2023.03.18

ボイラーの仕組みは?種類や取り扱いの注意点を解説

ボイラーの仕組みは?種類や取り扱いの注意点を解説

ボイラーとは、圧力容器に入れた液体を加熱して蒸気や温水を作る装置です。圧力容器には第一種と第二種があり、それぞれ点検の頻度や製造にあたっての許可申請など扱いが異なります。2つのうち、より厳しく規制されているのは第一種圧力容器です。

またボイラーは鋳鉄製(ちゅうてつせい)と鋼鉄製の2つに分かれ、一般家庭の暖房や給湯には鋳鉄製のボイラーが使われています。

ただし、ボイラーは扱いを間違えば重大な事故を起こします。そのため、取り扱う者は国家資格を保有していることが条件です。

今回の記事で解説しているのは、ボイラーの仕組みと種類、取り扱いの注意点およびボイラー技士の資格についてです。合わせて、ボイラーが活用されているシーンについても触れています。

ボイラーとは

ボイラーとは液体を沸騰させて温水や水蒸気を作る装置のことです。

ボイラーの定義は3つです。

  • 熱源は電気や高温ガスもしくは火気
  • 水または他の温水で水蒸気を作る
  • 温水や蒸気を外部へ供給できること

水を沸騰させることに関しては原子炉も同様ですが、ウランの核分裂によって発生した熱を利用しているため、ボイラーの定義に当てはまりません。

ボイラーの仕組み

ボイラーには温水を作るものと蒸気を作るものの2つがあります。

温水を作るタイプのボイラーは、圧力容器内で発生した高温の蒸気を外部へ供給して水をあたためる仕組みです。蒸気を作るタイプのボイラーは、容器内で発生した蒸気を使用します。

なお、圧力容器内の水に含まれる不純物は加熱によって濃度を増し、容器内部に付着します。そのため、定期的な排水が必要です。

関連ページ:ボイラーのブロー水からの熱回収

ボイラーの圧力容器

ボイラーの圧力容器は2種類あり、それぞれ扱うものが異なります。

圧力容器の種類 扱うもの 特徴
第一種圧力容器 飽和液

(大気圧の沸点を超える液体)

圧力をかけたときに容器内で気体が発生する
第二種圧力容器 気体 圧力をかけても容器内で気体が発生しない

 

これらの区分を定めているのは労働安全衛生法です。ボイラーは高温高圧の気体や液体を扱うため規制も厳しく、容器の圧力や大きさも決まっています。

  第一種圧力容器 第二種圧力容器
製造

 

都道府県の労働局長へ許可を申請する ボイラー協会かボイラークレーン協会に申請する
検査

(義務)

 

製造、輸入、設置ごとに労働局が実施

 

運用後も1年に1度の検査が必要

製造や輸入するときに個別検定をおこなう

 

1年に1度の自主点検が必要

 

なお、第一種圧力容器が厳格な規制を敷かれているのは、破裂したときの被害が大きいためです。

ボイラーの種類

ボイラーは2種類あります。

鋳鉄製ボイラー

鋳鉄製ボイラーが使われているのは集合住宅や一般家庭の暖房と給湯です。

セクションという部品を連結できるため大きさを自由に設計でき、低価格で耐食性にも優れています。ただし、鋳鉄製ボイラーは強度が低いため低圧でしか使用できず、メンテナンスも難しい点がデメリットです。

鋼鉄製ボイラー

鋼鉄製ボイラーは高温高圧に耐えられるほどの強度を持ち、内部構造がシンプルでメンテナンスしやすいのがメリットです。ただし、大型のため設置できる場所が限られ、運搬や修理が大がかりになります。

鋼鉄製ボイラーの種類は主に3つです。

水管ボイラー

水管ボイラーは上部と下部にドラムを設置して、多くの水管でつないでいます。水管をいくつも配置しているのは圧力への強度を高めることと、より効率的に沸騰させるためです。また、水温を一定に保つことが求められるため、大量の水を使って常に循環させています。

