見過ごされがちな凝縮熱とは?回収方法や有効活用のポイントを解説

工場では、ボイラーや乾燥設備、冷凍設備など、さまざまな設備から熱が発生しています。そのなかでも、蒸気や水蒸気が液体へ戻る際に放出される凝縮熱は、回収・再利用できる熱源の一つです。
しかし、排ガス中の水蒸気が持つ凝縮熱や、凝縮後のドレンに残る熱は、十分に活用されないまま排出されることも少なくありません。適切に回収できれば、さまざまな工程へ再利用でき、排熱回収の効率向上につながります。
この記事では、凝縮熱回収の仕組みや活用場面、回収方法、設備を選定する際のポイントについて解説します。
目次
凝縮熱回収とは
凝縮熱回収とは、蒸気が液体へ戻る際に放出される凝縮熱を回収し、工場内で再利用することです。
工場では、ボイラー排ガスや乾燥設備の排ガス、蒸気設備、冷凍設備など、さまざまな場所で凝縮熱が発生しています。しかし、排ガス中の水蒸気が持つ凝縮熱や、凝縮後のドレンに残る熱などは、そのまま利用されずに排出されるケースも少なくありません。
熱交換器などを用いて凝縮熱を回収すると、これまで利用されていなかった熱エネルギーも活用できます。凝縮熱回収は、これまで利用されずに排出されていた熱を有効活用する方法の一つとして、省エネルギー化を検討する際の選択肢となっています。
凝縮熱が発生する主な場所
凝縮熱は、蒸気や水蒸気が液体へ戻る工程で発生します。工場では次のような設備が凝縮熱の主な回収対象となります。
ボイラーや蒸気設備
ボイラーの燃焼排ガスには、燃料の燃焼によって生じた水蒸気が含まれています。排ガスを露点以下まで冷却すると、水蒸気が凝縮し、その際に放出される凝縮熱を回収することが可能です。回収した熱は、ボイラー給水の予熱や工程用温水などに利用できます。
一方、蒸気設備では、蒸気が工程内で凝縮するときの熱は加熱に利用されています。凝縮して水になったドレン(復水)にも熱が残っているため、ドレンの回収やフラッシュ蒸気の利用によって、蒸気システム全体の熱損失を抑えられます。
冷凍機やヒートポンプ
冷凍機やヒートポンプでも、冷媒が凝縮器で液体へ戻る際に熱を放出します。設備構成によっては、この熱を給湯や工程加熱などへ利用できる場合があります。冷却と加熱を同時に必要とする設備では、これまで外気や冷却水へ放出していた熱を再利用することで、エネルギー使用量を抑えることも可能です。
ただし、冷媒の凝縮熱回収は、排ガス中の水蒸気を凝縮させる方法とは設備構成や検討条件が異なります。本記事で主に取り上げているのは、排ガス中の水蒸気から凝縮熱を回収する方法です。
関連記事:凝縮器(コンデンサ)とは?仕組みと種類を詳しく解説
乾燥設備や排ガス
乾燥工程や焼成設備などから排出される排ガスにも水蒸気が含まれています。特に水蒸気を多く含む排ガスでは、凝縮熱まで回収できることで回収熱量をさらに高められる場合があります。ただし、凝縮液による腐食や汚れへの対策も必要となるため、熱交換器の材質や構造を考慮した設備選定が重要です。
凝縮熱を回収するメリット
凝縮熱は、排熱回収の中でも特に回収効果を高められる可能性がある熱源として注目されています。以下では、回収するメリットについて見ていきます。
排熱回収システム全体の効率向上が期待できる
多くの排熱回収では、熱源の温度を下げることで得られる顕熱を利用します。一方、排ガス中の水蒸気を凝縮させることで、顕熱だけでなく凝縮熱(潜熱)まで回収できるケースがあります。
凝縮熱は、水が蒸気になる際に蓄えた熱(気化熱)が、水へ戻るときに放出される熱です。この熱量は、同じ量の水を0℃から100℃まで温めるために必要な熱量よりも大きいため、蒸気を凝縮させることで多くの熱エネルギーを回収できます。
そのため、同じ排熱源でも回収できる熱量が増え、これまで利用されずに排出されていたエネルギーを有効活用しやすくなります。給水予熱や給湯などへ利用できる熱量が増える可能性もあり、排熱回収システム全体の効率向上も期待できます。
関連記事:排熱回収のメリットは?利用できる熱源や注意点についても解説
燃料使用量の削減につながる
回収した凝縮熱をボイラー給水の予熱や給湯などに利用することで、新たに燃料を燃焼させて発生させる熱量を抑えられる可能性があります。あらかじめ水を温めておくことで、ボイラーや加熱設備が目標温度まで加熱するために必要な熱量を減らせるためです。
特に、給水予熱や給湯など、継続的に熱を必要とする工程では、回収した凝縮熱を有効活用しやすくなります。
ただし、実際の削減効果は、回収できる熱量や熱源温度、利用先の必要温度、運転時間などの条件によって異なります。導入を検討する際は、熱源と利用先の条件を整理したうえで、期待できる効果を事前に評価することが重要です。
