2025.05.08

工場で使用する洗浄液の種類を解説!選定基準や管理方法なども紹介

工場で使用する洗浄液の種類を解説!選定基準や管理方法なども紹介

工場で使用する洗浄液の選定や管理は、品質維持・安全対策・コスト削減・環境配慮といった企業全体のパフォーマンスに直結します。ただ、実際の現場では「どの洗浄液を使えばよいのか」「安全性やコスト面での最適解は何か」といった具体的な判断に迷います。

そこで、科学的根拠と実際の現場での使用実績を踏まえ、水系・準水系・非水系それぞれの特徴と選定基準、管理方法、注意点を整理しました。目の前の業務課題を解決しながら、会社全体の品質・安全・環境性能を高める知識と判断基準についてわかりやすく解説します。

工場で使われる洗浄液の種類と特徴

工場で使用されるもの洗浄液には、水系・準水系・非水系といった種類があります。それぞれ性質や得意とする汚れ、使用時の注意点が大きく異なります。適切なものを選ばなければ、洗浄不足や素材の損傷、コストの増加、さらには安全性や環境面でのリスクにつながる可能性があります。そこで、各種類の特徴についてポイントを整理します。

関連ページ:強酸性洗浄液の特徴と注意点

水系洗浄液

水系洗浄液は、水をベースにしたもので、界面活性剤や乳化剤などが含まれています。これらの成分が油汚れなどを細かく分けて包み込み、水で洗い流せる状態にします。お湯を使ったり、超音波を当てたりすると、さらに洗浄力が高まります。

酸性からアルカリ性まで種類があり、油汚れやサビ、塗料のはがしなど、汚れや素材にあわせて選ぶことが大切です。燃えにくく、VOC(揮発性有機化合物)も含まないため、環境や作業する人にとって比較的安全ですが、使ったあとの水の処理はしっかりおこなう必要があります。

水系のものは比較的安全で、環境にもやさしいとされ、強い化学薬品を避けたいときや、より環境に配慮したいときに選ばれることが多いです。ただし、どんな工業用洗浄剤も、使うときには健康・安全・環境に関するルールを守ることが必要です。特に、苛性ソーダのような強いアルカリ性の洗浄剤を使うときは、取り扱いに注意しなければなりません。

関連ページ:アルカリ洗浄液とは?特徴と扱う上での注意点を解説

準水系洗浄液

準水系洗浄液は、水と有機溶剤を混ぜ合わせたもので、水系と溶剤系それぞれの良い点をあわせ持っています。水系洗浄液のように環境にやさしく、安全性が比較的高い一方、溶剤系のように油汚れやフラックス残さ(はんだ作業後の残りカス)などをしっかり落とす力もあります。

中には、汚れの成分と反応して水溶性の石けんを作り、簡単にすすぎ落とせるようにする製品もあります。金属や基板など多くの素材に安全に使え、手作業はもちろん、浸漬け・スプレー・超音波・自動洗浄機などさまざまな方法で使用できるのも特徴です。

特に電子部品や基板の精密洗浄など高い精度が求められる現場で重宝されていますが、使う際には特性を正しく理解し、安全に配慮して管理することが欠かせません。

非水系

工場で使われる非水系クリーナーは、水ではなく有機溶剤を主な成分とする洗浄剤です。油やグリース、ワックス、タール、接着剤などを溶かして落とせるのが特徴で、揮発性が高いため部品に汚れや水分を残しません。そのため、速く乾かしたい作業や水に触れさせたくない部品に向いています。

種類には、アルコールやケトンなどの酸素系溶剤、ガソリンやトルエンなどの炭化水素系溶剤、かつて多く使われたパークロロエチレンなどのハロゲン化溶剤がありますが、ハロゲン化溶剤は環境への影響から使用が減っています。非水系クリーナーは、部品の脱脂、精密部品や電子部品、錆びやすい金属の処理、接着剤の除去などに優れています。

ただし、多くの溶剤は引火性があり、有毒な煙(VOC)を出すため、手袋やマスクの着用、換気が欠かせません。廃液を誤って捨てると土や水を汚し、法律違反になることもあるため、企業ではより環境にやさしい代替品への切り替えも進んでいます。

洗浄液の選定基準と科学的根拠

洗浄液を選定する際には、汚れの種類や素材との相性、pHや濃度、安全性、環境規制、コストまで多角的な視点で判断する必要があります。誤った選択は部品の損傷、再処理によるコスト増加など、現場に大きな影響を及ぼしかねません。そこで、科学的根拠を踏まえ、品質向上とコスト削減、安全性確保を同時に叶えるための選定基準についてお伝えします。

目的別の洗浄剤選び

工場で使うものを選ぶときは、どんな汚れを落とすか、どんな素材を洗うか、作業のスピード、そして環境や安全に関するルールまで、いくつもの要素を考える必要があります。洗浄液は大きく分けて、水をベースに汚れを分解して落とす「水系クリーナー」と、油やグリース、接着剤などを溶かして素早く乾く「非水系(溶剤系)クリーナー」の2種類があります。

油汚れを強力に落としたいときは溶剤系が向いていますが、一部の溶剤(特にハロゲン化溶剤)は環境への影響から使用が制限されています。水系はpHによって使い方が違い、中性タイプは軽い油汚れ、高アルカリ性タイプは重いグリースや酸化物を落とすのに適しています。

金属を錆びさせないためには、水が残りにくい溶剤系が有利ですが、水系を使うときはpHや防錆剤の有無を確認し、素材にあわせて中性・アルカリ性・酸性を選ぶ必要があります。

