2026.09.29

データセンターの排熱利用とは?低温排熱を回収・昇温して再利用する仕組み

近年、生成AIやクラウドサービスの普及に伴い、大量のデータを処理するデータセンターの大規模化が進んでいます。AI向けの高性能なサーバーは発熱量が大きいため、冷却負荷が増加し、外へ放出される排熱量も増えています。

こうしたデータセンターから発生する熱をそのまま外へ放出するのではなく、暖房や給湯、農業などに活用できれば、省エネやCO₂排出量の削減につながる可能性もあるでしょう。

この記事では、データセンターの排熱がどのような用途に利用できるのか、海外の活用例、低温排熱を回収・昇温する仕組み、導入できる条件について解説します。

データセンターにおける排熱利用とは

データセンターには多数のサーバーが設置されており、稼働中は電力を使って大量の情報を処理しています。その過程で熱が発生するため、機器を安定して動かすには、空調設備や冷却水によって継続的に冷やさなければなりません。

通常、冷却時に取り除いた熱は屋外へ放出されますが、回収すれば、建物の暖房や給湯などの熱源として活用できる可能性があります。

関連記事:排熱回収のメリットは?利用できる熱源や注意点についても解説

データセンターの排熱は何に利用できる?

データセンターの排熱は、住宅やオフィスの暖房、給湯、温水プール、農業用ハウス、養殖設備、工場の低温加熱工程などに利用できます。

比較的低い温度で運用できる床暖房や農業用ハウスでは、回収した熱を利用しやすいでしょう。ほかにも、養殖設備の水温管理や、工場における洗浄水の予熱、乾燥工程、バイオマスの乾燥などが活用先として考えられます。必要な温度や用途によっては、給湯や温水プールにも利用可能です。

このように、データセンターの排熱にはさまざまな使い道があります。ただし、活用のしやすさは、排熱の温度と利用先が求める温度によって異なります。

データセンターの排熱がそのままでは使いにくい理由

データセンターの排熱は、すべてをそのまま暖房や給湯に使えるとは限りません。ここからは、その理由を解説します。

排熱の温度と利用先の要求温度に差がある

データセンターで回収できる排熱は、必ずしも高温ではありません。空調設備や冷却水を通して回収する段階では、比較的低い温度の空気や水として取り出されることがあります。回収した排熱の温度と利用先が必要とする温度に差があると、そのままでは利用しにくいでしょう。

農業用ハウスや床暖房のように低めの温度で利用できる用途には活用しやすい一方、給湯や既存の地域暖房では温度が不足する場合があります。必要な温度に届かない場合は、回収した熱を昇温する仕組みが必要です。

熱量や発生時間も関係する

排熱利用では、温度だけでなく、得られる熱量や発生時間も重要です。

サーバーや冷却設備から一日中熱が出ていても、給湯設備や洗浄水タンクが昼間しか稼働しなければ、夜間の排熱は使い切れません。排熱側と利用側で、熱量と時間帯が合うかを確認する必要があります。

データセンターの排熱を回収・昇温する仕組み

データセンターの排熱を再利用するには、空気や冷却水に移った熱を熱交換器で回収し、必要に応じてヒートポンプで利用先が求める温度まで引き上げます。ここでは、熱交換器とヒートポンプがそれぞれどのような役割を担うのかを解説します。

空気や冷却水から熱交換器で熱を回収する

サーバーから発生した熱は、冷却の過程で空気や冷却水へ移ります。熱交換器では、排熱側の空気や水と、暖房や給湯などに使う側の流体を直接混ぜずに、温度差を利用して熱だけを受け渡します。

排熱側の温度が利用側の必要温度より高ければ、熱交換器だけで活用できる場合もあるでしょう。一方、回収後の温度が足りない場合は、ヒートポンプによる昇温の検討が必要です。