凝縮熱を回収する手順
凝縮熱を効率よく回収するには、熱源や利用先の条件を確認したうえで、適切な設備を選定することが重要です。ここでは、基本的な流れを紹介します。
① 熱源と利用先の条件を確認する
まず、排ガス温度や水蒸気量、流量、露点、利用先で必要となる温度を確認します。凝縮熱を回収するには、水蒸気を含む排ガスを熱交換器で露点以下まで冷却し、凝縮させながら熱を利用側の流体へ移す必要があります。
そのため、排ガスを十分に冷却できる利用先や冷却媒体が必要です。回収した熱を使う工程がなければ、十分な有効活用にはつながりません。
② 熱交換器で水蒸気を凝縮させながら熱を回収する
次に、熱交換器を用いて水蒸気を含む排ガスを露点以下まで冷却します。この過程で水蒸気が凝縮し、排ガスの温度低下による顕熱と、相変化に伴う凝縮熱が利用側の水などへ移ります。つまり、凝縮熱回収では、冷却・凝縮・熱回収が熱交換器内で同時に進みます。
③ 必要に応じてヒートポンプで昇温する
回収した熱の温度が利用先の必要温度に届かない場合は、ヒートポンプを組み合わせて昇温します。これにより、給湯や工程加熱など、より高い温度が必要な用途へ利用できる場合があります。
ただし、ヒートポンプは電力を消費するため、回収熱量や必要温度、稼働時間を踏まえて経済性を確認することが重要です。
凝縮熱回収で注意したいポイント
凝縮熱回収では、より多くの熱を回収できる可能性がある一方、排ガスを凝縮させることで発生する凝縮液や汚れなど、顕熱回収とは異なる点も考慮する必要があります。回収できる熱量だけでなく、設備の耐久性や維持管理も含めて総合的に検討することが重要です。
凝縮液による腐食を考慮する
凝縮熱回収では、凝縮液による腐食リスクを考慮した設備選定が重要です。排ガスを露点以下まで冷却すると、水蒸気が凝縮して凝縮液が発生します。燃料や排ガス成分によっては、この凝縮液が酸性になる場合があり、長期間接触すると熱交換器や配管の腐食につながります。
特に硫黄分などを含む燃料では、凝縮液の性状を考慮した設備設計が求められます。そのため、使用環境に適した耐食性を備えた材質や構造を選定することが重要です。
汚れやスケールによる性能低下を防ぐ
排ガスには粉じんやすす、油分などが含まれる場合があり、利用側の水質によってはスケールが発生することもあります。これらが熱交換面へ付着すると、熱が伝わりにくくなり、回収性能が低下します。また、圧力損失が大きくなったり、清掃頻度が増えたりすることがあります。
そのため、設備を選定する際は、熱交換性能だけでなく、清掃しやすい構造や点検スペースの確保など、メンテナンス性もあわせて確認することが重要です。
熱源条件に合わせて設備を選定する
凝縮熱回収では、排ガス温度だけでなく、水蒸気量や流量、利用先で必要となる温度などを総合的に確認する必要があります。
特に次のような条件を確認したうえで設備を選定することが重要です。
- 排ガス温度
- 排ガス中の水蒸気量
- 流量
- 利用先で必要となる温度
- 熱需要の発生タイミング
回収した熱の利用先まで考える
回収した熱を有効活用するためには、利用先との温度や運転時間が適しているかを確認することが重要です。回収した熱の温度が不足していたり、熱が必要な時間帯と排熱が発生する時間帯が合わなかったりすると、十分な効果が得られない場合があります。導入前には、利用条件まで含めて検討しましょう。
MDIの熱交換器による凝縮熱回収
凝縮熱回収では、熱源条件や運転条件だけでなく、凝縮液による腐食や汚れなども考慮しながら設備を選定することが重要です。そのため、回収したい熱源や運転条件に応じて、適切な熱交換システムを選ぶ必要があります。
MDIでは、排ガス中の凝縮熱回収にも対応した熱交換システムを取り扱っています。排ガス条件や運転条件に応じた熱交換器を選定することで、これまで十分に活用されていなかった凝縮熱を有効利用できる可能性があります。
凝縮熱回収を検討している場合は、GTLシリーズのような排ガス熱回収向け熱交換システムも参考にしながら、自社の熱源や運転条件に適した設備を検討してみてください。
まとめ
凝縮熱は、ボイラーや蒸気設備、冷凍設備、排ガスなど、工場内のさまざまな場所で発生しています。
従来利用されていなかった凝縮熱も、熱交換器やヒートポンプを適切に組み合わせることで、有効活用できる可能性があります。
設備を選定する際は、熱源条件だけでなく、凝縮液による腐食やメンテナンス性も考慮することが重要です。凝縮熱回収を検討する際は、排熱回収システム全体を踏まえながら、自社設備に適した回収方法を検討するとよいでしょう。