洗浄液のpHと素材への影響を考慮

洗浄液を選ぶときは、pH(水素イオン濃度)と素材への影響をしっかり考えることが大切です。pHは液体が酸性かアルカリ性かを示す指標で、0〜14の範囲で表され、7が中性、7より低いと酸性、7より高いとアルカリ性になります。洗浄力はこのpHによって大きく変わり、アルカリ性の洗浄剤は油やグリースなどの有機汚れに、酸性は錆やスケール、鉱物の沈着物の除去に適しています。

ただし、素材に合わないpHのものを使うと、金属の腐食やプラスチックの劣化、表面のエッチングや変色などを引き起こす恐れがあります。特にアルミニウムのような柔らかい金属には、刺激の少ないタイプを選ぶ必要があります。

現場での洗浄液使用の効果的な管理方法

洗浄液を適切に管理できているかどうかは、素材の寿命、作業者の安全、さらにはコストや環境負荷にまで考慮する必要があります。例えば、濃度が高すぎれば素材を傷め、低すぎれば汚れが落ちず、廃液処理の手間が増えてしまうなどの影響があるからです。

また、汚れの蓄積や微生物汚染が進めば、洗浄液そのものの性能も急速に落ちてしまいます。そこで、濃度管理や再利用、品質チェックなど、現場で実践できる管理のポイントを具体的に解説します。

洗浄液の濃度管理と再使用する

洗浄液を効果的に使うには、pHや素材への影響だけでなく、濃度管理と再利用のバランスが重要です。濃度は洗浄力に直結します。通常は1〜5%の範囲で調整しますが、濃度を上げすぎると素材を傷める危険があり、特にアルミニウムなどの柔らかい金属では表面の黒化やエッチング(腐食模様)が起こる可能性があります。

一方、再利用すれば水や熱エネルギー、廃液の量を減らすことができ、コスト削減につながります。しかし、クリーンルーム製品や乳児用製品などでは再利用が不適切な場合もあります。廃液処理には環境保護やコストなどの課題があると考えられます。特にVOCを含む溶剤系は土壌や水質を汚染し、作業者の安全リスクを高めます。これらを総合的に管理し、適切な濃度設定や慎重な再利用をおこなってください。

品質チェックをする

洗浄液を適切に管理するためには、品質チェックが欠かせません。これは、効果を維持し、安全な作業環境を確保するためにも必要な取り組みです。主なチェック項目はpHと濃度です。pHは最大の効果を発揮するために重要で、例えば油やグリースの除去にはアルカリ性、錆やスケールの除去には酸性が適しています。

しかし、pHが適切でないと、金属が腐食したり、プラスチックが劣化したりします。特に炭素鋼では、腐食防止のためpHを10.5以上に保つことが求められます。

濃度管理も同様に重要で、濃度が高すぎると素材を傷め、低すぎると洗浄力が落ちてしまいます。そのため、滴定試験などを使って、適切な濃度を維持することが大切です。

さらに、品質チェックでは洗浄液の見た目やニオイ、微生物汚染の有無を定期的に確認し、必要に応じて交換します。汚れが溜まりすぎて溶液が過飽和になると、効果が大幅に下がるため、油分やグリースはスキマーなどで除去するなどで対処してください。

洗浄液選定はコスト削減と品質向上に役立つ

洗浄液を選ぶときは、コスト削減と品質向上を同時に実現することが大切です。その鍵となるのが、汚れの種類と素材に合ったタイプを選定するという点です。

例えば、油やグリースにはアルカリ性、錆やスケールには酸性が効果的で、アルミニウムのような柔らかい金属には刺激の少ない成分を選ぶ必要があります。このように適切な選定をすることで、金属の腐食やプラスチックの劣化といったダメージを防ぎ、高価な部品交換のコストも削減にも役立ちます。

また、汚れが溜まって効果を失う前に、油分やグリースを取り除くか、交換する必要があります。このように定期的な品質チェックをおこなえば寿命を延ばし、常に安定した効果を保つことができます。

洗浄液トラブルや失敗事例から学ぶ注意点

不適切なpHのものを使うと、金属が腐食したり、プラスチックが劣化したり、表面がエッチング(腐食模様)するなどのリスクがあります。例えば、アルミニウムのような柔らかい金属に高濃度のアルカリ性タイプを長時間使うと、表面が黒くなったり腐食が進んだりします。

また、異なる洗浄剤を混ぜることで有害ガスが発生したり、高酸性・高アルカリ性の溶液によって作業者が化学火傷を負ったり、呼吸器に悪影響を及ぼすリスクもあります。こうした問題を防ぐには、汚れの種類と素材に合ったpHのものを選び、見た目や微生物汚染を定期的にチェックする品質管理をおこなってください。

まとめ

洗浄液は、単に汚れを落とすだけでなく、製造現場の品質・コスト・安全・環境に影響します。水系・準水系・非水系といった種類ごとの特性を理解して、選定・管理することは、製品の寿命を守るだけでなく、余分な廃液を抑えて、規制対応の観点でも大きな意味を持ちます。

pHや濃度の維持、定期的な品質チェック、再利用や廃液処理の最適化といった取り組みを組み合わせ、トラブル防止と作業効率の向上を実現してください。工場の洗浄プロセスを見直すことは、現場改善だけでなく企業全体の信頼性向上にも直結します。今回の内容を参考に、自社の現場に合ったタイプの選定と管理体制を整え、持続可能な洗浄環境づくりを進めてください。

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