不足する温度をヒートポンプで引き上げる

熱交換器で回収した熱が利用先の必要温度に届かない場合は、ヒートポンプで昇温します。ヒートポンプとは、低温の熱をくみ上げて高温側へ移す設備です。

熱源と供給先の温度差が大きいほど、昇温に必要なエネルギーは増えやすくなります。そのため、利用先の必要温度を確認し、過度に高い温度を設定しないことが重要です。

ヒートポンプの効率を確認する指標の一つが、COP(成績係数)です。COPは、消費したエネルギーに対してどれだけの熱を供給できたかを示します。

関連記事:COP(成績係数)とは?省エネとの関係や熱利用の効率を高める方法

データセンター排熱の活用例

データセンターの排熱は、地域暖房をはじめ、農業や養殖などへの活用が進められています。ここでは、どのような条件で利用できるのかを見ていきましょう。

地域や周辺施設の暖房に利用する例

データセンターの排熱は、年間を通して熱が発生しやすいため、周辺の住宅や施設の暖房に活用できます。

デンマークのオーデンセでは、データセンターから回収した排熱をヒートポンプで昇温し、地域暖房の熱源として実際に利用しています。産業機器メーカーのアルファ・ラバルによると、排熱回収設備は年間約10万MWhの熱を回収しており、約7,000戸分の暖房に相当する規模です。

このように排熱を地域暖房に利用するには、熱需要先が近くにあることに加え、熱を運ぶ配管網と、必要な温度まで引き上げる設備が欠かせません。

農業用ハウスや低温用途に利用する例

農業分野では、排熱をハウス内の暖房や土壌、水耕栽培の養液の加温に利用する方法があります。ほかにも、養殖設備の水温管理や木質チップなどを低温で乾燥させる工程で活用できます。

こうした用途は、比較的低い温度の熱を利用しやすい点が特徴です。ただし、排熱をそのまま使えるか、ヒートポンプによる昇温が必要かは、回収時の温度と利用設備が求める温度によって異なります。

データセンターの排熱利用を検討するときのポイント

データセンターの排熱は、回収できれば必ず有効活用できるわけではありません。実際に導入できるかを判断するために、事前に確認しておきたいポイントを解説します。

排熱側と利用側の温度・熱量を確認する

排熱利用を検討する際は、排熱側と利用側の温度や熱量が合っているかを確認する必要があります。回収できる熱が不足すれば需要を満たせず、多すぎる場合は使い切れません。

また、排熱が発生する時間帯や季節変動と、利用側が熱を必要とする時期も照らし合わせます。こうした条件を整理すると、直接利用できるか、昇温や補助熱源が必要かを判断しやすくなるでしょう。

排熱源と利用先の距離を確認する

データセンターと熱を使う施設の距離も確認が必要です。距離が長くなるほど配管から熱が逃げやすくなり、配管工事や循環ポンプにかかる費用も増えます。

そのため、周辺に住宅や公共施設、工場などの熱需要先があるか、配管を設置できるかを確認します。さらに、配管の途中でどの程度熱が失われるか、断熱やポンプにかかる費用を含めて採算が合うかの検討が大切です。

熱交換器とヒートポンプを適切に組み合わせる

排熱側と利用側の温度条件に合わせて、熱交換器とヒートポンプを組み合わせることで効率的に排熱を利用できます。十分な温度差があれば熱交換器だけで熱を移せますが、温度が不足する場合はヒートポンプで昇温が必要です。

また、熱交換器は流量や圧力、汚れの付きやすさ、設置環境に合ったものを選びましょう。配管やポンプの消費エネルギーも含め、設備全体で回収効果を確認することが大切です。

検討時は、排熱の温度、風量または流量、稼働時間と、利用設備の必要温度・必要熱量を整理しておくと、設備の選定や相談を進めやすくなります。

排熱の温度が利用先の必要温度に届かない場合は、ヒートポンプによる昇温も選択肢の一つです。

関連記事:ヒートポンプとは?廃熱に有効なヒートポンプの仕組みと種類

まとめ|データセンターの排熱は条件次第で再利用できる

データセンターの排熱は、暖房や給湯、農業などに再利用が可能です。ただし、回収できる熱の温度や熱量、利用先との距離によっては、そのまま使えない場合もあります。

必要に応じて熱交換器で熱を回収し、ヒートポンプで昇温すれば、活用の幅を広げられるでしょう。条件が合えば、ボイラーや電気ヒーターなど既存熱源の負担を抑え、省エネやCO₂排出量の削減につながる可能性があります。導入時は温度や熱量、流体、風量、設置環境などを確認し、自社に合った設備を選んでください。

 

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