水管ボイラーには3つのタイプがあります。

  • 自然循環式
  • 強制循環式
  • 貫流ボイラー

これらは水の流れの仕組みによって異なります。

丸ボイラー

丸ボイラーは、円筒に水を入れて煙管を通して加熱するタイプです。ボイラーの構造によって4つのタイプに分けられます。

  • 立てボイラー
  • 炉筒ボイラー
  • 煙管ボイラー
  • 煙管炉筒ボイラー

丸ボイラーは手入れやメンテナンスに手間がかからず長持ちしますが、沸騰までに時間がかかります。

特殊ボイラー

特殊ボイラーとは、特殊な燃料や水以外のものを加熱するボイラーのことです。

これらのボイラーを以下にまとめました。

水以外のものを加熱するボイラー 特殊な燃料を使用するボイラー
廃熱ボイラー

特殊熱ボイラー

間接加熱ボイラー

電気ボイラー

廃棄物燃焼ボイラー

ソーダ回収ボイラー

 

 

特殊ボイラーと他のボイラーの違いは、燃焼装置の有無と有機熱媒を使用する点です。

例えば廃熱ボイラーには燃焼装置がなく、また特殊熱媒ボイラーは使用する有機熱媒が200°C〜400℃と高温です。

ボイラーの注意点

ボイラーは、扱いや管理を誤ると命にかかわる重大な事故につながるリスクを持っています。これは本体が高温であることと、本体内部にかかる圧力が大きいことからきています。

ですから、ボイラーの操作や保守管理には正しい知識とメンテナンスが必要です。

ボイラーの取り扱いには国家資格が必要

ボイラーの扱いにはボイラー技士の資格が必要です。ボイラー技士は国家資格で、区分は3つあります。

  • 特級
  • 1級
  • 2級

2級は実務経験の有無にかかわらず受験でき、それ以降は経験を積み重ねてステップアップしていきます。

一定以上の規模のボイラーを設置しているところは、ボイラー取扱作業主任者を選任することが義務づけられています。なお、ボイラー取扱作業主任者の選任要件は2級ボイラー技士からです。

ボイラーが活用されているシーン

ボイラーが活用されているシーンを7つ挙げました。

給湯や暖房

一般家庭の暖房や給湯に用いられているボイラーは、水道管に水が流れると自動的にガスがついて温水を作るシステムです。ここで作った温水は床暖房にも利用されています。

また、寒冷地の商業施設やオフィスではボイラーで大量の温水を作り、各部屋の放熱器に供給して室内をあたためています。

加湿

病院や製薬工場での加湿に利用するのがボイラーの蒸気です。空調による院内感染を防ぐために、衛生には厳重に配慮しています。ほかにも博物館や美術館でも所蔵品の損傷を防ぐことを目的として活用されています。

調理

圧力鍋はボイラーの原理を利用した調理器具です。食材を入れた鍋を蓋で密閉して圧力を高め、短時間で煮込み料理を作れます。これを実現しているのは過熱水蒸気処理といって、水蒸気を100℃以上にして「蒸す」と「焼く」を同時におこないます。

圧力鍋が食材の持つうまみと栄養を逃さず調理できるのは、過熱水蒸気処理によるものです。

洗浄や殺菌

洗浄や殺菌にボイラーの蒸気を利用するのは、主に食品工場や病院など衛生管理が必要なところです。薬品による殺菌や滅菌は人体への影響が懸念されますが、ボイラーの蒸気であればそうしたリスクを回避できます。

醸造

醸造でボイラーを使うのは、蒸留酒と日本酒です。

蒸留酒を造るときは、酵母菌で発酵させた醸造酒をあたためるときにボイラーで加熱し、発生したアルコール蒸気を冷却します。日本酒でボイラーを使うのは原料のお米を蒸すときです。

化学工場

重油や軽油などを作るときは、原油を加熱して蒸気を冷却しています。ただし原油は火気厳禁のため、加熱するときにはボイラーの蒸気を使う間接加熱式が用いられています。

発電

火力発電におけるボイラーの役割は、タービンを回転させることです。巨大な発電機を高速回転させるための動力であるタービンを、ボイラーの蒸気で回転させています。そして使用した蒸気を冷却して水にし、再びボイラーで使用します。

火力発電所が海の近くに建設されることが多いのは、蒸気を冷却するのに大量の水を使うためです。

まとめ

ボイラーとは、圧力容器内で液体を沸騰させて温水や蒸気を作る装置です。圧力容器には第一種圧力容器と第二種圧力容器があり、それぞれ扱うものや容器の大きさなどが決まっています。

ボイラーは病院や食品工場、化学工場など多くの業界で活用されており、一般家庭でも暖房や給湯に用いられています。さらにいえば、圧力鍋はボイラーの原理を利用した調理器具です。

このように活躍するシーンの多いボイラーですが、扱いを誤れば重大な事故を引き起こします。そのため、扱うときにはボイラー技士の資格が必要です。

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