2026.04.08

強アルカリとは?洗浄能力の高さと危険性、取り扱いのポイントを解説

場内を清掃している男性

強アルカリとは、水素イオンの濃度指数を示すpH値が11以上である性質のことを指します。アルカリ性が高い物質は洗浄力に優れており、工場内の現場では機械や器具の清掃、洗浄業務での活用が期待できます。

ただし、強アルカリは人体に触れると健康リスクを生じさせるおそれがあり、洗浄業務に際しての取り扱いには注意が必要です。洗浄する器具の素材によっては、強アルカリとの相性が悪く、劣化や腐食を引き起こす懸念もあります。

この記事では、強アルカリの特徴と危険性を踏まえ、洗浄工程に取り入れる際のポイントを解説します。工場設備の洗浄に携わる方は、正しい取り扱い方を認識したうえで業務フローを検討し、安全に強アルカリを導入しましょう。

強アルカリ(強アルカリ性)とは?pHの定義と代表的な化学物質

強アルカリ性の基準はpH11以上です。身近なものでの用途は限られますが、とくに洗浄で用いられる工業用製品にはさまざまな強アルカリ性物質が存在します。中でも代表的な例は、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウムです。

pH11以上を強アルカリ性として扱う理由

pH8〜11の範囲を微アルカリや弱アルカリ、pH11以上を強アルカリとして扱うケースが一般的です。pH値が11を超えると、人体や素材に影響を与えるおそれがあるため、取り扱いには正しい知識と方法が求められます。

水質汚濁防止法では、海域以外の公共用水域への排出pH5.88.6と定められています。つまり、pH11以上の物質は排出が認められておらず、強アルカリ性の扱いには規制が存在します。

参考:環境省|一般排水基準

工場の洗浄工程で使用される代表的な化学物質

工場での洗浄業務では、強アルカリ性の洗浄液が用いられます。以下が代表例です。

  • 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)

重度の油・タンパク汚れを分解します。CIP洗浄の主成分です。

  • 炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)

低腐食でpH安定性が高いのが特徴です。洗浄の補助や前処理用に利用されます。

  • 水酸化カリウム

低温・高溶解性で液体洗剤に多く用いられます。アルミ腐食に注意が必要です。

食品加工業と精密機器の製造業では、工場内で活用できる洗浄液の適性が異なります。洗浄する機器の素材や汚れの性質に応じて、適切な洗浄液を選ぶようにしましょう。

関連記事:アルカリ洗浄液とは?特徴と扱う上での注意点を解説

家庭用洗剤と工業用薬品の決定的な違い

家庭用として販売されている洗剤の中には、工業用洗剤と同等のpH値を持つものも存在します。両者の違いは、洗浄成分の濃度や純度の高さです。

工場内作業で用いる薬品には強力な洗浄能力が必要で、苛性ソーダのような物質が高濃度、高純度で配合されています。そのため、pH値自体は同じでも、人体や設備に与える影響の大きさが異なります。

なぜ強アルカリは危険なのか?人体と設備への影響

強アルカリが持つ危険性について、健康リスクと設備上の事故の観点から3つ紹介します。工業用薬品が人体に触れた場合は健康被害をもたらすおそれがあり、応急処置を要します。洗浄中は、取り扱いを誤ると素材が腐食するリスクも生じるでしょう。

皮膚・眼への重篤な影響リスク

強アルカリ成分が皮膚や眼に触れると、重篤なやけどや炎症を引き起こすおそれがあります。作業前は手袋や防護服の着用を徹底したうえで、万が一素肌に触れた場合は、シャワーや洗眼器で洗い流す応急処置が取れるよう、あらかじめ準備しておきましょう。

具体的な対応フローは、SDS(安全データシート)に記載して工場内で管理できます。

参考:厚生労働省|SDS

化学反応による事故:アルミニウム等との接触と水素ガス発生

ステンレス素材は強アルカリへの耐性を持ちますが、アルミ素材がアルカリに接触すると、表面の酸化皮膜が溶解してしまいます。接触に伴って水素ガスが発生し、爆発リスクが生じる点も考慮しなければならない問題です。

事故の具体例として、アルミ製のフィンに強アルカリ洗浄剤が接触したことで、フィンが腐食・白濁してしまうケースがあります。

関連記事:アルミニウムが腐食する原因は5つある!わかりやすく解説

熱交換器の部材(金属・パッキン)への腐食影響

熱交換器に用いられる部材のうち、ステンレス(SUS304/316L)はアルカリ腐食に対する耐性があります。しかし、塩素イオンを含む洗剤に触れた場合は、応力腐食割れが発生するリスクを持ちます。

