2023.02.08

冷蔵庫が冷える仕組みとは?ヒートポンプの構造や冷却方式も解説

冷蔵庫が冷える仕組みとは?ヒートポンプの構造や冷却方式も解説

冷蔵庫が冷えるのは、気化熱と気体の圧縮によるものです。

冷媒ガスが気化熱によって庫内の熱を吸収して気体になったものを圧縮機で液体にします。そして液体から熱のみを排出したらまた気体になるというサイクルを繰り返しています。この一連の作業にはヒートポンプが欠かせません。

冷蔵庫のヒートポンプは主に4つの部品で成り立ち、それぞれが重要な役割を果たしています。ヒートポンプが搭載されている冷蔵庫は家庭用と業務用です。ホテルや病院などで設置されている小型の冷蔵庫は、ヒートポンプを搭載していません。

今回の記事で解説しているのは、冷蔵庫が冷える仕組みとヒートポンプの構造についてです。合わせて冷蔵庫の冷却方式と種類についてもふれています。熱交換器が冷蔵庫でどのように働いているのかを知るきっかけになるはずです。

冷蔵庫が冷える仕組み

冷蔵庫が冷えるのは気化熱と気体の圧縮によるものですが、実際に冷媒ガスが冷蔵庫内でどのように働いているかを順番に示しました。

  1. 気化熱で庫内の熱を奪う
  2. 冷媒を圧縮機にかける
  3. 冷媒が圧縮されて液体になる
  4. 液体になった冷媒から熱を排出する

冷媒が冷蔵庫内の熱を奪うと液体から気体へ変わります。この現象を気化熱といい、液体が蒸発して気化するときに周囲の熱を奪う性質を持っています。打ち水や注射前のアルコール消毒を涼しく感じるのはこの原理によるものです。

気体になった冷媒を圧縮機に集めて圧縮すると、冷媒は液体になります。そして液状の冷媒から熱のみを排出して、また冷蔵庫内へ気体として循環していくという流れです。

圧縮機を始めとした機器はヒートポンプを構成するものであり、冷媒を気体から液体へと変化させ循環するために欠かせません。ヒートポンプについては次項で解説します。

ヒートポンプの構造

冷蔵庫に搭載されているヒートポンプを構成しているのは主に4つの部品です。これらの部品が一つの回路を形成して、そのなかを冷媒ガスが通っています。

関連ページ:ヒートポンプとは?廃熱に有効なヒートポンプの仕組みと種類

圧縮機

圧縮機は別名コンプレッサーといい、冷蔵庫内を巡る冷媒ガスを運ぶための心臓部分を担っています。

冷蔵庫内で気体の冷媒ガスが熱を奪い、圧縮機によって高温の液体に変わります。そして熱を排出して常温の液体になった後に気体へ変化して庫内の熱を吸収するという仕組みです。

圧縮機は自動でオンオフを繰り返しながら作動しており、冷蔵庫から時折「ブーン」という音がするのは圧縮機が作動しはじめたときに聞こえる音です。

凝縮器

凝縮器はコンデンサーともいい、その役割は圧縮機によって高温高圧の気体になった冷媒を液体にすることです。熱交換器の一種となります。

膨張弁

膨張弁の役割は冷媒の温度と圧力を下げることです。

膨張弁が冷媒の温度と圧力を下げるとき、狭い隙間に液体の冷媒を通します。狭い隙間を高温高圧の冷媒が通ると流入量が減少するとともに勢いが強くなります。それによって冷媒の圧力と温度が下がり、蒸発しやすくなるという仕組みです。

また、蒸発器への負荷に応じて冷媒の流量を調整して蒸発器から出る冷媒の熱を一定に保ち、圧縮機への逆戻りを防ぐ役割も持っています。

蒸発器

蒸発器は液体になっている冷媒を気化させます。液体は蒸発するときに周囲の熱を奪う性質を持っており、冷蔵庫内が常に冷えているのはこのためです。そして気化した冷媒は圧縮機へ送られ、液化して熱を外へ放出しながら循環します。こちらも熱交換器の一種です。

関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介

冷蔵庫の冷却方式

冷蔵庫の冷却方式は2つです。

ファン式

ファン式は冷蔵庫外に冷却器が設置されており、冷却器から出る風を庫内へ送って冷やすため間冷式ともいわれます。

1番のポイントは庫外に冷却器が設置されていることです。ファンで強制的に庫内に風を送るため、一定の温度を保ち、食材を均一に冷やすのに適しています。また、霜取りの必要もありません。ただし、冷却効率は直冷式に劣り、電気代もかかります。

直冷式

直冷式は冷凍庫や冷蔵室に設置した冷却器の冷気で庫内を冷やします。

ファン式と比較して冷却効率が高いことと電気代を抑えられる点がメリットです。ただし、直冷式は必ず霜取りをおこなってください。特に冷蔵庫の開閉を頻繁におこなったときや湿気の多い梅雨時には大量の霜ができることもあります。

