷を軽減できる
食品廃棄物や家畜排泄物、産業残渣など、メタネーションは、広範な有機性廃棄物を活用し、焼却や埋め立てに代わる持続可能な処理方法を実現可能です。廃棄物量を削減します。
また、製造過程でできる消化液は、肥料として使うことができ、化学肥料の使用を減らすといったことにも役立ちます。このようにさまざまな点で、環境への負荷を軽減します。
メタネーションのデメリット
環境負荷の低減や再生可能エネルギーの活用に役立つなど、メタネーションには多くのメリットがある一方で、課題も少なくありません。例えば、高コストや大規模な設備投資、環境価値の可視化の難しさなどが挙げられます。そこで、メタネーション導入を検討するうえで知っておくべき主なデメリットを整理し解説します。
製造コストがかかる
製造コストが高いことは課題の1つです。特に「触媒メタネーション」という方法は、高温(200〜600℃)や高い圧力(1〜15気圧)が必要で、その分エネルギーをたくさん消費します。また、反応時に大量の熱が出るため、それをうまくコントロールする装置も必要となり、結果として設備が複雑でコストがかさみます。
そして、原料となる水素は水からつくりますが、この方法には大型の電解槽が必要で、絶対的な数が不足しています。もう1つの原料である二酸化炭素も、それを集めるには初期の設備投資が非常に大きく、メンテナンスの費用も高くなりがちです。そのため、投資したお金を回収するまでに時間がかかるという課題があります。
今後、例えばEEMPAという新しい薬品を使った方法などが本格化すれば、コストを下げることも可能かも知れませんが、現段階では実用化されていません。
環境への付加価値が可視化できない
環境への効果をわかりやすく見せるのが難しいという課題もあります。例えば、温室効果ガスの排出が減ったことを正確に測って視覚化するのは、実は簡単ではありません。
そもそもメタンは、目に見えず匂いもないため、どこからどれくらい出ているのかを確認するには、LiDARなどの特殊な機械を使わないとわかりません。そのため、排出量を正確に測るのが難しいのです。
また、これまでのメタン排出量は、実際より少なく見積もられてきた可能性もあり、企業の報告と実際の量が合っていないこともあると指摘されています。しかし、今のところ使われている測定方法には限界があり、それをカバーする技術もありません。こうした理由から、環境への貢献度を数字ではっきりと示すのが難しく、「どのくらい良いのか」が伝わりにくい状況が続いています。
商品化には巨大な設備が必要
商品化するには非常に大きな設備が必要という課題もあります。例えば、メタンを効率よくつくるためには、200〜600℃という高温と1〜15気圧という高い圧力が必要ですが、反応装置はとても複雑で、設置にも多くの費用とスペースがかかります。
また、原材料である「水素」をつくるには、水を分解する電解装置が必要になりますが、こうした装置を大量に用意するにはインフラの整備が追いついていない、製造能力や原材料の不足といった課題もあります。
そして、二酸化炭素についても同様です。空気中から二酸化炭素を直接集めるDACという技術がありますが、これにはかなりのエネルギーを使うため、コストが高くなりやすいです。
まとめ
メタネーションは、再生可能エネルギーの長期的な貯蔵手段としてだけでなく、カーボンニュートラル実現に向けた重要な選択肢として、国内外で導入の機運が高まりつつあります。廃棄物の有効活用、温室効果ガスの排出削減など、多様なメリットがある一方で、大規模な設備投資やコスト、環境的価値の可視化といった課題も明らかになっています。
ただ、今後の技術革新と法的整備の進展次第では、こうした障壁を乗り越えられる可能性があり、産業・自治体・研究機関など多様な分野での取り組みが加速していくことが期待されます。
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