2023.08.15

熱の種類は3つ!それぞれの違いを解説

熱の種類は3つ!それぞれの違いを解説

物理学における熱とは、エネルギーの移動形態のひとつで、身近な現象からも多く観測可能です。

似た言葉には「温度」がありますが、この2つは明確に異なります。一般的に、温度は熱さや冷たさといったエネルギー量を数値で表したもので、熱は物体が持つエネルギー自体を指しています。

今回は、そんな熱の種類と違いを解説したうえで、熱が伝わる性質を利用したアイテムについても紹介します。

熱の種類と違い

熱は大きく分けて3種類で、その違いは伝わり方にあります。

  • 放射熱:空気や放射線で伝わる熱。
  • 対流熱:温度差によって起きる液体や流体の移動で伝わる熱。
  • 伝導熱:固体同士の接触により伝わる熱。

放射は周りよりも温度の高いものから出た熱が、空気や放射線により伝えられる現象です。代表的なもので、太陽の熱があります。太陽の熱は、真空である宇宙から地球までは放射線で、地球上は空気を伝って届けられているのです。

なお、夜になると涼しくなるのは、太陽が沈むことだけが原因ではありません。昼間に蓄積された地表の熱が、空に上がるときに周囲の熱を奪っていくことも関係しています。放射冷却または冷放射とも呼ばれている現象です。

対流は、温度の違いにより発生する水や空気の動きを指します。液体や気体は温度が上がると膨張し、密度が小さくなるため、空中に上昇するのです。その空間に低い温度の密度が大きく、重い部分が流れ込みます。この動きにより、水や空気が動くのです。

エアコンは温風または冷風を室内に送り込むことで温度を調節します。この仕組みも、対流を利用したものです。エアコンの節約テクニックに、サーキュレーターを使う方法がありますが、これはエアコンの対流をサポートすることで電気代を節約しています。

伝導は、熱している所から徐々に熱が伝わることです。熱源から近ければ近いほど温まる速度が速くなります。湯たんぽや温かい飲み物の入ったカップを持ったとき、熱源に触れている部分だけ温かく感じるのは、このためです。熱伝導は、さまざまなテクノロジーに活用されています。

関連ページ:熱の伝わり方は?基本を解説!

伝わり方を表す熱伝導率

熱伝導は、原子や分子の格子振動や、自由電子の移動により発生する現象です。物質を構成している原子や分子・電子により伝わりやすさが異なります。この伝わりやすさを数値化したものが、熱伝導率です。

熱伝導率は、数値が大きければ大きいほど熱が伝わりやすくなります。一般的に金属は熱の伝導率に優れている一方、木やプラスチック、綿などは伝導率が低いです。伝導率の高いものを良伝導、伝わりにくいものを不良伝導と呼びます。

熱伝導率は物質の状態によっても変化する性質です。気体<液体<固体の順に伝わりやすくなります。たとえば、沸騰直前の水に触れるとやけどしますが、その湯気に触れる程度では何ともなりません。この違いは、体に触れる分子の数が気体<液体<固体の順で大きくなるためです。

関連ページ:伝熱係数とは?熱伝導率との違いや計算方法についても解説

熱伝導率の違いの例

熱伝導率は、普段の生活にもいかされています。たとえば、鍋は熱が伝わりやすい鉄やアルミニウム、銅などの金属でできていますが、中でも銅は優れた熱伝導率からプロにも愛用されている素材です。

鍋は主に金属でできていますが、本体やフタの取っ手は木やプラスチックなどの伝導率の低い素材でできています。熱を伝えにくい物質を取っ手に使うことで、熱い鍋やフタでも持ちやすくしているのです。この作りは鍋だけでなく、フライパンやお玉などにも採用されています。

関連ページ:アルミの熱伝導率は?アルミ製熱交換器の特徴を解説

良導体を取り扱う注意点

鍋をはじめとした調理器具のように、良導体(熱や電気の伝導率が高い物質)はさまざまなところで活用されています。便利な反面、危険な性質も持つため、注意しなくてはなりません。