冷蔵庫の種類

冷蔵庫には主に5つのタイプがあり、それぞれ適した用途や冷やし方が異なります。

ガス圧縮式

ガス圧縮式の冷蔵庫は一般的な家庭用冷蔵庫に用いられる、もっともポピュラーなタイプです。背面に圧縮機から熱が排出されるため、設置するときは壁とのあいだにスペースが必要です。放熱スペースが不十分な場合、適切な排熱ができず冷却効率が低下します。

このような状態では故障や発火などの事故にもつながるため注意してください。

ガス吸収式

吸収式の冷蔵庫が使用されているのは主にホテルや病院などです。このタイプの冷蔵庫には圧縮機が搭載されておらず、ほとんど音がしない点から静けさが求められる場所で採用されています。

吸収式冷蔵庫の冷媒はアンモニアで、主要機器は5つです。

  1. 吸収器
  2. 再生器
  3. 分離器
  4. 凝縮器
  5. 蒸発器

吸収器の役割は、アンモニアと水を混合してアンモニア水溶液を作ることです。生成されたアンモニア水溶液は再生器によって加熱されます。加熱されたアンモニア水溶液は分離して気化したアンモニアは凝縮器に向かい、水は吸収器に戻ります。

凝縮器の役割はアンモニアを液化させることです。液化したアンモニアは蒸発器によって気化して庫内を冷やします。そしてアンモニアは再び吸収器でアンモニア水溶液となって循環するという仕組みです。

電子式

電子式では圧縮式と吸収式とは異なり、冷媒を使用しません。ひいてはコンプレッサーや吸収器なども搭載されておらず、静かなうえに本体もコンパクトなのがメリットですが冷却効率は低いのが特徴です。

電子式冷蔵庫は2つの異なる金属を接触させ、直流電流を流すと生じるペルチェ効果を利用して冷やします。ペルチェ効果とは異なる金属に直流電流を流すと、片面が熱を吸収して片面が発熱する現象です。

このタイプは病院やホテルなどの小型冷蔵庫のほか、冷却機能のあるワインセラーにも活用されています。

ただし電子式はエネルギー効率が低く、庫内温度を下げるための排熱量が多いのもデメリットです。また、排熱がじゅうぶんでない場合は金属が破損します。さらに冷蔵庫そのものは静かでも排熱ファンの音はするため、完全な無音とはいえません。

水冷式

水冷式の冷蔵庫は主に業務用です。水を冷却水として用い、熱交換によって循環させています。

室内に熱がこもりにくいことと冷却効率が高いこと、排熱やファンの騒音がなく環境にやさしいことも特長です。ただし、水を使うため配管工事や付帯設備が必要です。

空冷式

空冷式は外気との熱交換によって循環水を冷却するため、ファンが設置されています。水冷式と比較して保守管理が容易で、冷却水の回路が不要なためコストを抑えられるのがメリットです。

ただし、排出される熱は室内にも及ぶため空気がこもりやすく、冷却効率は水冷式に劣ります。

冷媒ガスに使われている物質

冷媒に使われている物質はノンフロンガスもしくは代替フロンガスです。

ノンフロンガスの特徴はオゾン層を破壊せず温暖化への影響も小さいことです。環境にやさしいガスとして冷蔵庫や冷凍庫、エアコンなどに活用されており、自然冷媒とHFOの2つがあります。

自然冷媒は二酸化炭素や炭化水素、アンモニアなど自然界に存在する物質を利用したものです。HFO(ハイドロフルオロオルフィン)は水素、フッ素、炭素で構成された有機フッ素化合物です。

代替フロンガスはオゾン層への影響はないものの二酸化炭素の数百から数千倍もの温室効果があります。そのため日本では2030年までに2013年度と比較して32%減少させることを目標としています。

かつて冷蔵庫やエアコンにはフロンガスが使われていましたが、オゾン層の破壊や地球温暖化を進める原因として、日本を含む各国で規制の対象となっています。

まとめ

冷蔵庫が冷えるのは熱交換器によって庫内の熱を奪い、庫外へ排出しているためです。

庫内には冷媒ガスが通るためのパイプが張り巡らされており、ガスは気体から液体へと変化しながら循環しています。冷蔵庫には複数の種類があり、もっともポピュラーなのは家庭用冷蔵庫に用いられているガス圧縮式です。

冷蔵庫に欠かせない冷媒にはかつてフロンガスが用いられていましたが、環境破壊の問題から現在は代替フロンガスもしくはノンフロンガスに切り替わっています。

また冷蔵庫そのものも省エネルギータイプのものが増えており、環境への配慮と利便性の両立が見込まれています。

 

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