また、ゴムパッキン部分の素材に関しては、EPDMが高い腐食耐性を有します。フッ素ゴムは製品によって耐性が異なるため、洗浄を行う際は適合性の事前確認が大切です。

関連記事:なぜステンレスは孔食する?腐食の種類と防止方法を解説

工場での洗浄における強アルカリの用途とメリット

工場で強アルカリ薬品を使用すると、設備機器に付着したさまざまな性質の汚れを洗浄できます。とくにアルカリ腐食の耐性が高い素材の機器であれば洗浄力を発揮しやすくなります。熱交換器を定置洗浄する際にも活用できるでしょう。

油脂・タンパク質汚れに対する高い洗浄能力

工場で生じる油脂汚れや、タンパク質汚れを洗浄できる点が強アルカリ性の利点です。酸性である油脂はアルカリ性に反応すると水に溶けて分解されます。また、強アルカリが人体に影響を与える仕組みと同様に、タンパク質を分解する力もあります。

 熱交換器のCIP(定置洗浄)における役割

CIP(定置洗浄)とは、機器を分解せずに薬剤を内部に流し込み、循環させて洗浄する手法のことです。熱交換器の稼働効率を保ちながら洗浄する際に適した手法と言えます。

定期的なスパンでCIPを実施すると、汚れの付着による熱交換性能の低下を予防できます。一方で、腐食や劣化のリスクを避けるために、最適な洗浄液の選定が重要です。

【実務者向け】安全な取り扱いと管理のポイント

工場内の洗浄業務で強アルカリ薬剤を使用される方に向けて、取り扱いと管理を安全に進めるためのポイントを4つ紹介します。作業前後の工程で、法令を意識した社内ルールがあれば、トラブル発生時も適切な対応が取れるでしょう。

作業前の義務:SDS(安全データシート)とGHSラベルを確認する

洗浄作業の前に、SDSGHSラベルが完備されているかを確認しましょう。SDSの確認時は、メーカーの公式情報や厚生労働省のモデルSDS検索サイトが参考になります。

GHSとは、化学物質の危険有害性を示した世界共通の基準です。GHSに基づいた絵のシンボルや危険喚起語をラベル表示して薬剤の容器に貼付することで、作業者が取り扱い時の危険性を把握しやすくなります。

適切な保護具(化学用手袋、ゴーグル、防護服)の選定基準を設ける

洗浄中は、強アルカリ物質との接触を回避するために保護具を着用します。しかし、保護具の素材や強度が適切でなければ、人的被害を防ぎきれないおそれがあります。

労働安全衛生法では、危害防止基準として作業中の危険に対して労働災害を防ぐための措置が求められます。

参考:厚生労働省|労働安全衛生法の概要

廃液の扱い:pH基準・排水基準と社内手順を遵守する

洗浄後の薬剤を廃棄する際は、法令と社内ルールに基づいた処理が重要です。水質汚濁防止法ではpH基準が設けられており、強アルカリ物質を排出するには中和させてpH値を調整する必要があります。なお、強アルカリの処理時に中和熱が生じた場合、高温化や飛散のリスクがあるので注意しましょう。

異常発生時の緊急応急処置フローを周知する

薬剤の流出や人的被害など異常が発生した場合に備え、応急処置フローの明記と周知も大切です。たとえば、毒物及び劇物取締法では、事故発生時に警察署や保健所など関係機関への届出が義務付けられています。自社工場の特徴に合わせた業務フローを作成し、社内で広く展開しましょう。

参考:e-GOV法令検索|毒物及び劇物取締法第十七条

まとめ

本記事では、強アルカリ物質の危険性や取り扱い上のポイントについて解説しました。工場内での洗浄業務では、汚れを落とす力に優れた強アルカリ性の薬剤がよく用いられます。しかし強アルカリ性の薬剤は、場合によっては素肌で触れると火傷をする、あるいはアルミ素材の設備を腐食させるリスクが生じるものもあります。安全管理の一環として、こうしたリスクを抑えた洗浄液を選ぶことも有効です。

設備の性能を保ち、長寿命化させるにはこまめな洗浄が不可欠です。そこで洗浄力の高い強アルカリが重宝されますが、同時に従業員と設備を守るための安全管理も徹底する必要があります。化学物質の特徴や関係法令を認識し、洗浄作業の前後に適切な業務フローを設定しましょう。

※本記事は、工場洗浄における強アルカリの一般的な性質や注意点を解説するものであり、実際の使用にあたっては各製品のSDSおよび事業所の安全管理基準、関係法令・自治体条例を必ずご確認ください。

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