熱伝導率は、固体の状態が一番強くなりますが、粉末になると隙間が生まれるため見かけの熱伝導率が低くなります。しかし、熱が伝わりやすく、空気もある状態をつくり出す分、燃焼しやすくなるのです。

本来なら発火の危険性が低い鉄やアルミニウムも、粉末になった場合は発火や爆発の危険性があります。そのため、一部の金属などの粉末は、消防法では危険物として指定され、適切な管理をするよう定められているのです。

熱伝導率の高いものは、可燃物に分類されるものでも火災の危険性はあまりありません。これは、熱が伝わりやすいぶん逃げやすいためです。熱が蓄積しない分、発火に至るほど物質の温度が上昇することがめったにないため、危険性も低くなります。

逆に、熱伝導率が低い物質は、熱を蓄積しやすいです。熱が物質の内部から逃げない分、引火点や発火点などの、物が燃える温度に達しやすいため、火災の危険性が高くなります。

熱が伝わる性質を利用したアイテム

熱が伝わる性質が利用されているのは、鍋などの調理器具だけではありません。便利グッズや電子機器など、広く活用されています。中でも特に身近なものや、なじみ深いものを紹介しましょう。

バターナイフやアイス用スプーン

熱が伝わる性質を利用した便利グッズとして、バターナイフやアイス用スプーンがあります。

バターやアイスは、冷凍して保管することもあり、通常の包丁やスプーンでは、歯が立たないことがあります。そんな時に使えるのが、バターがすぐ切れるナイフや、アイスを簡単にすくえるスプーンです。熱伝導率の高い金属でできており、体温をバターやアイスに伝えることで、凍ったバターやアイスでも扱いやすい状態にできます。

電子機器用の放熱用パーツや冷却アイテム

熱が伝わる性質は、パソコンやスマートフォンの放射用パーツや、冷却アイテムにも活用されています。

熱伝導率の高い金属は、すぐ熱くなる半面冷めるスピードも速いです。これを利用し、デバイス内に発生した熱を吸収・放出するパーツに活用されています。内部パーツだけでなく、暑い時期やたくさんのパソコンを冷却するのに使う冷却グッズにも採用されている仕組みです。

アンテナや配管の融雪・凍結防止対策アイテム

熱が伝わる性質は、通信設備や水道管・工場など、人々の生活を支える設備にも活用されています。

たとえば、テレビなどに使われているパラボラアンテナは、裏側にヒーターが付いているタイプがありますが、これも熱伝導を利用した設備です。パラボラアンテナに雪がたまるとテレビ移りが悪くなります。これを防ぐために、裏側にヒーターをつけて温めることで、雪を解かすことができるのです。

似たような仕組みだと、水道管や工場のパイプに巻く巻き型ヒーターが該当します。これは、パイプに巻いて温めることで中を流れている液体に熱が伝わります。熱伝導率を利用して、凍結を防いでいるのです。

熱量の交換をおこなう熱交換器

熱が伝わる性質が使われる機器に熱交換器があります。

熱交換器は文字通り、熱を交換するための機器です。一般的に、熱には温度が高いほうから低いほうへ移動する性質があることを利用し、対象となる物質の温度をコントロールします。

家庭で使われるエアコンや冷蔵庫をはじめ、多くの電気製品の内部にも組み込まれている重要な機器といえるでしょう。

関連ページ:熱交換器が活躍!エアコンの冷暖房の仕組み

まとめ

熱には3つの種類があり、伝わり方により違いがあります。同じ伝わり方でも物質の熱伝導率や状態によって伝わりやすさが変わり、その伝わり方を表す数値として熱伝導率が使われます。

私たちの暮らしには、そんな熱の性質を活用したアイテムが多くあることから、気が付かないうちに使っているかもしれません。熱について知ることで、これらをもっと活用しやすくなるはずです。

 

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